ドレフォン産駒の好パターンに該当 東京新聞杯を勝ったウォーターリヒト

2025年02月10日(月) 18:00 24

血統で振り返る東京新聞杯

【Pick Up】ウォーターリヒト:1着

 父ドレフォンは現役時代、アメリカでBCスプリント(G1・ダ1200m)など3つのG1を制覇しました。種牡馬としては幅広い距離で活躍馬を出しており、スプリント専用種牡馬ではありません。ワープスピードのようなステイヤーも出しています。

 芝とダートの勝利数の割合は約1対4で、圧倒的にダートが優勢です。ただ、JRAの重賞勝ち馬4頭のうち、ジオグリフ(皐月賞、札幌2歳S)、デシエルト(中日新聞杯)、そして今回勝ったウォーターリヒトと、3頭が芝重賞の勝ち馬です。

 ウォーターリヒトはウォーターナビレラ(ファンタジーS、桜花賞2着)を生産した浦河町の伏木田牧場で誕生しました。母ウォーターピオニーは現役時代に3勝(芝1勝、ダート2勝)を挙げた馬で、クイーンSを勝ったレッドアネモスの全姉にあたる良血。「ドレフォン×ヴィクトワールピサ」の組み合わせは4頭中3頭が勝ち上がる好パターンです。

 芝向きのドレフォン産駒は、割合として決して多くはないのですが、イクイノックスを皐月賞で破ったジオグリフ、2025年の芝中距離路線で大きな飛躍が期待されるデシエルト、オーストラリアのメルボルンCで2着と健闘したワープスピードなど、能力の上限の高さを感じさせる馬が目立ちます。ウォーターリヒトも芝マイル戦線で大暴れすることでしょう。

血統で振り返るきさらぎ賞

【Pick Up】サトノシャイニング:1着

 2024年に初のチャンピオンサイアーとなったキズナは、2025年も引き続き首位を走っています。現3歳の重賞勝ち馬は、マジックサンズ(札幌2歳S)、ブラウンラチェット(アルテミスS)、エリキング(京都2歳S)、リラエンブレム(シンザン記念)、そしてサトノシャイニングと5頭目。

 母スウィーティーガールは南米アルゼンチンでサンイシドロポトランカス賞(G1・芝1600m)を制覇しました。前走の東京スポーツ杯2歳Sは、勝ったクロワデュノールから3/4馬身差の2着。スローのマイペースで逃げられた利はあったものの、スタート直後に落鉄した不利を考えれば能力の高さは疑いようがなく、後続に3馬身差をつけた今回のレース内容は、春のクラシックレースでも十分通用すると思わせるものでした。

 母が異質なアルゼンチン血統だけに、過去のキズナ産駒と比較できる部分が少ないのですが、2代母サンティアガは、近い世代にデピュティミニスター、リローンチ、ミスタープロスペクターを抱えているので、ゴーストザッパーと配合構成がよく似ています。「キズナ×ゴーストザッパー」といえば、3歳牝馬で現3戦2勝のゴーソーファーがいます。母スウィーティーガールの血はパワー寄りですが、自身が芝1600mのG1を勝っているので問題ないのでしょう。ラストに繰り出す優れた切れ味は、さらなる強敵相手と戦う際に大きな武器となります。

知っておきたい! 血統表でよく見る名馬

【ノーザンテースト】

 ノーザンダンサーを生産したカナダの大馬産家E・P.テイラー氏の生産馬。1972年7月、米ニューヨーク州のサラトガセールに上場され、当時24歳の吉田照哉氏(現社台ファーム代表)が約10万ドルで落札しました。フランスで現役生活を送り、芝1400mの仏G1フォレ賞を勝ったあと、1976年から日本で種牡馬となりました。

 左目に掛かった特徴的な白斑を持ち、筋肉質で幅のあるコロッとした馬体は父ノーザンダンサー譲り。配合によって多彩な産駒を出し、距離の長短、芝・ダートの適性はさまざまですが、共通しているのは能力の高さ。アンバーシャダイ、ダイナカール、ギャロップダイナ、ダイナガリバー、ダイナアクトレスなど多くの名馬を送り出し、82年から通算10回総合チャンピオンサイアーの座につきました。四肢頑健、成長力があり、気性的な問題もなく、80年代から90年代前半にかけてわが国の競馬を席巻しました。

 父系は途絶えたものの、母の父として15年連続チャンピオンとなるなど、母方に入っての影響力はいまなお大きく、ステイゴールド、ダイワメジャーというサンデー系有力種牡馬の母方にはノーザンテーストの血が入っています。ステイゴールドの代表産駒オルフェーヴルはノーザンテースト4×3です。エアグルーヴ、サクラバクシンオー、スクリーンヒーローといった影響力の強い血にも含まれています。

血統に関する疑問にズバリ回答!

「アガ・カーン4世殿下が亡くなりました。競馬への影響は?」

 2月4日、ポルトガルのリスボンで逝去されました。88歳。海外の競馬ニュースサイトはこの話題で持ち切りです。

 ここ100年以上にわたり、アガ・カーン3世殿下→アリ・カーン殿下→アガ・カーン4世殿下と続いてきたサラブレッド帝国は、新たな後継者のもとで継続されることになります。おそらく娘のザラ・アガ・カーン王女が継ぐのでしょう。

 アガ・カーン4世殿下は、ブラッシンググルーム、シャーガー、ダルシャーン、シャーラスタニ、シンダー、ダラカニ、ザルカヴァなどの名馬を生産または所有しました。コマーシャリズムに流されず、深い血統理論に基づく実践を数十年にわたって継続してきた真の馬産家であり、その別格ともいえる格調の高さは、世界中のホースマンから尊敬を集めてきました。

 ヨーロッパに拠点を置くメジャーなオーナーブリーダーは、昨今、規模を縮小したり解散するケースが目に付きます。世界最大規模の競馬の庇護者であったこの一族が、これまでと同様に競馬と関わることを、おそらくは世界中のホースマンが願っていることでしょう。

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栗山求

netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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