BCクラシック前哨戦が続々開催 アメリカ3歳世代の最強候補が復帰戦勝利

2024年09月04日(水) 12:00

パシフィッククラシックSは波乱の結果に

 先週末は、11月2日にデルマー競馬場で行われるG1BCクラシック(d10F)を頂点とする路線に連なる戦いが、米国の東海岸と西海岸で3つ行われた。

 まず、8月31日にカリフォルニア州のデルマー競馬場で行われたのが、G1パシフィッククラシックS(d10F)だ。近年では、22年にここをぶっちぎったフライトラインが、次走G1BCクラシックも楽勝している。

 今年は8頭立てとなった中、前哨戦のG2サンディエゴH(d8.5F)を勝っての参戦だったドクターヴェンクマン(セン4、父ゴーストザッパー)が、オッズ2.1倍の1番人気に。重賞2勝馬で、前走G3フィリップイズリンS(d8.5F)は2着だったイルミラコロ(牡4、父ガンランナー)が、オッズ5.1倍の2番人気に推された。

 だが、道中3番手を追走した1番人気のドクターヴェンクマンは、追われて伸びず4着に敗退。2番人気のイルミラコロは前半5〜6番手追走後、3コーナー過ぎに後退して最下位と、人気馬はよいところなく敗れた。

 レースは、アルゼンチンの重賞入着馬で、北米初戦だった前走デルマー競馬場の条件戦(d8F)を勝っての参戦だったフルセラーノ(牡5、父フルマスト、8.9倍の5番人気)が逃走。1F標識の地点で後続を2馬身リードしていた同馬を、残り25mで交わしたのが、道中2番手にいたミクスト(牡4、父グッドマジック、23.2倍の7番人気)で、同馬が1/2馬身抜けて優勝を飾った。

 初勝利をあげるのに6戦を要し、3歳11月にようやく未勝利を脱したのがミクストだ。初勝利後は重賞を5戦し、G2サンアントニオS(d8.5F)2着など3戦において入着するも重賞制覇には至らず。前走はプレザントン競馬場の特別プレザントンマイルS(d8F)に出走して2着だった。すなわち、パシフィッククラシックSが重賞初制覇だったのだ。

 残念ながら水準が高かったとは言えない一戦で、ここからBCクラシックで争覇圏内に食い込む馬が出る可能性は低そうだ。

 続いて、翌9月1日にニューヨーク州のサラトガで行われたのが、G1ジョッキークラブGC(d10F)だ。近年では、95年にシガー、97年にスキップアウェイ、07年にカーリンが、こことBCクラシックを連覇している。

 今年は7頭立てとなった中、前走G1ホイットニーS(d9F)を制しG1で重賞初制覇を果たしたアーサーズライド(牡4、父タピット)が、オッズ1.85倍の1番人気に。前走G3モンマスC(d9F)を5.1/4馬身差で制して3度目の重賞制覇を果たしての参戦だったタピットトライス(牡4、父タピット)が、オッズ3.35倍の2番人気に推された。

 だが、パシフィッククラシックS同様、ここも1・2番人気は馬群に沈むことになった。いつものようにハナに立ったアーサーズライドだったが、前走のように楽には逃がしてもらえず、直線で失速して5着。タピットトライスも4番手追走から伸びず4着に終わった。

 勝ったのは、前半2番手追走から、3〜4コーナー中間で先頭に立って粘り込んだハイランドフォールズ(牡4、父カーリン、8倍の3番人気)。G3ピムリコスペシャル(d9.5F)勝ち馬で、前走G1スティーヴンフォスターS(d9F)が2着だったピレネーズ(牡4、父イントゥミスチフ、11.6倍の4番人気)が、前半5番手から追い込み4馬身差の2着に入っている。

 今年6月、3度目の重賞挑戦となったG3ブレイムS(d9F)を制し重賞初制覇を果たしたのがハイランドフォールズだ。前走G3モンマスC(d9F)で2着となっての参戦だった。ここでG1初制覇を果たした同馬の、秋の目標はG1BCクラシック(d10F)になるが、陣営によると、その前にもう1戦挟む可能性もあるようだ。

 同じく9月1日にカリフォルニア州のデルマー競馬場で行われたのが、3歳限定のLRシェアドビリーフS(d8F)だ。

 この一戦が今年大きな注目を集めたのは、3月末以来戦列を離れていたボブ・バファート厩舎のムース(牡3、父グッドマジック)が、ここを復帰戦に選択したからだ。

 OBS4月2歳市場にて200万ドルで購買された同馬は、2歳6月にデビュー。2歳時は4戦し、G1アメリカンファラオS(d8.5F)を含む2勝を挙げて、2歳シーズンを終えた。3歳初戦のG2サンヴィセンテS(d7F)、続くG1アーカンソーダービー(d9F)を連勝した後、バファート師が出走停止処分を受けていたG1ケンタッキーダービー(d10F)をスキップし、G1プリークネスS(d9.5F)にエントリーしたところ、熱発でレース2日前に出走を取り消し。その後、じっくりと立て直しを図り、5か月ぶりの復帰戦となったのがLRシェアドビリーフSだった。

 結果は、前半2番手で競馬をしたムース(1.2倍の1番人気)が、3〜4コーナー中間で先頭に立つと、そのまま押し切って優勝。3歳になってからの成績を3戦3勝とした。

 2着は、前走デビュー9戦目にして初勝利をあげたばかりだったインディスペンサブル(牡3、父コンスティテューション、17.6倍の5番人気)で、これに2馬身差というのは、正直物足りない印象もあったが、5か月振りの実戦で、目標はまだ先にあることを考えれば、致し方のないことか。

 3月のG1アーカンソーダービーで、6.1/4馬身差の3着に敗れたミスティックダン(牡3、父Goldencents)が、その後G1ケンタッキーダービーを制覇。今年の3歳世代における「実質的最強馬」とも言われたムースの真価が問われるのは、次走になりそうだ。

 その次走についてバファート師は、9月28日にサンタアニタ競馬場で行われるG1カリフォルニアクラウン(d9F)が最有力としている。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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