2023年11月29日(水) 12:00
世界の競馬ファンの半ば以上が日本に注目したのが先週末だったが、障害シーズンが本格化したヨーロッパでも見逃せない戦いが行われている。
26日にアイルランドのパンチェスタウン競馬場で行われたG1ジョンダーカンメモリアルチェイス(芝19F150y)。ここを今季の始動戦に選んだのが、昨シーズンのG1ゴールドC(芝26F70y)勝ち馬ガロパンデシャン(セ7、父ティモス)だった。昨シーズンもここから始動し、レパーズタウン競馬場のG1アイリッシュゴールドC(芝24F44Y)、チェルトナム競馬場のG1ゴールドCと3連勝を果たし、スティープルチェイス3マイル路線の頂点に立った同馬。
仕上がり具合は上々に見え、ファンはオッズ1.5倍の圧倒的1番人気に支持したが、道中4番手を追走した後、先行した馬たちを捕らえきれず、勝ち馬から1.3/4馬身差の3着に敗れる波乱となった。勝ったのは、昨シーズンのG1パンチェスタウンゴールドC(芝24F30y)に続く2度めのG1制覇となったファーストオアスロウ(セ7、父サンデサン)。昨シーズンのG1チャンピオンノービスチェイス(芝24F60y)2着馬アプリーシエイトイット(セ9、父ジェレミー)が2着に入っている。
ガロパンデシャンと対照的に、オッズ1.16倍の人気にきっちりと応えて快勝したのが、前日の25日に同じくパンチェスタウン競馬場で行われたG1モルジアナハードル(芝16F160y)に出走した、アイルランドにおけるハードル2マイル路線の最強馬ステイトマン(セ6、父ドクターディーノ)だった。
フランス産馬で、祖国で1戦した後、21/22年からアイルランドに在籍している同馬。移籍初戦でいきなり落馬の憂き目にあったが、2戦目から3連勝で、G1チャンピオンノービスハードル(芝19F80y)に優勝。オープンクラスに入った22/23年は、G1ばかり5戦し、パンチェスタウン競馬場のG1パディーパワーチャンピオンハードル(芝16F)を含む4つのG1を制覇。唯一敗れたのが、コンスティテューションヒルでは歯が立たなかったチェルトナム競馬場のG1チャンピオンハードル(芝16F87y)だった。
ステイトマンにとっても、G1モルジアナハードルは今季の始動戦だったが、2番手追走から8号障害飛越後に先頭に立つと、昨季のG1メアズチャンピオンハードル(芝19F30y)勝ち馬エコーズインレイン(牝7、父オーソライズド、8倍の2番人気)の追い込みを楽々と封じ、5馬身差をつけて快勝。このレース前年に続く連覇を果たした。まさしく磐石の競馬だったと言えよう。
ステイトマンにとって大きな目標となるのは、当然のことながら、昨年は2着に泣いたチェルトナムフェスティバルのG1チャンピオンハードルになるわけだが、ブックメーカーの前売りを覗くと、同馬は3番人気に甘んじている。しかも、多くの社が7倍、中には8倍のオッズをつけている社もある。この路線の絶対王者コンスティテューションヒルが今季も健在だから、1番人気にはならないにしても、3番人気ということは、現在のハードル2マイル路線には、ステイトマンを上回る期待を寄せられている馬が、コンスティテューションヒルの他に、もう1頭いることを意味している。
チャンピオンハードルの前売りで各社が5〜6倍のオッズを掲げ、2番人気に支持しているのが、今週日曜日(12月3日)にフェアリーハウス競馬場で行われるG1ハットンズグレイスハードル(芝20F70y)に出走を予定しているアンペアエパス(セ5、父ダイヤモンドボーイ)だ。フランス産馬で、祖国でナショナルハントフラットを1戦した後、昨シーズンからアイルランドに在籍。
初戦となったネース競馬場のメイデンハードル(芝18F183y)を18馬身差で制して初勝利を飾ると、続くパンチェスタウン競馬場のG2モスコウフライヤーノーヴィスハードル(芝16F)を6.1/2馬身差で、チェルトナムのG1バリングビングハムノーヴィスハードル(芝21F)を同じく6.1/2馬身差で、パンチェスタウン競馬場のG1チャンピオンノービスハードル(芝19F80y)を7.1/2馬身差で快勝。楽勝続きの4連勝を飾ったのである。
同馬がいよいよオープンクラスと初めて顔を合わせるのが、今週末のG1ハットンズグレイスハードルで、その結果と内容次第では、チャンピオンハードルのオッズが動くことになりそうだ。
そして、各社が2倍を切るオッズを掲げて1番人気に推すコンスティテューションヒル(セ6、父ブルーブレジル)は、今週土曜日(12月2日)にニューキャッスル競馬場で行われるG1ファイティングフィフスハードル(芝16F46y)で、今季初めてファンの前に姿を見せる予定となっている。今週末も、ヨーロッパの障害戦から目が離せないことになりそうだ。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。
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