【弥生賞 AI予想】レースの傾向からも魅力アリ!? 好調キープ中のAIが意外な伏兵を指名

2025年03月03日(月) 18:00 23

単勝オッズ3.1倍(2番人気)のシックスペンスが優勝(撮影:下野雄規)

netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。

(文・構成=伊吹雅也)

高額配当決着となった年も決して少なくはないが…

AIマスターM(以下、M) 先週は中山記念が行われ、単勝オッズ3.1倍(2番人気)のシックスペンスが優勝を果たしました。

伊吹 強かったですね。五分のスタートを切って一旦は先行しかけたものの、行きたい馬を先に行かせる形で道中は中団のインコースを追走。3コーナーから4コーナーで少しずつ前との差を詰め、ゴール前の直線入り口では先団のすぐ後ろに迫っています。残り200m地点を過ぎたところでエコロヴァルツ(2着)が逃げたメイショウチタン(6着)をかわし、一旦は単独先頭となりましたが、そこからシックスペンスがエコロヴァルツを猛追し、2頭が並んで決勝線を通過。写真判定の結果、ハナ差でシックスペンスに軍配が上がりました。勝ち時計の1分44秒8はコースレコード。敗れたエコロヴァルツもほぼ完璧な競馬をしていたと思いますから、着差以上に高く評価して良いのではないでしょうか。冷静な手綱捌きで末脚を引き出したC.ルメール騎手も、それに応えてしっかり競り勝ったシックスペンスも、お見事と言うほかありません。

M シックスペンスは昨年のスプリングS・毎日王冠に続く自身3度目の重賞制覇。これで通算成績は6戦5勝となりました。

伊吹 日本ダービーで9着に敗れてしまったとはいえ、2400m未満のレースに限れば5戦全勝。次走は未定とのことですが、どこを使ってきたとしてもかなりの注目を集めることになりそうですね。母のフィンレイズラッキーチャームは現役時代にマディソンS(米G1)などを勝っている活躍馬。もともとポテンシャルの高い血統ですし、凄みを感じたここ2戦の勝ちっぷりを考えると、大舞台でも十分にチャンスはあると思います。選択したレースの傾向にもよるとはいえ、相応に高く評価するべきでしょう。

M ちなみに、Aiエスケープは前回の当コラムでこのシックスペンスを推奨馬に指名していました。

伊吹 「どちらかと言えば穴党であるAiエスケープがこの馬を指名したということは、今回は妙味ある伏兵がいないということなのかも」とコメントしましたが、結果的に単勝3番人気以内の3頭がそれぞれ1着から3着を確保。シックスペンスの勝利はもちろん、人気薄の馬が馬券に絡めなかった点も、Aiエスケープにとっては予想通りだったのかもしれません。フェブラリーSの推奨馬は出走が叶わなかったものの、東京新聞杯のボンドガール(2着)、京都記念のヨーホーレイク(1着)と、最近はAiエスケープの指名した馬が立て続けに好走を果たしています。ヴィクトリアマイルでテンハッピーローズをピックアップした昨春を彷彿させるような好調ぶり。今週以降も楽しみです。

M 今週の日曜中山メインレースは、本番と同じコースで施行される皐月賞トライアル、弥生賞ディープインパクト記念。昨年は単勝オッズ34.9倍(6番人気)のコスモキュランダが優勝を果たしました。ちなみに、その2024年は単勝オッズ3.5倍(3番人気)のシンエンペラーが2着に、単勝オッズ76.6倍(9番人気)のシリウスコルトが3着に食い込んで、3連単の配当は30万1710円。荒れやすいというイメージはあまりないのですが、波乱の決着を警戒しておいた方が良いのでしょうか。

伊吹 過去10年の弥生賞における3連単の配当を振り返ってみると、平均値が10万5019円だったのに対し、中央値は2万4380円どまり。メイショウテンゲンが制した2019年(3連単45万7370円)など、大きく荒れた年もある一方で、大半の年は堅く収まっています。

