2023年10月25日(水) 18:00
▲オータムセール会場風景
去る10月16日、17日の2日間、新ひだか町静内の北海道市場にて開催された「オータムセール」は、合わせて435頭(牡201頭、牝234頭)が上場、330頭(牡159頭、牝171頭)が落札されて、売り上げ総額が11億9310万円(税抜き、以下同)となり、前年を1880万円上回る好成績となった。平均価格は前年比4万6154円増の361万5455円(牡382万125円、牝342万5146円)と、ほぼ400万円に届くところまできた。
過去10年間の数字を比較してみると、その上昇ぶりがはっきりと分かる。2014年のオータムセールでは、今年より268頭も多い703頭が上場され、436頭が落札、売却率62.02%、合計11億3928万円の売り上げで、平均価格は282万2069円。今年の平均価格より100万円以上も低かったのである。因みにこの2014年のサマーセールの平均価格は407万4074円だったので、今年のオータムセールの平均価格は10年前のサマーセールの平均価格に並ぶほどの水準まで上昇してきていると言える。
さて、オータムセール2日間を通じての最高価格馬は、初日に上場された193番ジャポニカスタイルの2022(牝栗毛、父スワーヴリチャード、母の父キングズベスト)の1980万円(落札価格1800万円)であった。今年初年度産駒がデビューし好成績を挙げて注目度が高まっているスワーヴリチャード産駒、しかも本セールで唯一の上場馬とあって、活発な競り合いの末、この価格まで上昇した。販売・飼養者は(株)Blooming Farm。落札者は河野勇樹氏である。
▲オータムセール最高価格馬のジャポニカスタイルの2022落札場面
▲オータムセール最高価格馬のジャポニカスタイルの2022
一方、牡馬の最高価格馬は、2日目に上場された343番アドマイヤマリリンの2022(鹿毛、父パイロ、母の父アグネスタキオン)の1870万円(落札価格1700万円)。
本馬は母の兄弟にアドマイヤホープ、アドマイヤフジ、アドマイヤコスモスなどの名前が並ぶ母系で、さらに人気の高いパイロ牡馬という点も評価され、この価格となった。販売者・高橋義浩氏、落札者は宮崎俊也氏。飼養者はHyperion Farm。
▲牡馬最高価格で落札されたアドマイヤマリリンの2022
オータムセールは売却率が前年比1.37%減の75.86%だったものの、ほぼ前年並みの数値を示し、依然として生産地の好況ぶりが窺える結果を残したと言えそうだ。
これで、日高では、5月・2歳トレーニングセール(札幌競馬場)を皮切りに、7月セレクションセール、8月サマーセール、9月セプテンバーセールと順調に日程を消化し、今回のオータムセール終了を以て全市場を終えたことになる。これら全5市場の総売り上げは、計170億5770万円となり、前年より22億円以上の大幅アップを記録して、主催者の日高軽種馬農協としては、史上最高の売り上げである。2歳トレーニングセールだけは、売り上げ、平均価格いずれも前年を下回ったが、セレクションセール以降、オータムに至るまで、1歳市場は、すべて前年の実績を大きく上回り、盛況であった。
全市場をトータルした売り上げを全売却頭数2162頭で割った1頭当たりの平均価格は、実に788万9778円となり、昨年よりも約60万円の増加である。
この1歳市場の好調の要因はいろいろ考えられるが、一番先に上げられるのが、ここ数年にわたり完全に復調してきている各地方競馬の需要であろう。昨年度、年間の馬券総売り上げが地方競馬初の1兆円に到達した。さすがにその後はやや頭打ちの感があるものの、依然として今年も前年並みの数字を維持できており、今後、さらなるダート路線の拡充、整備が進めば、「自前の競馬場から強いスター候補馬を生み出したい」と、各主催者がより積極的に馬主会に補助金を拠出して、1歳馬購買を奨励する流れになってきている。それが市場における旺盛な購買意欲につながり、平均価格を押し上げる形になったのは確かなようだ。
これら5市場の終了を受けて、日高軽種馬農協・古川雅且組合長は「点数としては120点をつけられる売り上げでした。そして今年の取引馬の中から来年、また活躍馬が出てくれたら、さらなる市場振興に繋がりますね」と語り、今後に向けて「サマーセールなどは頭数の多さと想定外の高気温とで課題も残りました。来年に向け、内部で検討を加え、より良い市場を開催できるように努めたい」とコメントしていた。
▲日高軽種馬農協・古川雅且組合長
未定とはいえ、すでに組合内部では来年に向け様々な意見が出ており、例えば7月セレクションセールに続ける形で、「サマーセール・プレミアム(仮称)」として、2日間、400頭程度を前倒しで実施する案も出ているとのこと。現状では、既存の5市場の開催時期の大幅変更は困難だが、最も大きな課題は、頭数が著しく増大しているサマーセールの上場馬をどう振り分けるか、という点である。異例の灼熱下での開催となった今年のサマーセールを踏まえると、来年以降、日高地方の8月の気候が本州並みになっていく前提で計画しなければならず、暑さ対策をまず優先して日程調整する必要が出てくる。
また、いくら厳しい夏の気候であっても、秋の深まりとともにオータムセールの開催時期は10月中旬あたりに固定させなければならず、そこから逆算すれば、セプテンバー、サマーともに開催時期を大きく動かすことは、現状ではかなり難しい。
好況に沸いたとはいえ、来年に向けて、市場運営に関しては新たな問題が浮上してきた1年間であったと言えるだろう。
バックナンバーを見る
このコラムをお気に入り登録する
お気に入り登録済み
お気に入りコラム登録完了
田中哲実「生産地だより」をお気に入り登録しました。
戻る
※コラム公開をいち早くお知らせします。※マイページ、メール、プッシュに対応。
田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。
コラム
盛況のうちに終わったセプテンバーセール
ニュース
当歳は売却率100%で総額15億2800万円の売り上げ ミックスセール2023
史上最高の売り上げを記録したサマーセール
セレクトセールからセレクションセールへ
驚異的な勢いだったセレクトセール1歳セッション
競輪
競輪を気軽に楽しもう!全レース出走表・競輪予想、ニュース、コラム、選手データベースなど。