【ヴィクトリアM AI予想】今年も荒れない!? AIが推奨する実績馬の信頼度を徹底チェック

2023年05月08日(月) 18:00

シャンパンカラーがNHKマイルCを勝利(撮影:下野雄規)

netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。

(文・構成=伊吹雅也)

波乱含みだが近年は平凡な配当の決着が続いている

AIマスターM(以下、M) 先週はNHKマイルCが行われ、単勝オッズ22.2倍(9番人気)のシャンパンカラーが優勝を果たしました。

伊吹 陣営はもちろん、鞍上の内田博幸騎手にとっても会心の勝利だったのではないでしょうか。スタートでやや遅れを取ったものの、位置取りが悪くなり過ぎないよう促していき、道中は中団の外めを追走。ゴール前の直線に入っても脚色は衰えず、残り400m地点のあたりで先団を射程圏内に捉え、残り200m地点のあたりで先頭に立っています。すぐ外で食らい付くように伸びていたオオバンブルマイ(3着)を振り切り、最後の最後に急追したウンブライル(2着)をアタマ差だけ退けた、決勝線手前での粘り強さも特筆もの。着差以上に強い競馬だったと言って良いかもしれません。

M シャンパンカラーは重賞初制覇。2走前の京成杯で6着に、前走のニュージーランドTでも3着に敗れていましたが、大一番でタイトルを奪取しました。

伊吹 デビュー直後に東京芝1600mのレースを2連勝していましたから、おそらく陣営はこの段階でNHKマイルCを意識していたのでしょう。今回あまり支持が集まらなかったのは、ここ2戦の結果を見て「重賞では少し足りないのではないか」と判断してしまった方が多かったから。ただ「京成杯は距離が合わなかっただけだろう」「実績がない中山のトライアル競走で馬券に絡むくらいの力はある」と見ることも可能だったわけです。私自身もそれほど重いシルシは打っておらず、偉そうなことを言えた立場ではないものの、さすがに単勝オッズ20倍超というのは過小評価だったと言わざるを得ません。

M 現3歳世代のチャンピオンマイラーとなったことで、今後はグッと注目度が高まるのではないかと思います。

伊吹 3代母のBaldwinaは現役時代に仏G3のペネロープ賞を勝っているうえ、繁殖牝馬としても2009年のフィリーズRを制したワンカラット、2016年の桜花賞馬ジュエラーらを送り出した名牝。青山洋一オーナーゆかりの血統としておなじみです。東京芝1600mのようなコースが合うタイプであることは明らかですし、来月ないし来年以降の安田記念はもちろん、今秋から舞台が京都芝1600m外に戻るマイルCSでも、相応に高く評価するべきでしょう。

M 今週の日曜東京メインレースは、上半期の古牝馬チャンピオン決定戦と位置付けられているヴィクトリアM。昨年は単勝オッズ5.7倍(4番人気)のソダシが優勝を果たしました。2015年にJRAGI史上最高額となる3連単2070万5810円の配当が飛び出していますし、波乱含みというイメージを持っている方が多いかもしれません。

伊吹 ただ、2020年が3連単7340円、2021年が3連単28750円、2022年が3連単4万3780円と、 近年は堅めの決着が続いています。もちろん、過去10年の単勝人気順別成績を見る限りだと、上位人気馬の好走率は物足りない水準なのですが……。

M 単勝4〜6番人気の馬はまずまず健闘しているものの、単勝3番人気以内の馬は基本的に過信禁物と見るべきでしょうね。

伊吹 なお、単勝4番人気以下のゾーンをより詳しく見てみると、単勝4〜7番人気の馬は2013年以降[5-2-7-26](3着内率35.0%)、単勝8〜12番人気の馬は2013年以降[2-4-1-43](3着内率14.0%)、単勝13番人気以下の馬は2013年以降[0-0-1-56](3着内率1.8%)となっていました。荒れやすいレースとはいえ、超人気薄の馬が上位に食い込む確率はそれなりですから、メンバー構成などもしっかり考慮したうえで買い目作りの方向性を決めるべきだと思います。

M そんなヴィクトリアMでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、スターズオンアースです。

伊吹 おおっ。まさかここで上位人気必至の馬を挙げてくるとは……。

M 皆さんもご存じの通り、スターズオンアースは2022年の桜花賞とオークスを連勝して、同年のJRA賞最優秀3歳牝馬に選出された馬。前走の大阪杯でも勝ったジャックドールとハナ差の2着に健闘しました。今回は休養明け2戦目でもありますし、おそらく単勝1番人気かそれに近い支持を集めることになるでしょう。

伊吹 どちらかと言えば穴党のAiエスケープが人気サイドの馬を挙げてきたということは、妙味ある伏兵が見当たらないということなのかも。ここ3年と同じような、やや堅めの決着をイメージしておいた方が良いのかもしれません。この見立てを踏まえたうえで、私はレースの傾向からスターズオンアースの信頼度を評価してみたいと思います。

M 出走各馬の明暗を分けそうなポイントはどのあたりですか?

伊吹 やはり直近のパフォーマンスでしょうね。2017年以降の過去6年に限ると、3着以内馬18頭中16頭は前走の着順が7着以内でした。

M 大敗直後の馬は強調できませんね。

伊吹 前走の着順が8着以下だったにもかかわらず3着以内となったのは、2020年1着のアーモンドアイと2020年3着のノームコアだけ。前走の着順が8着以下、かつ“前年以降、かつ東京、かつGIのレース”において1着となった経験がない馬は2017年以降[0-0-0-33] (3着内率0.0%)です。前走好走馬が堅実とは言い難いものの、ある程度は前走の内容を素直に評価するべきだと思います。

M 先程も触れた通り、スターズオンアースは前走の着順が2着。不安視する必要はまったくないでしょう。

伊吹 あとは前走の出走頭数も見逃せないポイント。前走が12頭立て以下のレースだった馬は期待を裏切りがちでした。

M 今年は主要な前哨戦のひとつである阪神牝馬Sが12頭立て。例年以上にこの傾向を重視するべきなのかもしれません。

伊吹 おっしゃる通り。もともと少頭数のレースにおける実績は過大評価されてしまいがちなので、扱いに注意したいところです。

M 今年の大阪杯は16頭立てでしたから、スターズオンアースにとっては強調材料のひとつと言えます。やはり無理に逆らう必要はないのでしょうか?

伊吹 ひとつだけ気掛かりな点を挙げておくと、近年のヴィクトリアMはノーザンファーム生産馬が圧倒的に優勢。生産者がノーザンファーム以外の馬は2017年以降[1-3-3-60](3着内率10.4%)でした。しかも、3着以内となった7頭のうち5頭はディープインパクト直仔です。

M スターズオンアースは生産者が社台ファームで、父がドゥラメンテ。確かに、この条件はクリアしていません。

伊吹 ディープインパクト直仔の数が少なくなってくる分、今後はこの傾向も少しずつ変化すると思うのですが、それでもまずはノーザンファーム生産馬に注目したいところ。ある程度は割り引きが必要だと思います。

M 不安要素がないわけではない、と。

伊吹 まぁ、他ならぬAiエスケープが太鼓判を押しているわけですし、大きく評価を下げる必要はないでしょう。私自身もこの馬を無印にする気はなく「ある程度は厚く買わざるを得ないな」「あとは4着以下に敗れるパターンの目をどこまで押さえるかだな」と考えていたところ。連軸に据える馬のオッズも加味したうえで、慎重に買い目を組み立てるつもりです。

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伊吹雅也

競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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