【#4】「どんなことがあっても…」覚悟を持って向かったICU 担当医から聞かされた診断結果

アプリ限定 2023年05月14日(日) 18:01

shirahama

▲医師から説明された診断結果は…(撮影:桂伸也)

障害ジョッキーの白浜雄造騎手の奥様が、昨夏の落馬から復帰を目指して奮闘する夫と家族のリアルな姿を描く新連載。

生死をさまよう夫が眠る九州労災病院に到着し、心がざわざわとする独特の感覚を胸にICUに向かいます。

MRIやCT画像を見ながら医師からの説明を受け、さまざまな書類や同意書にサインをしなくてはいけないその胸中とは…

たくさんの人の尽力で夫の命は繋がった

「どんなことがあっても冷静に対応する」

 九州労災病院に到着し、覚悟を決めて車を降りた私でしたが、そう自分にしっかりと言い聞かせておかなければ不安に負けてしまいそうでした。

 ICUに向かう途中、数年前の桜花賞の日に心臓発作で急逝した叔父のことを思い出しました。ICUに早足で向かうのは、叔父が急逝した日以来2回目。何度経験しても心がざわざわとする独特の感覚です。

「阪神競馬場の柱1本くらいはおっちゃんが建てたんやで! それくらい馬券で負けてる(笑)。でも、たぶん今週も馬券買うのはやめられへんわぁ」と、会うたびに言っていた叔父。

「今日のレースも天国で見てたんかなぁ? もう馬券買えへんから見てへんか…」

 そんなことを呑気に考えている自分に気づき、こんなことを考える余裕があるなら大丈夫かもしれないと落ち着きを取り戻すことができました。

 ICUに到着すると、私たちを待っていた看護師さんから、「医師から検査結果の説明があるので、すぐに診察室にきてください」と告げられ、子供たちをJRAの職員さんに預け、診察室に急ぎました。

 この日は土曜日。翌日も開催日です。にも関わらず、3人のJRAの職員さんと運転手の方は最後まで病院にいてくださって、いろいろな手続きをしてくださいました。手厚い対応、本当に感謝しています。

 診察室に入り、簡単な挨拶を済ませると、すぐにMRIやCT画像を見ながら説明を受けました。

・診断名は脳挫傷
・複数個所の骨折
・腰椎、頸椎損傷
・頭部外傷は、現在の医学では積極的な治療はできない
・異変を見逃さないように、ICUにて24時間体制で見守る
・新たな出血が起こるなど、急変しない限りは命を落とす可能性は低い
・急変した場合、開頭手術を行う可能性もある。親族の同意が必要なので、病院からの電話には必ず出てほしい
・頭部外傷は回復後のリハビリが非常に重要
・体は半年を目途に、脳は2年を目途に回復する。そのため、長期の入院リハビリが必要
・時期の予測はできないが、意識を取り戻す可能性は高い
・どこまで回復するかは現段階では明言できない
・コロナ禍のため、基本的に面会はできない。医師から患者家族への説明も、明日以降はすべて電話での対応になる
・あとのことは病院に任せて、自宅に帰っていただいても構わない

 このような内容を素人の私にも理解できるように丁寧に説明してくださり、私の疑問にもすべてわかりやすく答えてくださいました。

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白浜由紀子

1981年9月9日生まれ。2015年に障害騎手の白浜雄造と結婚。1男1女をもうける。結婚前は四位洋文調教師や福永祐一調教師(両名、当時騎手)らが所属していたマネージメント会社にてマネージャーを務め、TV番組収録やイベント等、様々な現場で騎手をサポート。福永調教師の引退までの16年間はバレット業務も兼任。福永厩舎開業後は経理兼秘書業務を担当予定。現在はオンラインサロン「福永祐一 競走馬研究所」の運営スタッフを務める傍らフリーランスとして活動中。新たな目標のアイシングクッキー講師としても活動すべく準備中。(旧姓は坪田、また戸籍上の表記は幸子)

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