各国で繰り広げられる熾烈な各種リーディング争い 残り半月の戦局から目が離せない

2023年12月13日(水) 12:00

特にリーディングサイヤー争いが佳境を迎える

 今年も残り半月ほどとなり、各国の各種リーディング争いが大詰めを迎えている。

 なにより、お膝元であるJRAのリーディングサイヤーが、10日の競馬が終わった段階でロードカナロアとドゥラメンテが1億円を切る差で痺れるような首位争いを展開しており、最後までもつれることが予想されている。

 アメリカで接戦が展開されているのが、ファーストシーズンサイヤーチャンピオンを巡る争いだ。ブラッドホースの集計によると(12月11日現在)、北半球で供用されているファーストシーズンサイヤーで、北アメリカにおける獲得賞金が最も多いのがミトーリ(父Eskendereya)で、通算収得賞金額は213万2249ドル。2位が198万7167ドルのマキシマスミスチーフ(父Into Mischief) で、3位が195万0051ドルのヴィーノロッソ(父カーリン)、4位が180万9920ドルのオマハビーチ(父War Front)となっている。

 すなわち、33万ドルほどの間に4頭がひしめいているのだが、実はこの4頭は全て、ケンタッキー州のスペンドスリフトファームで供用されている種牡馬たちである。

 彼らがスタッドインしたのは2020年で、初年度の種付け料はそれぞれ、ミトーリが25000ドル、マキシマスミスチーフが7500ドル、ヴィーノロッソが30000ドル、オマハビーチは40000ドルだった。

 これだけ見ると、期待を良い方向に裏切る活躍を見せているのは、マキシマスミスチーフということになろう。

 初年度の種付け料が4頭の中では最も高かったオマハビーチは、自身が2歳時は3戦して未勝利だった馬で、産駒も動き出しは早くないだろうと考えられていた。それだけに、現在の4位というポジションは、むしろこの時季によく頑張っているというのが、一般的な捉え方である。

 初年度の種付け料7500ドル(当時のレートで約83万円)で供用されたマキシマスミスチーフは、その名が示す通り、今季も北アメリカの総合リーディングを独走中のInto Mischiefの直仔である。

 ファシグティプトン・フロリダ2歳セールにて34万ドルで購買されて、バッチ・リード調教師の管理下に入ったマキシマスミスチーフは、2歳の9月29日にパークス競馬場のメイドン(d5.5F)でデビュー。ここを8.3/4馬身差で圧勝して緒戦勝ちを果たした。続いて出走したパークス競馬場のアロウワンス(d7F)も6馬身差で制して連勝を果たすと、陣営は同馬の次走に、アケダクト競馬場のG2レムゼンS(d9F)を選択。マキシマスミスチーフはここも2.1/4馬身で制して、無敗の3連勝で重賞初制覇を飾った。

 この段階での同馬が、翌春のG1ケンタッキーダービーへ向けた有力候補と目される存在になったことは言うまでもない。

 3歳初戦となったのが、ガルフストリームパーク競馬場のG2ホーリーブルS(d8.5F)で、マキシマスミスチーフはオッズ1.9倍という圧倒的1番人気に推された。しかし、ここでの同馬は2番手追走から伸びず、勝ち馬から1馬身+首差の3着に敗退、初黒星を喫した。

 レース後、同馬は脚部不安を発症。完治に至るまでには時間を要する疾病であったため、この段階で現役引退を決定。種牡馬入りすることになった。

 怪我がなかったら、どこまで出世したかは何とも言えないが、少なくとも、仕上がりが早くて、スピードがあったことは確かで、現段階では、そんな父の要素を受け継いだ産駒が多数出ている。122頭のマキシマスミスチーフ産駒が登録されている中、既に半数を超える66頭が出走を果たし、このうち30頭が勝ち馬となっている。

 ファーストクロップサイヤーランキング首位と4位との間にある33万ドルの差は、これが日本であれば1週でひっくり返ってしまう可能性があるが、北アメリカの賞金水準では、逆転するのは容易ではない。おそらくは、現在の順位のまま年末まで推移することになるとは思うが、そんな中、大勢をひっくり返す可能性をわずかに残しているのが、首位ミトレとの差が15万ドルほどの、マキシマスミスチーフなのだ。

 15日(金曜日)に、オクラホマ州のレミントンパーク競馬場で、スプリングボードマイル(d8F)という、ケンタッキーダービーポイント指定競走にも名を連ねる準重賞が組まれている。その、総賞金30万ドルのスプリングボードマイルに、マキシマスミスチーフは、前走キーンランド競馬場のLRボウマンミルS(d6F)を制し、デビューから無敗の3連勝を飾っての参戦となるグレンガリー(牡2)、前走G1アメリカンフェイローS(d8.5F)4着のレイジングトレント(牡2)という、2頭の有力馬を送り出すのである。

 ここで産駒が1、2フィニッシュを決めれば、リーディング逆転の目が出て来るのがマキシマスミスチーフだ。

 北アメリカのフレッシュマンサイヤーチャンピオン争いに注目したい。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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