M 単勝人気順別成績を見る限りでも、上位人気馬がそれなりに信頼できるレースと言えそうです。

伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝2番人気から4番人気の馬は2015年以降[6-4-5-15](3着内率50.0%)、単勝5番人気以下の馬は2015年以降[2-2-4-60](3着内率11.8%)でした。少頭数となりがちなレースですし、手を広げ過ぎてしまわないよう心掛けるべきでしょう。

M そんな弥生賞でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ベストシーンです。

伊吹 これはまた意外なところを挙げてきましたね。積極的に狙おうと考えている方はそれほど多くないはず。

M ベストシーンはキャリア5戦。3走前のレースで勝ち上がりを果たしたものの、2走前のひいらぎ賞では3着に、前走のセントポーリア賞では6着に敗れています。今回は相手関係がさらに強化される一戦。おそらく、超人気薄の立場で臨むことになるでしょう。

伊吹 もっとも、母アユサンは現役時代に桜花賞を勝っている実績馬で、半兄ドルチェモアも2歳時に朝日杯FSを勝利。まだまだ伸びしろがありそうな血統ですから、見限るのは早計かもしれません。少なくとも、Aiエスケープはそう考えている模様。この見立てを踏まえたうえで、好走馬の傾向とベストシーンのプロフィールを見比べていきたいと思います。

M 真っ先に注目しておくべきポイントはどのあたりですか?

伊吹 まずは前走成績を素直に評価したいところ。2020年以降の3着以内馬15頭は、いずれも前走の着順が6着以内、かつ前走の条件が新馬・未勝利以外でした。

M なるほど。大敗直後の馬や、初勝利を収めた直後の馬は強調できませんね。

伊吹 おっしゃる通り。格の高いレースをステップに臨む馬や、将来性豊かなパフォーマンスを見せた馬であっても、これらの条件に該当していたら疑ってかかるべきでしょう。

M 先程も触れた通り、ベストシーンの前走は1勝クラスのセントポーリア賞で、結果は6着。ギリギリではありますが、この条件をクリアしています。

伊吹 あとは実績馬や中山向きの差し馬が優勢である点も見逃せない事実。“JRAの、GIのレース”において5着以内となった経験がある馬は2020年以降[1-4-3-2](3着内率80.0%)と堅実です。一方、この経験がなかったにもかかわらず3着以内となった7頭のうち5頭は、中山のレースにおいて上がり3ハロンタイム順位が1位となった経験のある馬でした。

M こちらもなかなか興味深い傾向。GIのレースも中山のレースも積極的に使ってこなかった馬は、思い切って評価を下げるべきかもしれませんね。

伊吹 当然ながら、先行力の高さを活かしたいタイプも扱いに注意するべきでしょう。

M ベストシーンは重賞初挑戦ですが、中山芝1600m外のデビュー戦で出走メンバー中1位の上がり3ハロンタイムをマークしています。

伊吹 さらに、同じく2020年以降の3着以内馬15頭中11頭は、前走が中山芝2000m内のレースでした。

M 前走も今回と同じコースだった馬が中心、と。

伊吹 一方、前走のコースが中山芝2000m内以外、かつ父にノーザンダンサー系以外の種牡馬を持つ馬は2020年以降[0-1-0-21](3着内率4.5%)。このレースと相性が良いノーザンダンサー系種牡馬の産駒でない限り、今回と異なるコースのレースをステップに臨む馬は過信禁物です。

M ベストシーンの前走、セントポーリア賞は東京芝1800mのレース。また、父のレイデオロはノーザンダンサー系に属していません。

伊吹 正直なところ、私は無印の予定でした。ただ、中山向きの差し馬である点は高く評価できますし、他ならぬAiエスケープが有力と見ているのであれば、押さえておくに越したことはないのかも。最終的なメンバー構成や実際のオッズも踏まえたうえで、直前にもう一度しっかり検討してみたいと思います。

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伊吹雅也

競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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