凱旋門賞デーに開催! ロンシャン競馬場で行われた2つの2歳戦をご紹介

2024年10月09日(水) 12:00

出世レースは波乱の結果に

 6日にフランスのパリロンシャン競馬場で行われたアーク・ウィークエンド(凱旋門ウィーク)から、2つの2歳戦を回顧したい。

 まずは、当日のオープニングカードとして行われた牝馬によるG1マルセルブーサック賞(芝1600m)。過去10年の勝ち馬のうち、14年のファウンド、16年のウハイダ、17年のワイルドイリュージョン、22年のブルーローズセン、23年のオペラシンガー5頭は、3歳となった翌年もG1制覇を果たしている出世レースである。

 1頭が取り消して今年は9頭立てとなった中、オッズ1.5倍という抜けた1番人気に推されたのが、F.グラファール厩舎のザリガナ(牝2、父シユーニ)だった。アガ・カーン殿下による自家生産馬である同馬は、祖母が07年のこのレースの勝ち馬で、3歳となった08年には欧州年度代表馬になったザルカヴァだ。

 さらに、母の半兄にG1サンクルー大賞(芝2400m)勝ち馬で、現在は種牡馬として成功しているザラックがいるという血統背景を持つ。

 その超良血馬が、7月14日にシャンティイ競馬場で行われたメイドン(芝1400m)を4馬身差で快勝してデビュー勝ちを果たすと、9月12にロンシャンで行われたG3オマール賞(芝1600m)も3馬身差で快勝していたのだ。圧倒的1番人気に推されたのも道理だった。

 道中6番手外目を追走したザリガナは、抜群の手応えのまま直線に向くと、鞍上M.バルザローナ騎手のゴーサインに応えて脚を伸ばし、残り50mで先頭へ。

 ところが、その直後に同馬の内を伸びたのが、道中は5番手内ラチ沿いを追走していたバーティカルブルー(牝2、父メーマス、41倍の6番人気)で、両馬が馬体を併せてゴール。体勢はザリガナ優勢かに見えたが、写真判定の結果、バーティカルブルーのハナ差勝ちと決した。

 バーティカルブルーもまた、管理するのはF.グラファール師だ。祖母がG3アンプリュダンス賞(芝1400m)3着馬という血統背景を持つ同馬は、アルカナ8月1歳市場にて5万ユーロ(当時のレートで約798万円)で購買されている。

 デビューしたのは今年の6月4日で、7月27日クレールフォンテーヌ競馬場の条件戦(芝1600m)を制しデビュー3戦目で初勝利。続いて出走した、9月11日にリヨンパリリー競馬場で行われた条件戦(芝1600m)が2着だった。

 すなわち、一線級と対戦するのはこの日が初めてだったわけで、単勝オッズ41倍という低評価も無理はなかった。

 同馬は、この1戦を最後に来季に備える公算大だが、場合によってはBCジュベナイルフィリーズターフ(芝8F)参戦の可能性も残されている。

 続いて行われたのが、2歳の牡馬と牝馬によるG1ジャンリュックラガルデール賞(芝1400m)だ。他の欧州各国に比べて、非基幹距離のレースが多いフランスだが、このレースも、1500mの時代があったり、1600mの時代があったりしながら、2020年からは1400mに固定されている。

 もっとも、英国における2歳牡馬チャンピオン決定戦的位置付けにあるG1デューハーストSも、愛国における2歳チャンピオン決定戦的位置付けにあるG1ナショナルSも、距離はいずれも7Fだから、そういう意味では理にかなった距離設定と言えそうだ。

 1頭取り消して9頭立てとなった中、オッズ2.6倍の1番人気に推されたのが、A.オブライエン厩舎のアンリマティス(牡2、父ウートンバセット)だった。

 母がG1ジャックルマロワ賞(芝1600m)など2つのG1を制したイモータルヴァースで、半姉にG1チェヴァリーパークS(芝6F)などこちらも2つのG1を制したテネブリズムがいるという、超良血馬である。

 5月25日にカラ競馬場のメイドン(芝6F)を制しデビュー勝ちを飾ると、6月30日にカラ競馬場で行われたG3レイルウェイS(芝6F)、8月24日にカラ競馬場で行われたG2フューチュリティS(芝7F)をいずれも白星で通過。

 しかし、9月15日にカラ競馬場で行われたG1ナショナルSでは、伏兵のスコーシーチャンプ(牡2、父メーマス)に足元をすくわれ2着に敗れ、初の敗戦を喫していた。

 道中馬群内側8番手を追走したアンリマティスは、直線でも馬群内側をついて伸びかかったが、残り1Fで勢いがなくなり5着に敗退。かわってゴール前でパワフルな末脚を繰り出したのは、道中最後方待機の後、直線で馬群外に進路をとって追い込んだカミーユピサロ(牡2、父ウートンバセット、12倍の6番人気)で、同馬が抜け出して優勝を飾った。

 アンリマティスと同じA.オブライエン厩舎で、C.スミヨンが手綱をとったのがカミーユピサロだ。G1コモンウェルスC(芝6F)勝ち馬ゴールデンホルデの半弟にあたり、タタソールズ10月1歳市場にて125万ギニー(当時のレートで約2億4196万円)で購買されている。

 4月27日にナーヴァン競馬場のメイドン(芝6F)を制しデビュー勝ちを果たしたが、その後は重賞を4戦し、11着に敗れたロイヤルアスコットのコヴェントリーS(芝6F)を含めて4連敗。相手関係が楽になったはずだった、前走ドンカスターの条件戦(芝6F11y)も2着に敗れていたため、ここは人気を落としていた。

 G1で重賞初制覇を果たした同馬は、このレースをもって今季を終了。来春はG1英二千ギニー(芝8F)を目標とする。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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