【上村洋行調教師】飛躍の一年となった昨年の勢いそのままに! 2頭の“べラジオ”とともに再びの東西同日重賞制覇を狙う

2024年02月04日(日) 18:01

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▲京都記念に出走予定のベラジオオペラと共同通信杯に出走予定のベラジオボンドを管理する上村洋行調教師(C)netkeiba

“ベラジオ”2頭が東西重賞制覇を狙います。西の京都記念では日本ダービー制覇まであと一歩だったベラジオオペラ、東の共同通信杯にはクラシックを見据えて1億円馬ベラジオボンドが出走します。

送り出すのは上村洋行厩舎。年明けに一気に勝利を重ね、1月21日までは全国リーディングに立っていたのですが、それは偶然ではありませんでした。リーディング上位厩舎の多くは24馬房以上を持つ中、昨年は20馬房で40勝も挙げていたのです。

厩舎力がアップしている背景には、かつて角居厩舎を支えた腕利きや、些細な変化にみんなで気づく土壌が育まれているからでした。

好調の理由、そしてベラジオオペラとベラジオボンドについて、上村洋行調教師に伺いました。

(取材・構成:大恵陽子)

飛躍の年となった2023年──重賞3勝を挙げ全国リーディングも7位に

──昨年の日本ダービーはベラジオオペラが内から伸びてきて、クビ+ハナ+ハナ差の4着。一瞬、勝つんじゃないかと思ったくらい惜しかったです。

上村 一瞬来たから、「ひょっとしたら勝てるかも」と思いました。ダービーもそうですし、皐月賞も悔しいレースでした。

──その悔しさを秋に晴らす予定でしたが、状態が整わず菊花賞は見送られました。

上村 神戸新聞杯から始動予定にしていたんですけど、夏バテが響いたので無理せず、馬の状態が良くなるのを待ってから12月のチャレンジCが始動戦になりました。

──半年ぶりの一戦はプラス20kgでしたが、レースではセンスの良さを見せました。

上村 以前から言っていたんですけど、この馬が本当に良くなってくるのは古馬になってからだと感じていて、プラス20kgは成長分だと思っていました。調教の動きも良かったですし、レースも王道の競馬でした。

──ただ、内からもボッケリーニが伸びてきていて、写真判定に。ハナ差で勝利を手にしました。

上村 現地では勝ったと思ったんですけど、よくよくスローで見たら「あれ?」と。検量室のホワイトボードにも相手の馬番が先に書いてあったから負けたのかなと思っていました。スローモーションを見ても、結構きわどい争いでしたね。馬の状態や成長も含め、この先を見据えての一戦だったので、大きなハナ差の勝利でした。

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▲ひと夏越して成長したべラジオオペラがハナ差でチャレンジCを制覇(C)netkeiba

──同じ日、中山競馬場ではアイアンバローズがステイヤーズSを勝ち、同日重賞制覇となりました。

上村 ステイヤーズSのスタートは検量室で見ていたんですけど、表彰式が始まるのでウイナーズサークルに移動して、後ろのターフビジョンを見ながら表彰式に出ていました。で、「あれ? ひょっとしたら勝てそうかな」と思っていたら直線を向いて突き離したので、やっとこの馬で重賞を勝てたなと思いました。

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▲歓喜の勝利から十数分後、アイアンバローズも続いてステイヤーズSを制覇(撮影:下野雄規)

──さらに上村厩舎の好調は続きます。2023年のJRA最終日の12月28日には期待馬が集まる新馬戦でベラジオボンドがデビュー勝ちを収めました。

上村 千葉セリで買ったベラジオオペラが活躍した縁で、ボンドも千葉セリで昨年の最高額で買っていただき、それだけいい馬だなと思っていました。

──1億円でしたね。そういえば、ベラジオオペラもベラジオボンドもともにロードカナロア産駒です。

上村 たまたまカナロア産駒になったんです。ボンドは心肺機能が高そうな雰囲気があっていいなと思いました。調教動画も時計も公開されていて、ダイナミックな走りをしていました。秋のデビュー予定が爪のトラブルがあって年末のデビューになりましたけど、今は爪の不安も解消されています。

