2022年11月04日(金) 18:02 50
▲ブラッティーキッドと武蔵野Sへ挑む水口優也騎手(撮影:大恵陽子)
未勝利で地方競馬の園田・姫路競馬に移籍し、破竹の5連勝を挙げてJRA再転入を果たすと、3連勝で一気にオープン馬へと上り詰めたブラッティーキッド。地方競馬から出戻りで勝つ馬はいますが、連勝でオープンまで上がる馬にはなかなかお目にかかれません。未勝利戦で2着3回とあと一歩届かなかった馬に、一体どんな変化があったのでしょうか。
エルムS4着を経て、武蔵野Sで「オーナーのために勝ちたい」と誓う水口優也騎手に重賞初制覇に向けて伺いました。
(取材・構成:大恵陽子)
──デビューは3歳4月とやや遅めで、7着でした。当時はどんな馬だったのでしょうか?
水口 デビューの時はまだ馬が出来上がっていなくて、性格も子供で立ち上がったり暴れたりしていました。調教も全然動かなくて、15-15(200mを約15秒で走る調教)で一杯なくらいでした。それが、デビュー戦では意外と集中して走ってくれて、「あれ、走りそうだな!」と感じ、オーナーや調教師ともそういう話をしていました。ただ、当時はまだ体も緩かったです。
──未勝利クラスを戦う中で馬具も工夫されていきました。
水口 チークピーシズやブリンカーを着けたりしました。今でもそうなんですけど、コーナーで置かれるところがあって、自分から止めてしまうのか、苦しがっているのかちょっと分からない面もありました。
──JRAでは初勝利まであと一歩でしたが、地方競馬の園田・姫路競馬に移籍すると2戦目から5連勝。地方競馬でのレースぶりは見ていましたか?
水口 すごく気にかけて、毎レース見ていました。相変わらず勝負所はモタモタするし、直線はフラフラするしで、「あぁ、変わらずブラッティーキッドだな」と思っていました。でも能力があるのは分かっていたから、地方では勝てるなと思っていたので、安心して見ていました。
▲地方での走りも毎レース見ていたとのこと(ユーザー提供:ななみさん)
──そうしてJRAに戻ってくると、3連勝でオープンクラスまで駆け上がりました。馬がどう変わったのでしょう?
水口 筋肉がついていました。走ることへの集中力はまだ全然子供ではあったんですけど、元々のポテンシャルと筋肉で補って3連勝できたのかなと思います。
──それまで直線でフラフラする場面が見られたのは、まだ筋肉がつききっていなかったからということでしょうか?
水口 ムチに過剰に反応したり、右にモタれながら走ることもあって、そういう面はいまだにあります。エルムSの最終追い切りでは肩ムチしか打っていないのにヨレていました。まだちゃんと真面目に走っていなくて、のびしろがあると思います。
──園田・姫路での5連勝と、函館と札幌で3連勝という成績を見ると、小回りが得意そうな印象を受けます。
水口 JRAではローカルで3連勝しましたけど、トビが大きいので「小回りがすごく得意」という馬ではないと思うんですよね。僕も調教に乗っている人も、ずっとそう話しています。ただ、3歳未勝利の時に北海道で好走していましたし、地方でもコーナー4回のレースで勝っていたから、今年も北海道で走りました。だから、これから広いコースで走れることが一番のポイントになるんじゃないかなと思います。
▲中央に戻り函館と札幌で3連勝(c)netkeiba.com
──ようやくブラッティーキッドに適した舞台で走れる、と。
水口 3コーナーで置かれる癖がまだあるので、広いコースではかなりのロスになる可能性もありますけど、広いコースだからこそもっとできることもあると考えています。
──ブラッティーキッドは山上和良オーナーの愛馬で、同オーナーと水口騎手といえば、CBC賞でハナ差2着だったセカンドテーブルが思い起こされます。
水口 あの時、オーナーとレース後にいろんな話をして、「こんな風にしたいです」「こういったレースを使いたいです」ということを全て受け入れてくださいました。結果的に重賞を勝たせてあげられなかったけど、いい経験をさせてもらいましたし、「重賞でも僕はやれる」と自分自身で思えました。オーナーもそう思ってくださって、セカンドテーブルで負けた時から「水口に重賞を勝たせたい」とずっと言ってくださっているので、何としてもその期待には応えたいと思っています。
▲水口騎手と21回コンビを組んだ相棒セカンドテーブル(c)netkeiba.com
──オーナーのために、という思いが強いんですね。
水口 そこが一番ですね。こんなにも応援してくれる人はいなくて、そのオーナーがここまで言ってくださっています。もちろん他の馬主さんや調教師さんとも重賞を勝ちたいですけど、山上オーナーの馬で重賞を狙える馬に出会えたので、ここは獲りたいなと思います。あと、オーナーがあと2勝でJRA通算100勝なんですよ。それも含めて、ブラッティーキッドがチャンスだと思います。
──次走の武蔵野Sで人馬ともに重賞初制覇となることを願っています。
水口 まだまだ完成していなくて、名前の通り悪ガキ(ブラッティーキッド)でやんちゃなところが多いですが、パワーもついてきて調教で成長も感じます。
これまでJRAでは1700mで勝ってきましたが、そこから距離が延びるよりは武蔵野Sのように1600mとかに短くなった方がいいなと僕は感じています。気性的に3~4コーナーで置かれてしまいますが、直線の広い東京コースはコーナーで周りが速くなることもないので、いいイメージです。ただ、芝スタートで出るのかや、ワンターンが合うのかは、やってみないと分からない部分もあると思います。これから重賞を勝ってフェブラリーSを目指せるのであれば、クリアしなくちゃいけないので、今後を計る上でもいい舞台かなと思います。
▲武蔵野Sで人馬ともに重賞初制覇を(c)netkeiba.com
(文中敬称略)
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netkeiba特派員
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