2025年03月03日(月) 18:00 27
【Pick Up】クリノメイ:1着
母方にフォーティナイナーを持つオルフェーヴル産駒は、GIを4勝した名牝ラッキーライラック、皐月賞馬エポカドーロ、きさらぎ賞を勝ったラーゴムなどが出ているニックス。本馬はダンジグを併せ持つので、ラッキーライラックと似ています。
母クリノエリザベスはダート向きのプリサイスエンドを父に持ち、現役時代にホッカイドウ競馬の重賞リリーカップを勝ったほか、JRA転入後に3勝クラスの鎌倉S(ダ1400m)で3着と健闘しています。
父オルフェーヴルは、芝向きの産駒だけでなく、ウシュバテソーロ、マルシュロレーヌ、ジャスティン、ギルデッドミラーといったダートホースを出しています。
「オルフェーヴル×プリサイスエンド」という組み合わせで、母がダートで活躍した馬であれば、ダート向きの馬に出る可能性もありましたが、本馬は芝で問題なく走っています。
今回は、朝から小雨が降り続いていたため、完全な良馬場ではなく、やや渋った馬場でした。これがプラスに作用したのではないかと感じます。オルフェーヴル産駒らしいパワーとスピードの持続力が活きたレースでした。
【Pick Up】シックスペンス:1着
母方にダンジグを持つキズナ産駒は成功しており、ジャスティンミラノ、バスラットレオン、サンライズジパング、パラレルヴィジョン、エリキングなど多くの活躍馬が出ています。
母フィンレイズラッキーチャームは、現役時代にマディソンS(米G1・ダ7ハロン)をはじめ5つの重賞を制覇しました。母の父トワーリングキャンディは、名種牡馬ガンランナーと同じくキャンディライドを父に持ち、現役時代にマリブS(米G1・ダ7ハロン)で1分19秒70という好タイムを計時しました。わが国ではブルードメアサイアーとして優れた実績を挙げており、出走を果たした8頭中5頭が勝ち上がっています。
本馬の半弟フィールドノート(父ロードカナロア)は、1月5日の中山未勝利戦(芝1600m)で、初出走ながら経験馬を相手に鮮やかな差し切り勝ちを収めました。母フィンレイズラッキーチャームは繁殖牝馬としてきわめて高いポテンシャルを秘めています。
本馬はこれで6戦5勝。道中力んで本来の力を発揮できなかった日本ダービー(9着)以外はすべて勝っています。今回は、久々だったことに加え、1コーナー過ぎで行きたがるところがありました。それでいてコースレコードで勝つのですから、3歳時から順調に成長しています。
【メジロマックイーン】
現役時代に天皇賞(春)を2回、菊花賞、宝塚記念を制覇。年度代表馬にはなれませんでしたが、わが国における歴代最強クラスのステイヤーです。のちに顕彰馬に選出されました。
力のいる馬場における強さは傑出しており、芝の重・不良では4戦して[2-1-0-1]。着外となったレースは天皇賞(秋)の18着降着で、実際のレースぶりは、後続を6馬身引き離しての1位入線でした。2着と敗れたレースは、デビュー2戦目のゆきやなぎ賞。初芝でソエが出ていたことが敗因です。
阪神競馬場の芝は、91年の年末開催から94年の2月あたりまで、おそろしく時計のかかる馬場コンディションでした。パドスールやノーリュートといった、ほかの競馬場では目立つところのない鈍重なヨーロッパ血統が大活躍したものです。
メジロマックイーンは、この期間の阪神で重賞に3回出走し、すべて危なげなく勝ちました。1993年の宝塚記念もそのひとつで、良馬場の芝2200mの勝ちタイムは2分17秒7でした。
メジロマックイーンは「メジロティターン×リマンド×ヒンドスタン」という、ほとんど時代錯誤的な非主流のスタミナ血統で構成されています。古風なヨーロピアンの風格があり、タフな馬場で無類の強さを発揮したのもうなずけます。
ただ単に力の要る馬場コンディションに適性がある、というだけでなく、引退レースとなった芝2400mの京都大賞典では、2分22秒7というコースレコードで快勝しました。次走ジャパンCを勝つことになるレガシーワールドを問題にしませんでした。こうした得がたい個性、ポテンシャルの高さが血の優秀性を証明しています。
種牡馬としては、ホクトスルタン、ディアジーナ、ヤマニンメルベイユ、エイダイクイン、タイムフェアレディといった重賞勝ち馬を出し、それなりの実績を残しました。牝馬の活躍が目立った種牡馬でもあります。
血統シーンの最前線に躍り出たのは「母の父」としての活躍です。ドリームジャーニーとオルフェーヴルの兄弟、ゴールドシップの3頭がGI戦線で大活躍。これらはいずれもステイゴールドの仔です。それだけでなく、タイセイレジェンド、フーラブライド、ラブイズブーシェ、フェイトフルウォーが重賞を勝っています(フェイトフルウォーもステイゴールド産駒)。
スタミナ、底力、成長力といった要素を、サンデーサイレンス系を中心とする現代の主流血統に注入した功績は大きく、たとえばオルフェーヴルがロンシャン競馬場の道悪を苦にしなかったのは、メジロマックイーンの血を抜きにしては考えられません。
ドリームジャーニーとオルフェーヴルの兄弟、ゴールドシップの血は、父方、母方を問わずわが国の血統のなかに残り、スタミナ、底力、成長力といった特長を末永く伝えていくと思われます。
「世界で最も高額な種付け料を取る種牡馬は?」
2025年の種付け料トップは、イギリスに繋養されているフランケルとドバウィの2頭。いずれも35万ポンドです。日本円に直すと約6600万円。日本史上最高額のディープインパクトが4000万円なので、その1.5倍以上という数字です。
アメリカは、25万ドルでイントゥミスチーフとジャスティファイが並んでいます。日本円で約3800万円なので、ヨーロッパの2頭には及びません。
ちなみに日本は、キズナ、キタサンブラック、イクイノックスの3頭が2000万円で並んでいます。
栗山求
netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG