【#1】騎手の妻が直面した過酷な現実──「私にはその覚悟ができていなかった」

アプリ限定 2023年04月23日(日) 18:01

shirahama

▲落馬前、最後に行った旅行で引き馬に乗ったときの写真 (提供:白浜由紀子)

障害ジョッキーの白浜雄造騎手の奥様が、昨夏の落馬から復帰を目指して奮闘する夫と家族のリアルな姿を描く新連載。

大きなリスクが伴う「騎手との結婚」。長年、福永祐一騎手(現調教師)のバレットを務め、競馬の最前線に身を置いてきた由紀子さん。競馬の度に一抹の不安はよぎるも、それでも、幸せな日常はいつもそこにあると信じてきました。

まさか、自分の夫が55日間も意識を失い、騎手生命どころか命さえ危ぶまれる大怪我を負うことになるなんて…。

まさしく順風満帆、私はとても幸せだったのです

 騎手との結婚。そこには大きなリスクが伴います。そのリスクを承知の上で、私は障害騎手 白浜雄造と結婚しました。

 2022年8月27日、小倉競馬で行われた小倉サマージャンプ(J・GIII)で、私の夫、白浜雄造は落馬。ターフの上で意識を失いました。

 その後の4日間は、眠り続ける日々──。私が泣いても落ち込んでも夫の状態は良くなる事はありません。泣く時間があるなら今できる事をやるのがベストだと思い、医師や看護師さんとの話がスムーズに進むように、頭部外傷についてや回復後のリハビリの効果を調べたり家計の見直しをしたりと、仕事をしているような学生時代に戻ったような感覚で過ごしました。

 もちろん心配ではありましたが、ICUに入り命を助けるプロフェッショナルに囲まれているんだから、もうなるようにしかならないよね。と思いながら回復を願い続けました。

 8月31日には、「手を上げて」などの問いかけに応えようとするなど、医学的には意識を取り戻したとされる状態に回復しましたが、まだまだ夢の中にいるような状態だったと思います。

 目をしっかりと開けてコミュニケーションが取れるなど、妻から見て意識が戻ったといえる状態になったのは10月21日。私としては、意識を取り戻すのに55日間かかった感覚です。

 私たち夫婦は、競馬場で出会い結婚しました。約20年前から、騎手時代の四位洋文調教師や福永祐一調教師らのメディア関連のマネージャーを務め、約16年前からは祐一さんのバレットも兼任していたので、たくさんの騎手を近い距離で見続けてきました。

 大怪我を負い、辛いリハビリに懸命に取り組むも、復帰が叶わず鞭を置いた方。復帰不可能と医師に診断されるも、必死のリハビリの末、復帰を果たした方。調教師という新たな道を見据え、引退を決断した方。なかには、競馬とは無縁の新しい世界へ飛び込んだ方もいました。

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白浜由紀子

1981年9月9日生まれ。2015年に障害騎手の白浜雄造と結婚。1男1女をもうける。結婚前は四位洋文調教師や福永祐一調教師(両名、当時騎手)らが所属していたマネージメント会社にてマネージャーを務め、TV番組収録やイベント等、様々な現場で騎手をサポート。福永調教師の引退までの16年間はバレット業務も兼任。福永厩舎開業後は経理兼秘書業務を担当予定。現在はオンラインサロン「福永祐一 競走馬研究所」の運営スタッフを務める傍らフリーランスとして活動中。新たな目標のアイシングクッキー講師としても活動すべく準備中。(旧姓は坪田、また戸籍上の表記は幸子)

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