モーリス産駒が2歳GI初制覇 朝日杯FS制したアドマイヤズームの血統背景を深掘り

2024年12月16日(月) 18:00 32

血統で振り返る朝日杯FS

【Pick Up】アドマイヤズーム:1着

 母ダイワズームはスイートピーSを勝ってオークスに臨み、ジェンティルドンナの6着と健闘しました。他に中山牝馬Sで5着と健闘しています。繁殖牝馬としても優秀で、これまでに競走年齢に達した4頭中3頭が勝ち上がり、アドマイヤズームの他にヴィアメント、ダノンブレット(いずれも父キングカメハメハ)を出しています。この2頭はオープンクラスまで出世しました。

 母ダイワズームは、母方にシアトルスルーを抱えたハーツクライ産駒。これはスワーヴリチャード、ドウデュース、アドマイヤラクティ、カレンミロティック、ダノンベルーガといった大物を出している有名なニックス。優れた繁殖牝馬となった理由のひとつはこの配合にあるのではないかと思います。

「モーリス×ハーツクライ」の組み合わせは、JRAで出走した15頭中9頭が勝ち上がり、連対率21.8%、1走あたりの賞金269万円と優秀。他に桜花賞3着馬ペリファーニア、橘Sを勝ったガロンヌ、3勝クラスのマジカルステージなどが出ています。注目すべき配合パターンでしょう。

 モーリス産駒は2歳GI初制覇。今年の2歳総合ランキングではエピファネイアを抜いて第2位に上昇しました(1位はキズナ)。この世代はサウジアラビアRCを勝ったアルテヴェローチェ、同2着タイセイカレント、ひいらぎ賞をレコード勝ちしたデンクマールなど素質を感じさせる馬がひしめいています。もしこのまま2位でシーズンを終えればパーソナルベストとなります。

血統で振り返るターコイズS

【Pick Up】アルジーヌ:1着

 母キャトルフィーユはクイーンSの勝ち馬。その姉妹にレディアルバローザ(中山牝馬S2回)、エンジェルフェイス(フラワーC)がおり、2代母ワンフォーオールはカナダ最優秀古馬牝馬のタイトルを3回受賞した名牝。ケイアイファームが誇る名牝系です。

 母は繁殖牝馬として優秀で、本馬の他にロードプレジール、メルトユアハート、サンクフィーユ(いずれも3勝クラス)を産んでいます。これらのうち、本馬、サンクフィーユ、メルトユアハートの3頭はロードカナロアを父に持ちます。ロードカナロアはケイアイファームの生産馬なので、この組み合わせが多くなるのは必然です。そして、しっかり成功しています。

「ロードカナロア×ディープインパクト」の組み合わせは、エリザベス女王杯を勝ったブレイディヴェーグや、レッドモンレーヴ、ファンタジストといった重賞勝ち馬を出しており、東京芝を最も得意としています。ただ、ワンフォーオールの一族は小回りコース、内回りコースに適性があり、本馬はそちらの傾向がより強く表れているように感じます。

知っておきたい!血統表でよく見る名馬

【ストリートクライ】

 ゴドルフィンの持ち馬としてドバイワールドCを勝ちました。種牡馬としてはゼニヤッタ(米年度代表馬、北米で20戦19勝)、ウィンクス(豪43戦37勝、G1勝利数25勝は世界記録)という2頭の歴史的女傑をはじめ、ストリートセンス(ケンタッキーダービー)、ストリートボス、ニューイヤーズデイ、プライドオブドバイなど、芝、ダート、オールウェザーを問わず多くの名馬を出しました。

 母の父としても素晴らしく、香港の歴史的名馬ロマンチックウォリアー、G1を7勝したレベルスロマンスなどを出しています。

 父は名血マキャヴェリアン、母ヘレンストリートは愛オークス馬、という良血で、ストリートクライの全姉の仔に名種牡馬シャマーダル(ロペデヴェガ、ブルーポイント、タルナワなどの父)がいます。

 ストリートクライと、全姉の仔シャマーダルを通じ、この血脈は現代血統に大きな影響を及ぼしており、その重要性は時間が経つにつれてますます大きくなるでしょう。香港競馬の新たなスプリント王カーインライジングの母方にもストリートクライの血が含まれています。

血統に関する疑問にズバリ回答!

「来年から新たに供用されるパールシークレットについて教えてください」

 イギリスからの輸入種牡馬で、来年から新ひだか町のアロースタッドで供用されます。輸入種牡馬としては異例の15歳(種付け時は16歳)という年齢もさることながら、父系をさかのぼるとサラブレッド父系の三大始祖のひとつバイアリーターク系に到達することも話題となっています。

 バイアリーターク系はヘロド系(4代後に現れた直系子孫の大種牡馬)とも称され、19世紀前半までは三代始祖のなかで最も勢いがありました。1721年から1820年までの100年間で、バイアリーターク系種牡馬は英チャンピオンサイアーの座に40回就き、ゴドルフィンアラビアン系の24回、ダーレーアラビアン系の14回を上回っていました(その他の22回は三代始祖以外の系統)。

 しかし、時代が下るにつれて勢力が弱まり、現在では世界的に見てもほとんど核となるような種牡馬が見当たらず、絶滅の危機に瀕しています。

 日本ではセフト、パーソロン、ダンディルート、ブランブルーなどが好成績を挙げ、とくにパーソロンはシンボリルドルフとトウカイテイオーの親仔、メジロアサマ、メジロティターン、メジロマックイーンの親仔孫などを出しました。トウカイテイオーの仔クワイトファインが日本に現存する最後のバイアリーターク系種牡馬(メジロマックイーンの仔ギンザグリングラスは昨年12月に死亡)だったのですが、そこに現れたのがイギリス産のパールシークレットです。

 現役時代にテンプルS(英G2・芝5ハロン)を制覇。父系はコンプトンプレイス→インディアンリッジ→アホヌーラ→ロレンザッチオ→クレイロン→クラリオン→ジェベル→トゥールビヨンとさかのぼります。日本だけでなく世界的にもきわめて貴重な系統。ぜひ注目です。

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栗山求

netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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