2025年03月01日(土) 12:00 19
2月22日深夜に行われたサウジC。ダート1800mで行われるG1に挑むホースマンたちの頂点に立ったのは、矢作芳人厩舎のフォーエバーヤング号でした。海外G1初制覇を成し遂げた坂井瑠星騎手とフォーエバーヤング号。最後まで諦めずに1完歩1完歩詰め寄り、強敵をねじ伏せた瞬間は、身震いをするほど感激しました。
▲サウジCを制したフォーエバーヤング(撮影:高橋正和)
矢作厩舎は、パンサラッサ号に続いて2度目の勝利おめでとうございます。ネオムターフCでもシンエンペラー号が逃げ切り、他馬を寄せ付けない会心の勝利でした。坂井騎手の手腕が光ったレースでこちらも感動しました。
馬を先行させることは非常に難しいと思います。行き過ぎると最後にばててしまうので、気分よく走らせつつペースを保ちながら先行しなくてはいけません。馬の力を信じて、人馬一体になる極上の意気投合ですね。眠気も一気に吹っ飛んでしまいました。チーム矢作の強さに感服しましたし、自分のことのように嬉しかったです。これからの活躍も益々楽しみにしています。
またアスコリピチェーノ号、ビザンチンドリーム号も勝利し、日本馬は4勝の大活躍。関係者の皆様、おめでとうございます。改めて日本馬の強さを感じ、競馬界の盛り上がりを感じました。今回のサウジカップデーには18頭も参戦。ぼくが現役時にはまだまだ世界の壁は厚かったですが、今年は競馬ファンを歓喜の渦に巻き込む一日になりました。
日本では今年最初のGI・フェブラリーSが行われ、英国出身でオーストラリアを拠点にするR.キング騎手が、女性として初のJRA平地GI勝利となりました。おめでとうございます。マッチレースを制した力強い走りが素晴らしかったです。
男女関係なく同じ位置に立ってレースができるスポーツは、競馬や乗馬だけですね。体重や年齢制限もなく平等に行われるのはとても良いと改めて思いました。
僕がチャレンジしているパラリンピックの馬場馬術では、女性の優勝者がとっても多いです。海外では女性調教師や女性厩務員も沢山おられます。女性の方が馬へのあたりが柔らかく繊細だといわれているようです。僕も頑張って、馬への扱いを柔らかく優しく丁寧に心がけていきます。
他のスポーツは、男子と女子で分かれるものが多いですよね。だから競馬や乗馬に魅了されるんです。皆さんも競馬は無理でも、乗馬は年齢も男女も関係なく取り組めます。ぜひ馬の魅力を体感してみませんか?
また、フェブラリーSは定年解散を迎える音無秀孝厩舎最後のGI挑戦になりました。サンライズジパング号が3/4馬身差2着と悔しいレースになりましたが、音無先生の功績は素晴らしいです。音ちゃんの愛称で呼ばれていて、引退されても「音ちゃん」コールが競馬場にこだますると思います、お疲れ様でした。競馬の面白さを改めて感じた長くて短い1日でした。
さて…お待たせしました。先日、新設された福永祐一厩舎を訪問してきました。厩舎に着くと洗い場のドアが真っ黒の壁面に福永厩舎のロゴが大きく描かれています。流石アスリートのロゴだなと見とれてしまいました。
▲厩舎ロゴの前で2ショット
常石 凄い厩舎を造られましたね。厩舎を変えようと思ったきっかけは何ですか?
福永 ありがとう! 馬はとても大切な生き物だから馬のことを第一に考え、人も綺麗で快適かつ安全に働きやすい環境を造りたかったです。馬も人も大事だからね。
常石 馬房を覗いたんですが、馬も心地よさそうでした。馬房の壁に貼られている横の板と縦の板は何ですか?
福永 横板と縦板は寝違いした時に自力で起き上がれるようにしている物です。夜間など人がいない時の怪我を防げるようにしています。
▲寝違い防止のために板を使って工夫
常石 人がいないときに起こる怪我の予防は、嬉しい対策ですね。馬房の前には、物が置かれていなくて、厩舎全体がすっきりしています。あの小さい窓は何ですか?
