【エリザベス女王杯 AI予想】今週は見解が一致! AIの注目馬はレースの傾向からも魅力十分

2023年11月06日(月) 18:00

AR共和国杯はゼッフィーロの勝利(撮影:下野雄規)

netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。

(文・構成=伊吹雅也)

超人気薄の馬が頻繁に穴をあけているというわけではない

AIマスターM(以下、M) 先週はアルゼンチン共和国杯が行われ、単勝オッズ2.4倍(1番人気)のゼッフィーロが優勝を果たしました。

伊吹 最終的に◎を打った私が言うもの何ですけど、まさかこんな形で勝ち切るとは……。スタート直後は積極的に出していこうとせず、1コーナーを12番手で通過。2コーナーで内ラチ沿いのポジションを確保し、コースロスなく3〜4コーナーを周ってきたものの、ライバルたちに囲まれていたこともあって、4コーナーを通過した時点では15番手に下がってしまっています。しかし、残り400m地点のあたりで1頭分だけ前への進路ができると、そこに躊躇なく飛び込んで、あとは先に抜け出した各馬を捕らえるだけの態勢に。残り200m地点でもうマイネルウィルトス(2着)に並びかけ、そのまま逆に1馬身の差をつけて入線したわけですが、いわゆる“経済コース”を周ってきた分のアドバンテージが、最後の伸び脚に繋がった印象です。大胆かつ繊細なJ.モレイラ騎手の手綱捌きも、その指示に完璧な形で応えたゼッフィーロも、お見事というほかありません。

M ゼッフィーロは重賞初制覇。キャリア12戦目、オープン入りから4戦目でのタイトル獲得となりました。

伊吹 オープンクラスに上がってからは勝ち切れないレースが続いていたものの、前走のオールカマーで3着に、2走前の目黒記念でも4着に健闘していましたから、順当勝ちと言って良いような気もします。ただ、メンバー構成や負担重量に恵まれたわけではないので、相応に高く評価するべきでしょう。母のワイルドウインドはドイツ産馬で、現役時代にフランス1000ギニー3着などの実績がある馬。貴重な存在となりつつあるディープインパクト直仔でもありますし、次走以降が本当に楽しみです。

M ちなみに、前回の当コラムでAiエスケープが推奨したヒートオンビートは3着同着でした。

伊吹 単勝オッズ11.6倍の4番人気にとどまっていたうえ、ゴール前の直線でスムーズさを欠いたにもかかわらず馬券圏内を確保したわけですから、健闘と言って良いのではないかと思います。59kgの負担重量を課されていた点や、キャリアの浅い馬が強いレースだったことを考えれば、先着を許した馬たちと同等以上に評価して良いはず。Aiエスケープの見立ては間違ってなかったようですし、今週の注目馬からも目が離せませんね。

M そんな今週の日曜京都メインレースは、下半期の最強牝馬決定戦と位置付けられているエリザベス女王杯。昨年は単勝オッズ8.1倍(4番人気)のジェラルディーナが優勝を果たしました。2021年に3連単339万3960円の高額配当が飛び出すなど、波乱の決着となった年も少なくない印象ですが、積極的に伏兵を狙っていくべきレースと考えて良いのでしょうか?

伊吹 過去10年の3着以内馬30頭中、単勝7番人気以下だった馬は8頭。大きく荒れた年がある一方で、堅く収まる年もそれなりに多いレースです。

M 単勝7番人気以下の馬は3着内率が7.0%どまり。当然と言えば当然の話かもしれませんが、上位人気グループの馬とは大きな差がありますね。

伊吹 ちなみに、単勝7〜12番人気の馬は2013年以降[1-6-1-52](3着内率13.3%)だったものの、単勝13番人気以下の馬は2013年以降[0-0-0-55](3着内率0.0%)。超人気薄の馬は上位に食い込めていません。順当な決着となる可能性がそれなりにあることを踏まえたうえで、実績と妙味が兼ね備わった連軸候補を探すようなイメージで予想に臨むべきでしょう。

M そんなエリザベス女王杯でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ディヴィーナです。

伊吹 面白いところを挙げてきましたね。ある程度の注目は集まると思いますが、人気が集中するということはなさそう。

M ディヴィーナは前哨戦の府中牝馬Sを制した馬。今春のヴィクトリアマイルで4着に食い込んだり、牡馬相手だった3走前の中京記念と2走前の関屋記念でそれぞれ2着となったりした実績もあります。ただし、2000m以上のレースを使うのは2021年の10月以来で、およそ2年ぶり。距離適性などを重視している方は、あまり魅力を感じていないかもしれません。

伊吹 買い目の中心に据えるつもりという方も、思い切って消すつもりという方も、それぞれたくさんいそうな馬ですよね。Aiエスケープが今のところ前者の立場であることを踏まえたうえで、好走馬の傾向とこの馬のプロフィールを見比べていきましょう。

M 最大のポイントはどのあたりだと考えていますか?

伊吹 格の高いレースを経由してきた馬が優勢である点は押さえておきたいところ。阪神芝2200m内で施行された2020〜2022年を含めても、近年は前走でGI・GII以外のレースを使っていた馬があまり上位に食い込めていません。

M 前走が重賞以外のレースだった馬はもちろん、GIIIだった馬も割り引きが必要ですね。

伊吹 たとえ実績上位であっても、この条件に引っ掛かっている馬は疑ってかかるべきでしょう。

M 先程も触れた通り、ディヴィーナの前走はGIIの府中牝馬S。強調材料のひとつと言って良いのではないかと思います。

伊吹 あとは直近のパフォーマンスも素直に評価した方が良さそう。2016年以降、かつ京都芝2200m外で施行された年に限ると、前走の着順が6着以下だった馬は苦戦していました。

M 大敗直後の馬は強調できませんね。

伊吹 特別登録を行った馬のうち、前走の条件がGI・GII、かつ前走の着順が5着以内だった馬はわずか6頭。わりと大胆に絞り込んで良いのではないでしょうか。

M そして、ディヴィーナはそのうちの一頭です。

伊吹 さらに、同じく2016〜2019年の4回に限ると、連対馬8頭のうち7頭は前走の4コーナー通過順が4番手以内でした。

M これはわかりやすい。施行コースが京都芝2200m外に戻る今年は、前走で先行していた馬を重視するべきでしょうね。

伊吹 ちなみに、前走の4コーナー通過順が5番手以下だった馬のうち、“前年以降の、JRAの、GIのレース”において2着以内となった経験がない馬は[0-0-0-32](3着内率0.0%)。ビッグレースで優勝を争ったことがあるくらいの実績馬でない限り、差し馬は評価を下げるべきだと思います。

M 府中牝馬Sを逃げ切ったばかりのディヴィーナは、理想的な臨戦過程と言って良いかもしれません。

伊吹 もともと私も相応に重いシルシを打つつもりでした。2016〜2019年は7〜8枠の馬が[0-0-0-21](3着内率0.0%)ですし、枠順やオッズを確認したうえで最終的な評価を下しますが、Aiエスケープも有力と見ているのならば、素直に連軸を任せて良いのかも。ちなみに、母のヴィルシーナは東京芝2400mのオークスや京都芝2200m外のエリザベス女王杯でも2着となった実績がある馬ですから、距離適性はそれほど心配しなくて良いでしょう。楽しみですね。

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伊吹雅也

競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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