──デビューに向けては10月から在厩して調教が積まれていました。育成牧場を活用するのが主流の現代において、2カ月半かけてトレセンで鍛えたんですね。

上村 牧場で乗ったり乗れなかったりを繰り返していたので、それだったらトレセンに入れてイチから立て直そうということになりました。中身がまだまだでしたし、レースまでにはある程度の乗り込み量も必要なので、ビッシリ2カ月半乗り込みました。

──昨年は20馬房で40勝を挙げましたが、ベラジオボンドまでとはいかずともどの馬もしっかり在厩期間を取られた上での勝利。すごいことです。

上村 レースの3週ぐらい前には入厩させて、厩舎で手を掛けるのが基本的なやり方です。決してレース数を多く使っている厩舎ではないんですけども、チャンスのある馬はしっかりそれをモノにしていくことが去年は上手くできて、結果としていい数字で現れたかなと思います。

「みんなが引き寄せられて、勉強している」経験豊富な腕利きスタッフ陣の存在感

──上村厩舎には角居勝彦厩舎(解散)出身のスタッフさんがいたり、元騎手がいたり、やり手の調教助手が揃っています。

上村 一人一人、乗り方も馬へのあたりも違って個性が強いですけど、腕のある調教助手たちですし、それを生かした乗り方をしてもらっています。うちの厩舎の場合は担当馬以外に乗ることもありますし、担当馬のいる持ち乗り調教助手でも他の馬の状態も分かっていて、「休みの日でもここはちょっとチェックしなきゃいけない」など共有してやることができています。

──腕利きのベテランスタッフがいることで、馬の些細な変化に誰かが気づくことができるのも、上村厩舎の強みなのではないかなと感じています。

上村 午後からの馬体チェックは隅々までチェックをしますし、誰かがもし見落としても、二重三重でチェックするので「ちょっと危ないな」と感じた時は前もってケアはしていくようにしています。

──その二重三重のところにいるのが、上村調教師のお兄さんで、GI馬エイジアンウインズやシャケトラなどを担当された上村典久調教助手や、ウオッカの調教を担当した岸本教彦調教助手。その存在は、厩舎全体の底上げにもなるでしょうね。

上村 担当者が気づかないところを見つけることもありますけど、そうすると担当者は「もっとしっかり見よう」と思うようになって、今度は自分から「ここが気になるんですけど」と先に言ってくるようになります。みんなが引き寄せられて、勉強しているのかな、と感じます。

──さて、ベラジオオペラは京都記念に臨みます。

上村 チャレンジCを勝ってドバイも選択肢にはあったんですけど、ここまで大事にしてきた馬なので、海外遠征をするなら来年かな、と思い、大阪杯のステップで京都記念を使います。

──ベラジオボンドは同日の共同通信杯です。色んな選択肢があったと思いますが、ここを選んだ理由は?

上村 きさらぎ賞という選択肢もあったんですけど、今の京都の馬場状態を考えると、先を見据えて左回りの東京の1800mが一番いいのかな、と思いました。メンバーが強いのは分かっていますが、そこでどれだけやれるかを見たいと思います。

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▲「強いメンバー相手にどこまでやれるか」ベラジオボンドの戦いぶりに期待(C)netkeiba

──12月に続いて同日重賞制覇、そして今年はリーディングでさらなる高みを期待しています。

上村 同日重賞制覇が流行っていますからね(笑)。開業から毎年、前年度の勝ち星を超えているので、今年はやっぱり去年以上の成績を、と思います。ただ、まだ今年は始まったばっかりなので、リーディングよりも、まずは勝ち星と重賞、そしてGI制覇を目標にやっていければと思います。

(文中敬称略)

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