二日連続のトレーニングセール

2006年05月23日(火) 23:49

 5月22日(月)と23日(火)の二日間にわたり、札幌と浦河で相次いでトレーニングセールが開催された。去る4月24日に行われた「JRAブリーズアップセール」では69頭が上場され、68頭が落札されるという驚異的な好成績を収めたのは記憶に新しい。そのあまりにも“出来すぎ”とも思える結果に、日高の育成牧場関係者の間では「北海道にトレーニングセールの舞台が移ってきた時には、もう購買者がほとんどいなくなっているのではないか」と憂慮する声すら聞かれた。好調の波は5月15日に船橋競馬場にて開催された「千葉サラブレッドセール」でも衰えず、こちらは53頭(2歳馬のみ)が上場され39頭が落札され、売却率こそ昨年を下回ったものの、売り上げ総額は昨年と比較すると二倍以上に達した。社台ファームとダーレージャパンの上場馬が平均価格を押し上げた形となり、上位価格馬10傑(11頭)中9頭が、この両者からの上場であった。

 景気は戻りつつあるのだろうか。日高にいるとまるでそうした実感に乏しいのだが、こうした首都圏市場での取引成績を見る限り、熱心な購買層に支えられて活況を呈しているのがよく分かる。問題は、舞台を北海道に移しての2歳市場がどういう結果を残すか、なのだ。

 さて、まず22日の札幌市場。主催はHBA日高軽種馬農協。昨年までは静内の北海道市場にて開催していたが、今年より購買者の便宜を図るため、会場を札幌競馬場へと移した。

 この日、私事ながら札幌へ“取材”に行くつもりでいたのだが、あいにく風邪を引いてしまい、やむなく断念した。したがってこの稿は現地で市場を見学した知人の談話とネットでの市場取引結果を見ながら書いている。それによれば、天候こそ良かったものの、強風で砂塵の吹き荒れるようなコンディションで、かなり寒かったという。それでも、昨年より上場頭数はずっと多いにもかかわらず、売れ行きは良かったとのこと。全体では牡90頭、牝81頭の計171頭が上場され、牡51頭、牝39頭の計90頭が落札。売り上げ総額は5億2836万円。昨年が126頭上場で64頭の落札、総額3億2265万円余だったことと比較すると、売却率こそ微増だが、売り上げ総額と平均価格はかなり上昇したと言える。

 昨年と何が変ったのか。結果から見ると、まず昨年活発に購買していたKRA韓国馬事会と果川馬主クラブ(昨年22頭を落札した)が、今年はわずか9頭にとどまったのが大きな変化かも知れない。代わって市場に貢献したのは、シンガポールの購買代行窓口となったJBBA日本軽種馬協会が、計9頭を落札したことだろう。韓国での日本産馬は概して評価が低下しているらしく、というのも結果が伴わないからなのだが、そもそもが昨年のトレーニングセールで購買した現3歳世代の競走成績が振るわなかったことによるものらしい。だが、昨年も今年も、韓国馬事会の落札価格はあまりにも安すぎて、これでは良い馬を揃えることは難しかろう。JBBA日本軽種馬協会が落札したシンガポールへの輸出馬は、300万円から910万円(いずれも税抜き)で、平均価格は580万円に達したが、韓国馬事会の方は最高150万円、最低90万円(税抜き)で、かなり大きな落差がある。この予算での購買を根本的に見直さなければ、おそらく良質馬をトレーニングセールで落札するのは無理である。

雨天の為屋内馬場での比較展示

 さて翌日23日は、浦河のJRA日高育成牧場を会場にして「ひだかトレーニングセール」が開催された。主催はひだか東農協。この日はあいにくの雨にたたられ、加えて前日の札幌のトレーニングセールから購買者が浦河まで移動を余儀なくされる不便さも懸念材料として取り沙汰されていた。だが、この日の購買登録者は約220名に達し、市場もかなりの賑わいを見せた。手元のメモを頼りにざっと集計してみると、上場馬112頭で落札が68頭。売却率は60%をクリアした。最高価格馬は32番「クリスティキャットの04」(牝、鹿毛、4月30日生、父ボストンハーバー、母クリスティキャット)の3885万円(税抜き)。生産はビッグレッドファーム、販売申込者・飼養管理者は(有)山口ステーブル。母のクリスティキャットは米国でG?を含む11勝馬。母の兄弟も名馬続出の血統である。激しい競り合いの末、東京都の金子肇氏が落札した。

最高価格馬の落札風景

 なお売り上げ総額は(これもざっと計算したのであるいは正しくないかも知れぬ)5億1047万円。1頭平均750万円余となった。昨年が110頭中55頭の落札で総額4億7138万円余だったので、売却率は上昇し、平均価格は下がったことになる。そして、この市場にJRA日本中央競馬会より7頭が上場され、全馬完売したことも追記しておく。これらの馬は中山競馬場のブリーズアップセールに上場する予定だった馬たちである。

多くの関係者がつめかけ、賑わう場内

 こうしてみると、予想以上に活発な市場だったのではなかろうか。場内には多くの関係者がつめかけ、賑わっていた。主催者側もまずはホッと一息というところだろう。あるいは天候に恵まれたら、もう少し売り上げも伸びていたかも知れない。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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