2024年04月01日(月) 18:00
単勝オッズ5.5倍(2番人気)のベラジオオペラが勝利(c)netkeiba
netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)
AIマスターM(以下、M) 先週は大阪杯が行われ、単勝オッズ5.5倍(2番人気)のベラジオオペラが優勝を果たしました。
伊吹 着差以上の完勝と言って良いかもしれませんね。好スタートを決めて積極的に出していき、1〜2コーナーを2番手で通過。マクリを打ったローシャムパーク(2着)が向正面で並びかけてきたものの、2番手のポジションを譲ることなく3〜4コーナーを通過しています。そのまま残り200m地点のあたりで逃げたスタニングローズ(8着)をかわし、単独先頭に。外からしぶとく追いすがったローシャムパーク、決勝線の手前で内から鋭く迫ったルージュエヴァイユ(3着)らの追撃を凌ぎ切り、先頭でゴールしました。決して楽な展開ではなかったと思いますし、さまざまな作戦で臨んだ実績馬たちをまとめて負かしたわけですから、相応に高く評価したいところ。この競馬を選択した横山和生騎手も、鞍上の期待にしっかり応えて見せたベラジオオペラも、本当にお見事です。
M ベラジオオペラはGI初制覇。デビュー3戦目のスプリングSや2走前のチャレンジCを制した実績があったものの、昨年の皐月賞では10着に、日本ダービーでも4着に敗れています。
伊吹 もっとも、その日本ダービーは勝ったタスティエーラとタイム差なしでしたからね。横山和生騎手がレース後に「ダービーでは悔しい思いをした」とコメントしていたように、GI級の能力の持ち主であるという確信はあったはず。昨秋は調整の遅れもあって菊花賞やその前哨戦を回避することになりましたが、短期間のうちにしっかり立て直しビッグタイトルの獲得に至ったわけで、陣営の手腕も大きな勝因のひとつと言えるでしょう。元ジョッキーの上村洋行調教師は、開業6年目でGI制覇を達成。昨年のJRAリーディングトレーナーランキングでは7位に食い込みましたし、今後がとても楽しみです。
M 次走以降のベラジオオペラは、主役クラスの一頭として古馬中長距離路線を戦っていくことになります。
伊吹 今回が通算8戦目で、まだ底を見せていません。ロードカナロア産駒ではあるものの、日本ダービーのレースぶりを見る限り、もう少し長い距離も難なくこなせそう。人気を集めてしまいがちなタイプではないと思いますから、過小評価されているタイミングを見逃さないよう、引き続きしっかりマークしておきましょう。
M 今週の日曜阪神メインレースは、世代最強牝馬の決定戦とも言える3歳クラシック競走の第一弾、桜花賞。昨年は単勝オッズ1.6倍(1番人気)のリバティアイランドが優勝を果たしました。ちなみに、その2023年は2着に単勝オッズ18.4倍(6番人気)のコナコーストが、3着に単勝オッズ17.6倍(5番人気)のペリファーニアが食い込んだものの、3連単の配当は1万3220円どまり。堅く収まりがちなレースと思っておいた方が良いですか?
伊吹 3連単の配当が10万円を超えたのは、現在のところ2015年(23万3390円)が最後。その後の過去8年に限ると、3連単の配当は平均値が3万6861円、中央値が2万6070円となっています。
M 過去10年の3着以内馬30頭中、単勝3番人気以内の支持を集めていた馬は17頭。人気を裏切ってしまった馬もいないわけではありませんが……。
伊吹 より細かく見ていくと、単勝4〜9番人気の馬が2014年以降[3-3-7-47](3着内率21.7%)だった一方で、単勝10番人気以下の馬は2014年以降[0-0-0-88](3着内率0.0%)でした。なお、単勝9番人気で3着以内となったのも、2020年3着のスマイルカナ(単勝オッズ35.5倍)だけ。少なくとも、超人気薄の伏兵が高額配当決着を演出する可能性はかなり低いと見るべきでしょう。
M そんな桜花賞でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、コラソンビートです。
伊吹 話の流れ的にもちょうど良い塩梅の馬を挙げてきましたね。今回のメンバー構成なら実績上位ですが、人気の中心ということはなさそう。
M コラソンビートは3走前に牡馬相手の京王杯2歳Sを勝っている馬。2走前の阪神JFでも勝ったアスコリピチェーノと0.2秒差の3着に健闘しています。前走のフィリーズレビューで2着に敗れてしまったとはいえ、休養明け初戦としては決して悪くない内容。ただ、今回は阪神JFで先着を許した2頭や年明けの重賞を制した新興勢力が注目を集めそうですし、妙味あるオッズがつくかもしれません。
伊吹 「オッズ次第では積極的に狙いたい」と考えている方もたくさんいそうですね。Aiエスケープの見立てを踏まえたうえで、レースの傾向とこの馬の戦績を見比べていきましょう。
M 真っ先に注目しておくべきポイントはどのあたりだと考えていますか?
伊吹 まずはコース適性を素直に評価したいところ。2018年以降の3着以内馬18頭中16頭は“JRAの、右回りの、今回と同じ距離の、重賞のレース”において3着以内となった経験がある馬でした。
M なるほど。左回りの重賞や1600m以外の重賞でしか好走していない馬は強調できませんね。
伊吹 ちなみに“JRAの、右回りの、重賞以外のレース”において2着以下となった経験がある馬も2018年以降[0-1-0-46](3着内率2.1%)と不振。重賞を除く右回りのレースで敗れたことがある馬は、扱いに注意するべきでしょう。
M 先程も触れた通り、コラソンビートは昨年末の阪神JFで3着となった実績がある馬。右回りのレースは2戦0勝ですが、どちらも重賞だったので、評価を下げる必要はなさそうです。
伊吹 あとは臨戦過程もしっかりチェックしておきたいところ。同じく2018年以降の3着以内馬18頭中17頭は、前走との間隔が中4週以上でした。
M はっきりと明暗が分かれていますね。
伊吹 近年は休養を挟んで臨む馬やチューリップ賞組が優勢。チューリップ賞より後のレースを使った馬は、基本的に疑ってかかるべきかもしれません。
M コラソンビートは前走のフィリーズレビューから中3週での参戦。残念ながら、この条件に引っ掛かっている馬のうちの一頭です。
伊吹 さらに、同じく2018年以降の3着以内馬18頭中16頭は、前走の馬体重が450kg以上でした。
M 小柄な馬もあまり上位に食い込めていませんね。
伊吹 前走の馬体重が450kg未満、かつ馬番が5〜18番の馬は2018年以降[0-0-0-33](3着内率0.0%)と3着以内なし。枠順にもよるとはいえ、馬格のない馬は過信禁物と見るべきでしょう。
M コラソンビートは前走の馬体重が442kg。こちらの条件にも引っ掛かってしまっています。
伊吹 正直なところ、私は重いシルシを打たないつもりでした。コース替わり自体はまったく問題ないと思うのですが、やはりフィリーズレビュー組である点や比較的小柄な馬である点は気掛かりです。もっとも、当初抱いていたイメージよりは人気にならなさそうな雰囲気で、買い目から外すメリットは薄め。他ならぬAiエスケープが有力と見ているわけですし、あえてこの馬から買ってみるのもひとつの手でしょう。
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伊吹雅也
競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。
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