【#5】「誰にもいてほしくない」夫の言葉に逆らい面会 そこで感じた現実とドラマの違い

アプリ限定 2023年05月21日(日) 18:01

shirahama

▲いよいよICUで夫と面会 (撮影:桂伸也)

障害ジョッキーの白浜雄造騎手の奥様が、昨夏の落馬から復帰を目指して奮闘する夫と家族のリアルな姿を描く新連載。

夫が眠るICUに入る許可が下りましたが、由紀子さんには引っかかることが…。しかし看護師さんの「会っておかれたほうがいい」という助言で面会することを決断しました。

雄造騎手は眠ったままの短い面会時間でしたが、白浜夫婦らしいひとときとなりました。

「奥様のお声が聞こえて安心されているのかもしれませんね。」

 身に着けていた衣類や防具の確認を終えると、看護師さんからこんな報告がありました。

「コロナワクチンを3回接種している成人の親族ひとり、15分間だけICUに入る許可が下りました」

 滋賀から遠路はるばるやってきた患者家族に、配慮していただいたのだと思います。ただ、ずいぶん前に夫と「事故などで怪我をして意識を失い、目を覚ましたとき、誰に側にいてほしいか?」という話をしたことがあり、そのときに夫は、

「誰にもいてほしくない。ひとりがいい」

 と、言っていたのです。

 子供たちは面会できませんでしたし、夫はきっと誰にも会いたくないだろうと思い、私は面会を辞退する旨を看護師さんに伝えました。

 すると、看護師さんからは、「お子さんの声をスマホに録って聞かせてあげるのはどうですか? それに、今を逃すと一カ月は会えない可能性が高い。急変する可能性もゼロではないから、会っておかれたほうがいいですよ」と助言が。

 そうか、もう二度と会えない可能性もゼロではないんだ──最悪の事態に思い至った私は、面会をすることに決めたのです。

 子供たちにパパを応援してもらおうとスマホのカメラを向けましたが、たくさんの大人たちに囲まれ、遊んでもらえる状況に興奮しているふたり…。上手く応援動画を撮ることはできませんでした。

 動画撮影はあきらめ、ICUに入る諸々の手続きを済ませ、いざICUへ──。一度溶けた緊張が、再び私の心を覆っていくのを感じました。

 途中、緊張する私を見た看護師さんが、そっと肩を抱いてくれました。「しっかりしなければ」と気合いを入れ直し、夫が眠るベッドへ向かいました。

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白浜由紀子

1981年9月9日生まれ。2015年に障害騎手の白浜雄造と結婚。1男1女をもうける。結婚前は四位洋文調教師や福永祐一調教師(両名、当時騎手)らが所属していたマネージメント会社にてマネージャーを務め、TV番組収録やイベント等、様々な現場で騎手をサポート。福永調教師の引退までの16年間はバレット業務も兼任。福永厩舎開業後は経理兼秘書業務を担当予定。現在はオンラインサロン「福永祐一 競走馬研究所」の運営スタッフを務める傍らフリーランスとして活動中。新たな目標のアイシングクッキー講師としても活動すべく準備中。(旧姓は坪田、また戸籍上の表記は幸子)

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