【#13】「別の医師の別の視点で」セカンドオピニオンをお願い──叶わなかった私の密かな計画

アプリ限定 2023年07月16日(日) 18:01

shirahama

▲セカンドオピニオンに便乗した密かな計画が…(撮影:桂伸也)

障害ジョッキーの白浜雄造騎手の奥様が、昨夏の落馬から復帰を目指して奮闘する夫と家族のリアルな姿を描く新連載。

落馬から2週間。パパ友、ママ友に誘ってもらい、琵琶湖でのBBQに参加。夫のいない光景に寂しさを感じますが、先の明るい未来を見据え、意識の転換を行います。

「別の医師の視点で何か新しい事実が発覚するかも」と考え、JRAの嘱託医へセカンドオピニオンを依頼。権威ある医師の話を直接伺いに出向きたいと考えた由紀子さんには、もう一つの目的が…?

計画を打ち砕いたのは「医師の気遣い」

 9月11日、日曜日。落馬から2週間が経ちました。

 どんなに大変な状況下に置かれても、人間はその環境に適応するようになっているのでしょうか。というのも、もともと夫はスクーリングやレースなどで不在がちで、私たちにとって母子3人での生活は日常でした。そんなこともあってか、この頃には「夫がいない生活」に慣れつつありました。

「亭主元気で留守がいい」とよく言われていますが、亭主は元気でなくても留守のほうが楽……そんなふうに感じることも(苦笑)。食事も子供と自分の分だけ作ればいいし、洗濯、掃除も大人ひとり減るだけでずいぶんと楽なのです。とは言ったものの、やはりふとしたときに寂しさを感じることは多々あり、落馬前の本当の日常が恋しくなったりもしました。

 この日はパパ友、ママ友に誘ってもらい、琵琶湖に湖水浴へ。もともと琵琶湖での湖水浴&BBQは夫の提案で行くようになり、昨年の夏は毎週のように琵琶湖に出掛けていました。

 いつもと同じ場所にテントを張り、いつもと同じ海の家でBBQコンロをレンタル。そして、いつもと同じようにはしゃぐ子供たち。すべてがいつもと同じ光景でしたが、ただひとつ違ったのは、夫がいないこと──。そんな状況に寂しさを感じていると、パパ友とママ友が声を掛けてくれました。

「来年の夏にはきっとパパは良くなって帰ってきてる! 病院の先生もそう言ってるんだよね? 競馬のことはよくわからないけど、この前のBBQのとき、パパとレースを観に行く約束をした。今は医師の言葉とパパの回復力を信じよう。そして来年は絶対に一緒に来よう!」

 すぐ近くの未来を見ると、見通しが立たないように感じてつらくなることもあるけれど、もう少し先の未来は明るいかもしれない。当事者になると、今の状況を処理することに追われてしまい、どうしても先が見えなくなります。そんなときは一歩引いて、俯瞰で物事を捉える。そんな意識の転換ひとつで、物事の見え方は変わってくるのかもしれないなと思いました。

 私よりひと回りほど年上で、大企業でたくさん部下を抱えてお仕事をしているパパ友が、私に気づきを与えようとしてくださったのか、この日は普段よりもいろいろなお話をたくさんしてくださったように思います。そんなパパ友の話に耳を傾け、どこまでも広がる琵琶湖の広大な景色を見つめながら、「今年の夏は終わってしまうけど、1年後は夫もまた一緒にここにこよう!」と誓ったのでした。

 こうして、激動だった白浜家の2022年の夏は終了。夫の容態も含め、新たな季節に突入しました。

 9月17日、土曜日。

 この日は、JRAの嘱託医である脳外科医が中山競馬場にこられるとのことで、夫についてセカンドオピニオンをお願いしていました。

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白浜由紀子

1981年9月9日生まれ。2015年に障害騎手の白浜雄造と結婚。1男1女をもうける。結婚前は四位洋文調教師や福永祐一調教師(両名、当時騎手)らが所属していたマネージメント会社にてマネージャーを務め、TV番組収録やイベント等、様々な現場で騎手をサポート。福永調教師の引退までの16年間はバレット業務も兼任。福永厩舎開業後は経理兼秘書業務を担当予定。現在はオンラインサロン「福永祐一 競走馬研究所」の運営スタッフを務める傍らフリーランスとして活動中。新たな目標のアイシングクッキー講師としても活動すべく準備中。(旧姓は坪田、また戸籍上の表記は幸子)

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