競走馬オークション主催者の老舗・タタソールズの上場馬リストが発表

2023年08月23日(水) 12:00

創業は今から257年前の1766年

 10月3日(火曜日)から5日(木曜日)にかけて、英国のニューマーケットで開催される「タタソールズ・オクトーバー・イヤリングセール・ブック1」の上場馬リストが発表になった。

 タタソールズと言えば、創業が今から257年前の1766年という、競走馬オークション主催者の老舗である。

 英国ダービーの創設が1780年で、英国最古のクラシックである英セントレジャーの創設が1776年だから、それより以前からタタソールズは存在していたことになる。あるいは、ウェザビーがジェネラルスタッドブック序文を出版したのが1791年だったから、競馬の根幹である血統の系統化よりも早く、英国では公の場における競走馬の流通が始まっていたのだ。

 創業者は、現在も社名として残るリチャード・タタソール氏で、創業当時のセールの開催場所はロンドンのハイドパークコーナーであった。

 タタソールズ社のせり会場は、創業から1世紀ほどが過ぎた1865年に、同じロンドンのナイツブリッジ・グリーンに移転。同地におけるセール開催は、第2次大戦が勃発した1939年まで継続された。その一方で、タタソールズ社は1869年から、ドンカスターにおけるセール開催をスタート。さらに1886年には、ディセンバーセールを初めてニューマーケットで開催している。イヤリングセールがドンカスターからニューマーケットに移設されたのは、第2次大戦後の1958年だった。すなわち、ニューマーケットにおけるイヤリングセールの歴史は、まだ65年ほどで、タタソールズ全体の歴史からすると、その4分の1を占めるに過ぎないのである。

 そして、社業が急速に膨らんだのは、実は今世紀に入ってからで、2006年に2億ギニーを突破した年間売り上げが、11年後の2017年に3億ギニーとなり、さらのそのわずか5年後の2022年には4億ギニーを突破している。

 タタソールズの売り上げが伸びている主たる要因は、出身馬の活躍が顕著なことに尽きる。過去20年の英国における3歳クラシック勝ち馬を例にとれば、05年のモティヴェイター、06年のサーパーシー、07年のオーソライズド、12年のキャメロット、14年のオーストラリア、22年のデザートクラウンと、実に6頭の英国ダービー馬がタタソールズ・オクトーバーセールで購買された馬だった。オクトーバーセールはさらに、英セントレジャー勝ち馬を5頭、英2000ギニー勝ち馬を3頭、英オークス勝ち馬を2頭、英1000ギニー勝ち馬を1頭輩出しており、ほとんど毎年のように英国クラシック勝ち馬を生み出している。

 出身馬の活躍は、英国内にとどまるものではない。2023年で言えば、オーストラリアでG1ランヴェットSやG1クイーンエリザベスSを制したドバイオナー(セ5、父Pride Of Dubai)、アメリカでG1ジェニーワイリーSやG1ジャストアゲームSを制したインイタリアン(牝5、父ドバウィ)、同じくアメリカでG1サラトガダービーを制したプログラムトレーディング(牡3、父ロペデヴェガ)、香港でG1クイーンエリザベス2世Cを制したロマンチックウォリアー(セ5、父Acclamation)、アイルランドでG1タタソールズGCを制したルクセンブルク(牡4、父キャメロット)、フランスでG1ジャンプラ賞を制したグッドゲス(牡3、父Kodiac)が、いずれもオクトーバーセールで購買された馬たちだった。

 このうち、ドバイオナーは19年のオクトーバーにて11万ギニー(約1647万円)、ルクセンブルクは20年のオクトーバーにて15万ギニー(当時のレートで約2225万円)という、お手頃価格での購買であった。

 今年のオクトーバー・イヤリングセール・ブック1には、532頭が上場予定。

 フランケル、ドバウィ、キングマン、シユーニ、ダークエンジェル、シーザスターズ、ロペデヴェガなど、リーディング上位の種牡馬のほとんどが産駒を送り出している他、アースライト、ガイヤース、ハローユームザイン、カメコ、ピナトゥボ、ソットサスといった、今年の1歳が初年度産駒となる期待の若手種牡馬たちの産駒たちも顔を揃えている。

 また、532頭の上場馬のうち、実に71頭が、母がG1勝ち馬か、兄か姉がG1勝ち馬という超良血馬だ。

 前者で言えば、母がG1英1000ギニーなどG1・4勝のスカイランタンの牡馬(上場番号110番、父フランケル)、母がG1プリンスオヴウェールズSなどG1・4勝のザフューグの牡馬(上場番号148番、父ウートンバセット)、母がG1ブリーダーズカップマイルなどG1・4勝のユニの牝馬(上場番号170番、父キングマン)、母がG1英1000ギニーなどG1・5勝のアトラクションの牡馬(上場番号251番、父フランケル)、母がG1ドバイシーマクラシックなどG1・3勝のダーレミの牡馬(上場番号307番、父ロペデヴェガ)などは、各国から集まるバイヤーたちの垂涎の的となりそうだ。

 後者で言えば、G1サセックスSなどG1・4勝のアルコールフリーの半妹(上場番号27番、父ロペデヴェガ)、G1仏オークスなどG1・3勝の現役馬ナシュワの半弟(上場番号35番、父ドバウィ)、G1凱旋門賞などG1・4勝のヴァルトガイストの半弟(上場番号184番、父フランケル)、G1ナンソープSなどG1・4勝のバターシュの半妹(上場番号240番、父ブルーポイント)、G1アイリッシュチャンピオンSなどG1・3勝の現役馬ルクセンブルグの全妹(上場番号250番、父キャメロット)、G1エクリプスSなどG1・5勝のセントマークスバシリカの半弟(上場番号278番、父キングマン)、G1英インターナショナルSなどG1・3勝のミシュリフの全弟(上場番号289番、父メイクビリーヴ)などに、特に大きな注目が集まりそうだ。

 オクトーバー・イヤリングセールでどのような商いが展開されるか、日本の皆様にもぜひご注目いただきたい。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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