2024年04月15日(月) 18:00
単勝オッズ4.8倍(2番人気)のジャスティンミラノが優勝(撮影:下野雄規)
netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)
AIマスターM(以下、M) 先週は皐月賞が行われ、単勝オッズ4.8倍(2番人気)のジャスティンミラノが優勝を果たしました。
伊吹 ハナを切ったメイショウタバル(17着)が1000m通過57秒5のペースで引っ張ったこともあり、勝ち時計は1分57秒1のコースレコード。総合力の高さをシビアに問われる、ハイレベルな一戦だったと言えるでしょう。ジャスティンミラノはまずまずのスタートから好位を取りに行き、道中は先団の外めを追走。3〜4コーナーでも積極的にポジションを押し上げ、先行する各馬を射程圏内に捉えたままゴール前の直線に入っています。
ジャスティンミラノより前のポジションでレースを進めたジャンタルマンタル(3着)が一旦は完全に抜け出したものの、決勝線の手前で並ぶ間もなくかわし切り、中団から迫ったコスモキュランダ(2着)に対してもクビ差のリードを保ったまま入線。コスモキュランダに騎乗したJ.モレイラ騎手、ジャンタルマンタルに騎乗した川田将雅騎手がいずれも素晴らしい手綱捌きを見せた分、ジャスティンミラノの強さや戸崎圭太騎手の巧みなレース運びがより際立った――という印象です。
M ジャスティンミラノはデビュー戦から3連勝でGI初制覇。レース中の落馬事故により急逝した藤岡康太騎手が調教パートナーを務めていた馬であり、皐月賞へ向けた追い切りにも騎乗していました。
伊吹 もちろん、レース前やレース中は各馬の関係者や我々競馬ファンがそれぞれに異なる思いを抱いていたわけですが、ジャスティンミラノが先頭でゴールした瞬間に抱いた思いは、概ねみんな一緒だったのではないでしょうか。
兄の藤岡佑介騎手がご自身のコラムで「競馬を応援してくださるファンの方々の記憶のなかに、悲しい出来事として残ってしまうことを康太は望んでいない」、「騎手として輝いていた康太を忘れないでやってください」と綴っていましたけど、ただでさえ2009年のNHKマイルCと2023年のマイルCSを制した実績があるうえ、亡くなる直前まで調教をつけていたジャスティンミラノがすぐにこれだけのビッグタイトルを獲得したわけですから、もう忘れようがありませんよね。
残念ながらこういう形での引退となってしまったものの、競馬ファンがふとした瞬間に藤岡康太騎手のことを思い出すようなフックをこれだけ多く作ったのは、ご本人にそれだけの実力や魅力があったからこそ。偉大な元ジョッキーのひとりとして、その功績をできる限り長く語り継いでいきたいと思っています。
M ジャスティンミラノ自身も、今後が楽しみな存在ですね。
伊吹 前走の共同通信杯は東京芝1800mが舞台だったうえ、1000m通過が62秒7というペース。今回は舞台が中山芝2000m内で、先程も触れた通り1000m通過タイムが57秒5でした。これだけ状況の異なる2戦でいずれも実績上位のジャンタルマンタルに先着した点は、高く評価するべきでしょう。日本ダービーや菊花賞はもちろん、その後の大舞台でも目が離せません。
M 今週の日曜東京メインレースは、1〜2着馬にオークスへの優先出走権が与えられるトライアル競走、フローラS。昨年は単勝オッズ16.6倍(7番人気)のゴールデンハインドが優勝を果たしました。波乱含みの一戦というイメージもありますが、単勝人気順別成績はどうなっていますか?
