ナミュールは武豊騎手を背にどう戦うか

　この4年のヴィクトリアマイルは、アーモンドアイ、グランアレグリア、ソダシ、ソングラインと、芝1600米のGIウィナーが勝っている。前の2頭は1番人気、後の2頭は4番人気で評価はやや違っていたが、終わってみれば納得のいくものだった。特に昨年の勝ち馬ソングラインの蹄跡をたどると、ここで勝つための条件らしきものが見えてくる。

　ソングラインは、3歳春はNHKマイルC2着、秋は富士S1着、4歳春のヴィクトリアマイルはつまづいて5着に終わったが、6月の安田記念で1着、そして5歳の昨年ヴィクトリアマイルを勝っていた。東京のマイルの申し子と呼ばれたが、この距離ならきっちり差して来られたし、なによりも東京の長い直線が味方になっていた。

　昨年のこのレースは馬群が密集してインで動けなかったが、前方にいた1番人気の二冠馬スターズオンアースが外に進路を切り替えると、そのまま真っすぐに坂を駆け上がり、連覇を狙ったソダシをアタマだけ差し切っていた。そしてこの後、安田記念を連覇したのだから、マイルで直線の長い東京なら牡馬を相手でもやれることを見せてくれた牝馬だった。ここで、改めて、ヴィクトリアマイルはリピーターが活躍する一戦という格言を思い起こさせてくれた。

　芝1600米のGIウィナーは、今年はナミュールがいる。全15戦のうち10戦がGIという強者だが、オークス3着、秋華賞2着で昨年のこのレースではスタート直後に不利を受けて7着に終わったが、秋に入って富士S、そして昨年GIマイルCSと連勝、香港、ドバイの国際舞台でも3着、2着と好走し、成績が安定している。体つきがしっかりし、どこに行ってもドッシリしているとのこと。現役最強のマイラーと言ってよく、東京のマイルはこれまで2勝しているのも強味だ。武豊騎手の手綱でどう戦うか、楽しみだ。

　このナミュールを秋華賞で下したのがスタニングローズだ。GIホースになってから調子が上がらず、昨年のヴィクトリアマイルでは出遅れて後方の内を追走して脚をためていたが上がりが速くなり過ぎて、12着に終わっていた。この後、左前脚を痛めて10ヶ月以上休み、前走の大阪杯から戻ってきた。逃げて見せ場をつくり勝ち馬から0秒5差なら8着でも次の可能性があると思うので、この馬の復活に期待をかけてもいいだろう。

　この2頭のGIホースに対して、距離適性に自信をもって出走してくる面々は、いずれも前哨戦を戦ってきた組になる。つまり、4月の阪神牝馬S1600米で上位に来た3頭、マスクトディーヴァ、ウンブライル、モリアーナということになる。特に秋華賞で三冠牝馬リバティアイランドに1馬身差の2着だったマスクトディーヴァ、これに続いたウンブライルにはNHKマイルC2着の実績があり、久々のマイルで3着だったモリアーナとこの3頭には確実に伸びてくる脚がある。

「この好機　つかんだ先に　女王の座」