秋のスプリント王者ルガル 同じ父ながら対照的な特徴を持つタイトルホルダーとの“共通点”とは?

2024年09月30日(月) 18:00

血統で振り返るスプリンターズS

【Pick Up】ルガル:1着

 父ドゥラメンテはわずか5年間の供用で早世したため、馬産地では後継種牡馬が求められています。牡馬の代表産駒タイトルホルダー(菊花賞、天皇賞(春)、宝塚記念)は、今年の春からレックススタッドで供用され、159頭に交配する人気種牡馬となっています。ルガルも、今回の勝利によりいずれは種牡馬となるでしょう。

 タイトルホルダーとルガルは、スタミナ型とスピード型という対照的な競走馬ですが、血統的にはサドラーズウェルズとロレンザッチオを併せ持つ、という共通点があります。とくに前者が入るパターンは、勝馬率、2勝以上馬率、連対率、1走あたりの賞金額、という4つのファクターともドゥラメンテ産駒全体の平均を上回っており、ニックスといえるでしょう。

 ルガルはミエスク4×4という牝馬クロスを持ちます。ミエスクは現役時代、英・仏1000ギニーやBCマイルを連覇するなどG1を10勝。1980年代の世界最強マイラーです。繁殖牝馬として名種牡馬キングマンボ(キングカメハメハなどの父)と、名牝イーストオブザムーン(仏牝馬二冠とジャックルマロワ賞を制覇)を産んでいます。前者がルガルの3代父、後者が3代母。魅力的な血統構成です。

 骨折明けでこのパフォーマンスですから次走以降が楽しみです。

血統で振り返るシリウスS

【Pick Up】ハギノアレグリアス:1着

 タニノエポレット(ダイヤモンドS3着、天皇賞(春)5着)の半弟で、母タニノカリスはダービー馬タニノギムレットの半姉にあたる良血。キズナの重賞勝ち馬はスピード型の母を持つパターンが多いのですが、母は現役時代に1700〜1800mで3勝(ダート2勝、芝1勝)を挙げたスタミナ型だったので、ハギノアレグリアスはスタミナ型に出ました。今回を含めて重賞を3勝していますが、距離は1900m、2000m、2000mです。

 母父ジェネラス(英・愛ダービー、キングジョージVI世&クイーンエリザベスS)は90年代のイギリスを代表する名馬。晩成傾向を伝えるので7歳秋を迎えても能力に衰えが見えません。

 キズナは今年、JRAの平地重賞11勝目。エピファネイアに2勝差をつけてトップに立ち、総合種牡馬ランキングでもロードカナロアを引き離して首位の座にあります。手駒が豊富なので秋の重賞戦線で差を広げていく可能性が高いと思われます。

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【タピット】

 芦毛の馬体がトレードマークで、現役時代は肺の感染症、脚の腫瘍、喉の疾患に悩まされてベストコンディションで走るチャンスに恵まれませんでした。しかし、それでも米G1ウッドメモリアルSを勝ったように、潜在能力の高さを感じさせる馬でした。種牡馬となってから大成功を収め、2014年から3年連続で北米チャンピオンサイアーに輝きました。その座から陥落したあとも、近年のアメリカ最強馬フライトライン(6戦全勝で米年度代表馬)を出しています。

 日本ではテスタマッタがフェブラリーSを勝ったほか、ラニ(UAEダービー)、ラビットラン(ローズS、ブリーダーズゴールドC)などコンスタントに活躍馬が出ており、ラニはリメイク(コリアスプリント2回、リヤドダートスプリント、カペラS、クラスターC)の父となっています。海外ではコンスティトゥーションが後継種牡馬として成功しています。

 基本的にはダート向きで、距離は万能。配合次第で芝寄りの仔も出し、GIを6勝したグランアレグリアの母の父となっています。同馬以外にも、ララアの仔でサラスとシャムロックヒルの姉妹がマーメイドSを勝つなど、ブルードメアサイアーとして優秀な成績を収めています。母の父としての成績は、芝58勝、ダート50勝。連対率は芝23.3%、ダート18.4%。わが国に繋養される芝向きの種牡馬と交配されると芝寄りに出る傾向が見て取れます。

血統に関する疑問にズバリ回答!

「すっかり見なくなったニジンスキー系ですが、存続していますか?」

 JRAにおける最後の重賞制覇は2007年10月20日。マイネルシーガルの富士Sです。この年はサンツェッペリンが京成杯を、エリモハリアーが函館記念を勝つなどニジンスキー系が気を吐きましたが、翌年以降は絶えています。

 ダートグレード競走は2010年11月4日に北海道2歳優駿を勝ったカネマサコンコルドが最後。地方競馬の重賞では、2021年5月13日に園田競馬場で行われたのじぎく賞をクレモナが勝っています。その父系はクラグオー→クラキングオー→スズカコバン→マルゼンスキー→ニジンスキーとさかのぼります。父クラグオー(2010年生)は2024年も種牡馬登録されており、北海道日高町のT・H・Tステーブルにてプライベートで供用されています。まだ強豪を出す可能性はあるでしょう。

 世界的に見ると南アフリカのウェルシンゲトリクス(Vercingetorix)のラインが最後の砦です。父シルヴァノは同国で5回チャンピオンサイアーとなった名種牡馬で、父系はシルヴァノ→ロミタス→ニニスキ→ニジンスキーとさかのぼります。ウェルキンゲトリクスはジェベルハッタ(首G1・芝1800m)、デイリーニューズ2000(南アG1・芝2000m)などを制した国際的な強豪で、ジャスタウェイがドバイデューティーフリー(首G1・芝1800m)をレコード勝ちしたときに2着となった馬でもあります。種牡馬としては2020-21年シーズン以降、2→2→3→2位と上位をキープしており、首位に立つ日も近そうです。

 グリーンダンサーを経由したサンデサン(Saint des Saints)のラインが欧州障害界で勢力を保っていますが、平地競馬に還流することはないと思われます。

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栗山求

netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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