伊吹 過去10年のフローラSにおいて単勝1番人気の支持を集めた馬のうち、3着以内に好走を果たした馬はわずか3頭。人気の中心となっている馬が期待を裏切りがちなレースと言えそうです。
M ただ、単勝2〜3番人気馬や単勝4〜6番人気馬の好走率はそれほど悪くありませんね。
伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝2〜5番人気の馬は2014年以降[7-4-6-23](3着内率42.5%)、単勝6〜14番人気の馬は2014年以降[2-4-4-80](3着内率11.1%)、単勝15番人気以下の馬は2014年以降[0-0-0-29](3着内率0.0%)となっていました。妙味ある伏兵を積極的に狙っていきたいところですが、押さえるべき人気馬はしっかり押さえましょう。
M そんなフローラSでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、アドマイヤベルです。
伊吹 ちょっと意外なところを挙げてきましたね。格上挑戦の身ですが、今回はそれなりに支持が集まりそう。
M アドマイヤベルは半姉に2017年のヴィクトリアマイルを勝ったアドマイヤリードがいる良血馬。前走のフリージア賞は2着どまりだったものの、展開やメンバー構成を考えれば悪くない内容で、コース適性の高さは証明済みと言えます。重賞初挑戦とはいえ、オープンクラスのレースで上位に食い込んだことのあるライバルはごくわずか。おそらく上位人気グループの一角を占めることになると思いますし、場合によっては単勝1番人気の立場でレースを迎えることになるかもしれません。
伊吹 この馬に白羽の矢が立つくらいですから、Aiエスケープは妙味ある伏兵が見当たらない一戦と見ているようですね。この見立てを踏まえたうえで、好走馬の傾向とアドマイヤベルのプロフィールを見比べていきましょう。
M 真っ先に注目しておくべきポイントをひとつ挙げるならば、何を選びますか?
伊吹 重視してみたいのは枠順。枠番が1〜2枠の馬は2019年以降[3-3-2-10](3着内率44.4%)と非常に堅実です。なお、枠番が3〜8枠だったにもかかわらず3着以内となった7頭のうち5頭は“同年の、JRAの、オープンクラスのレース”において6着以内となった経験がある馬でした。
M 年明け以降の重賞やオープン特別で善戦した実績がなく、なおかつ好枠を引くことができなかった馬は、あまり強調できませんね。
伊吹 おっしゃる通り。チェックしておくべきポイントは他にもいろいろありますが、枠順次第で柔軟に構えましょう。
M アドマイヤベルは重賞だけでなくオープン特別に出走した経験もない馬。まずは好枠を引き当てたいところです。
伊吹 あとは臨戦過程にも注目しておきたいところ。前走の条件が重賞だった馬は2019年以降[3-4-2-16](3着内率36.0%)とまずまず安定しています。一方、前走の条件が重賞以外だったにもかかわらず3着以内となった6頭のうち5頭は、前走の着順が1着、かつ前走の2位入線馬とのタイム差が0.2秒以上でした。
M 前走が重賞だった馬と、前走を完勝した馬が中心――といったところでしょうか。
伊吹 そういうことですね。今年もこの条件に引っ掛かっている馬は思い切って評価を下げるべきだと思います。
M 先程も触れた通り、アドマイヤベルは前走のフリージア賞で2着に敗れている馬。残念ながらこの条件はクリアできていません。
伊吹 さらに、同じく2019年以降の3着以内馬15頭中13頭は、今回より短い距離のレースを経由してきた馬でした。
M 前走が2000m以上のレースだった馬は過信禁物と。
伊吹 早い時期からこのくらいの距離を中心に使ってきた馬よりも、桜花賞を目指し1マイル前後のレースを主戦場としてきた馬の方が信頼できるようです。
M アドマイヤベルの前走、フリージア賞は東京芝2000mで施行されたレース。好走馬の傾向を見る限りだと、積極的には狙いづらい一頭ということになりますね。
伊吹 正直なところ、私は無印にするのもひとつの手だろうと考えていました。もちろん、好枠に入るようであれば無視はできませんし、潜在能力は高いはず。Aiエスケープは魅力十分と見ているわけですから、実際のオッズも踏まえたうえで最終的な評価を下しましょう。
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伊吹雅也
競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。
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