2024年03月10日(日) 18:00 3
11番人気のペプチドナイルを本命に抜擢
『ウマい馬券』で活躍するプロ予想家たちが、会心の的中を振り返る「予想の頭脳」。今回取りあげるのは、フェブラリーステークスを的中させた「TARO」氏。波乱となった一戦を、どのようなアプローチで攻略したのか……。本人自ら綴っていただきました!
今年最初のGI・フェブラリーSにおける◎ペプチドナイルに至った思考プロセスをご説明する前に、大前提として、予想をする上での大きなポイントと考えたのは、
「メンバーレベル」
でした。というのも、昨今の日本ダート馬の海外での活躍、さらには高額賞金レースの増加(円安も大きな追い風)により、日本のダート路線の空洞化が起きていると感じました。
とりわけ、サウジカップ&ドバイワールドカップが後に控える時期に開催されるフェブラリーSにおいてその傾向は顕著。昨年の春秋ダート王・レモンポップ、ドバイワールドカップ覇者・ウシュバテソーロなどなど、横綱大関級が挙って海外遠征を敢行した結果、国内に残ったのは準チャンピオン級ばかりという状況でした。
人気を集めたのは出走すら危うかったオメガギネス、つい数か月前のチャンピオンズCでは12番人気の低評価だったウィルソンテソーロ、あるいは芝路線から転じた初ダートのガイアフォースなどなど…。
どうにも脆弱な上位勢で、形成された人気自体があまりアテにならないと感じました。そこで先入観を排除し導き出した結論が、◎ペプチドナイルでした。
私の予想は基本的にデータなどを用いず、レース映像やそこから判断できる走りを中心に判断する、いわばアナログが中心です。
本命のペプチドナイルに関しても、今回初めて出走する、つまりデータがまったくない東京ダート1600mで、パフォーマンスを大きく上げる可能性が高いと判断したためでした。
というのも、過去のレース映像を振り返ると、とにかく自分のリズムで走れるかどうかがカギという馬。その個性ゆえにパフォーマンスの振り幅が大きいのも特徴でした。
以下の予想文をご参照ください。
「非凡なポテンシャルを持ちながら毎度発揮できるわけではない…というのが本馬。その証拠にこれまでのダート成績は[7-1-1-8]。勝つか、負けるか。その要因のひとつは折り合い面の難しさで、昨夏の函館での連勝や前々走のように、逃げても控えても、とにかく自分のリズムなら能力を発揮する」
まさに、三振かホームランタイプ。だとすれば近走のパフォーマンスはアテにならず、一発の魅力アリと判断できます。
振り返れば昨夏にはオープン特別とはいえ、3馬身以上の差をつけ連勝。その際に下したセキフウは、その後エルムSを制していたことからも、重賞級の能力があることは明らか。今年のメンバーレベルであれば、能力さえ出せれば自ずと通用するのでは、という考えに至ったわけです。
最後のひと押しは、「隊列」です。
隊列というのは展開に近いのですが、各馬がどう動くのか、まさに「アナログ」の考え方です。予想文を参照します。
「枠並びも良く、本馬の外のタガノビューティー、キングズソード、スピーディキック、レッドルゼル、ウィルソンテソーロまでいずれも速い馬ではなく、被せて来る馬がいなければ確実にスムーズなレースができそう」
唯一といえる誤算だったのはウィルソンテソーロ=松山騎手が想定より積極的な競馬をして、外から被せて来たことでした。ただ、そこは藤岡佑騎手の絶妙な判断で、上手く先行争いから一歩引いて気分良く走らせることに成功。この点は、継続騎乗であることも大きかったですし、運もあったように思います。
以上が、ペプチドナイル本命に至った背景です。
もっとも、この予想には反省点もあります。3着セキフウを買っていなかったこと、そもそも対抗以下の予想が微妙で、大きな回収をできなかったことです。
やはり、現代競馬においては、
1、予想
2、買い方(馬券)
という両輪が噛み合ってこそ、大きな回収をできると考えています。その点で、予想に関しては上手く行きましたが、最後の仕上げは物足りなかったという反省もあります。
余談ではありますが、次週の中山記念においては予想に加えて買い方も上手くかみ合った予想ができたと考えておりますので、そちらもご参照いただければ幸いです。昨今はAI予想の影響が大きく、各種データや様々な能力指数等の数値を用いた予想が主流、オッズにも影響を与えるようになっています。
しかし、今回のペプチドナイルはそういったアプローチではなかなか辿り着くことは困難だったと思います。オッズは大衆が形成するからこそ、大衆が目をつけない視点にこそ「ウマ味」があります。
今後も、アナログ視点だからこそ見出せる穴馬をお送りできればと考えています。それこそ、「ウマい馬券」に辿り着くヒントも、アナログな視点の中にあると信じています。
(TARO)