福永 夜間当番の人が馬に餌をあげるとき、馬房の中に入らなくてもこの窓から餌をあげられるようにしています。担当馬ではない馬房に入ることはリスクがあるので、事故防止に繋げています。また、出入口には物を置かないようにもしています。掃除もしやすいし、いつも清潔にしておかないとね。
▲馬が顔をだせるスペースの横にえさ用の窓が!
常石 僕も一度経験があります。厩務員さんと一緒に馬を見に行ったとき、馬房で飛びつかれてびっくりしました。事故の防止は大事なことですね。馬房の前にハミなどが無いですが、どこにあるんですか?
福永 馬具保管庫で保管しています。ハミなどは馬の口に入れるものなので、清潔で衛生的に保てるように保管して、担当者でなくてもどの馬のハミかわかるようにしています。台には引き出しもつけて、リボンやメンコなども保管。ここはこだわったね、木馬もあるよ(笑)。
▲綺麗に管理されている馬具の保管庫
常石 わー! 僕も乗りに来ていいですか?
福永 ここだったら大丈夫かな。スタッフのトレーニングのために置いていて、騎乗スタイルなどをチェックしています。これで完成とは思わないしここからが始まりです。厩舎を改築したから馬が走るという訳ではないだろうけど、人馬共に安全で快適な環境を作りたいと思っています。
常石 ありがとうございます。話は変わって、3月で定年引退される調教師の先生への思いはありますか?
福永 音無先生にはインディチャンプで安田記念などを勝たせてもらいました。河内先生も一緒にレースに乗っていたので思い出がありますね。
常石 女性の調教師も開業されますね。アドバイスなどありますか?
福永 JRAにもやっと女性調教師が誕生しますし頑張ってほしいです。お互い切磋琢磨して競馬界を盛り上げていけたらいいね。
常石 僕も勉強していますよ。やっと高校2年生の最後のテストがあり、終わったら3年生になります。海外でパラリンピックを目指して馬場馬術大会に参加していますが、女性騎手の活躍が多いです。調教師や厩務員もいますね。
福永 そうか、頑張ってな。
常石 ありがとうございました。厩舎の活躍楽しみにしています。
福永 ありがとう。
ユーイチさんのこだわりが随所にあって、普段は気づかないところまで研究されているなと感じました。洗い場や馬房のクーラー設置、チップなどこだわりはまだまだありました。この続きは来月のコラムに載せますので、楽しみにお待ちください。
貴重な話を沢山聞かせていただき、凄さを改めて感じました。このために騎手時代から無駄遣いせず、お金をためていたそうです。僕はいっぱい無駄遣いしているなあと改めて反省です。
僕の活動ですが、1月29日に和泉総合高等学校で講演をしました。生徒さんから感想をもらったりがっちり握手をしたり、僕の方こそ勉強になりました。パワーをいただいて帰った一日でした。パラ馬術では強化選手に選ばれたので、このチャンスを逃さないよう頑張ります。
オカン 久々のトレセンでしたが、福永厩舎の新装された環境を見ることができ、ユーイチさんの衛生面や、人馬の安全に対するこだわりを隅々まで感じました。厩舎も自宅も共通しているなと、主婦として感じることも多々ありました。
ユーイチさんの偉大さを同期として誇りに思い、パラ馬術に向けて取り組んでほしいです。サウジCなどでは、世界に誇る日本の馬作りに感動しました。今後も侍ホースマンの活躍を楽しみにしています。
息子もパラ馬術の強化選手に選んでいただき、気合い充分です! チャンスを無駄にしないよう、怪我には気をつけながら挑んでほしいです。息子よ、勝負の時ですよ! ユーイチさんにいい報告ができるようにがんばれ!
つねかつこと常石勝義&オカン
(文中敬称略、次回の更新は4/1(火)を予定しています)
常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っている。