産駒傾向も“二刀流” モズアスコット産駒ファウストラーゼンが重賞初制覇

2025年03月10日(月) 18:00 29

血統で振り返る弥生賞ディープインパクト記念

【Pick Up】ファウストラーゼン:1着

 父モズアスコットは、芝の安田記念、ダートのフェブラリーSという、異なるサーフェイスのマイルGIを制覇した二刀流の名馬。その父フランケルは今世紀最強の芝マイラーで、イギリスで14戦全勝の成績を残し、種牡馬としても成功しています。

 3歳を迎えたモズアスコットの初年度産駒は、現時点で芝9勝、ダート6勝という成績。ただ、連対率はダートが上なので、配合次第でどちらに向いた産駒も出せるタイプです。

 ファウストラーゼンの他に、モズナナスター(ファンタジーS2着)、リリーフィールド(もみじS)、メリディアンスター(札幌芝1500mの新馬戦をレコード勝ち)などが出ており、地方競馬では鎌倉記念を大差で圧勝したベアバッキューン(通算4戦全勝で1戦あたりの平均着差は約9馬身。骨折休養中)が注目株です。

 ファウストラーゼンの母ペイシャフェリスは、現役時代に芝でオープンクラスまで出世しました。3歳春に芝1600mのアネモネSを勝っています。本馬を含めて出走を果たした産駒は4頭中3頭が勝ち上がっています。2代母プレザントケイプの半弟にルー賞(仏G3・芝2500m)を勝ったゲイトウッドがいます。

 ファウストラーゼンは「モズアスコット×スペシャルウィーク」。ミスティアワー≒マルゼンスキー3×4という相似な血のクロスが生じるので注目したい組み合わせです。

 また、Sadler's Wells 4×5も併せ持つので、スピードの持続力とスタミナに秀でたタイプでしょう。中山の長丁場が合いそうです。

血統で振り返るフィリーズレビュー

【Pick Up】ショウナンザナドゥ:1着

 父キズナは、4歳世代に続いて3歳世代も好調を維持しており、種牡馬別のJRA賞金獲得額、勝利数は、2世代続けて双方首位となっています。繁殖牝馬の質と頭数が4歳世代から劇的に上昇したことが好調の要因です。3歳世代のキズナ産駒は、これで重賞勝ち馬が6頭目となりました。

 ストームキャットのクロスを持つキズナ産駒は成功しており、連対率27.0%、1走あたりの賞金額261万円。キズナ産駒全体の成績(連対率20.1%、1走あたり232万円)を上回っています。

 このクロスを持つキズナ産駒は、芝31勝、ダート28勝と、芝がやや優勢ですが、勝率、連対率、複勝率というアベレージ面では、ダートが芝を上回っています。

 性別によって特長に違いがあるのも目を惹きます。牡は芝10勝、ダート23勝。一方、牝は芝21勝、ダート5勝という成績です。牡はハピやモンブランミノルのようなダート馬が、牝はショウナンザナドゥ、ミストレス、グランベルナデットのような芝馬がスタンダードです。

 ショウナンザナドゥの母ミスエーニョは、アメリカでダート7ハロンのG1を勝ちました。「プルピット×ヘネシー」という組み合わせなので、ダートテイストが強めですが、芝向きの種牡馬と交配すると芝馬を出すところが非凡で、すでにファンタジーSを勝ったミスエルテ(父フランケル)、フラワーCを勝ったミアネーロ(父ドゥラメンテ)を産んでいます。3頭の重賞勝ち馬を出したわけですから文句なしの名繁殖牝馬です。孫以降の代にも大きな期待が掛けられます。

 ショウナンザナドゥは、減少傾向にあった馬体重が前走から10kg増えました。暖かくなって調子も上向いてきたようです。

知っておきたい! 血統表でよく見る名馬

【プルピット】

 現役時代にアメリカで6戦4勝。G1には手が届かなかったものの、G2のファウンテンオブユースSとブルーグラスSを勝ちました。

 名種牡馬エーピーインディの初年度産駒で、母プリーチは米G1フリゼットSの勝ち馬。プリーチの全姉ヤーンは、テイルオブザキャットの母、ヨハネスブルグの2代母となっています。「エーピーインディ×ミスタープロスペクター」の組み合わせはニックスで、その後、コングラッツ、マリブムーン、マインシャフトをはじめ多くの活躍馬が出ました。

 良血を活かして種牡馬としても成功。3年連続北米チャンピオンサイアーの座についたタピットを出しました。日本ではピットファイターが武蔵野Sなどダート重賞を3勝し、輸入種牡馬パイロがミューチャリーやメイショウハリオなどの父となりました。スピードの持続力に秀でたパワー型の血統です。タピットの仔フライトラインは近年のアメリカ最強馬という評価を獲得しており、父系はまだまだ伸びて行くでしょう。

 母の父としては、ダート戦で桁違いの成績を残しつつある輸入種牡馬ナダルや、フィリーズレビューを勝ったショウナンザナドゥを出し、やはり優秀です。

血統に関する疑問にズバリ回答!

「2025年のダート競馬で最も勢いのある種牡馬は?」

 今年、ダート競馬で産駒が20走以上した国内繋養種牡馬を、連対率が高い順に並べると以下のとおりになります。

1位 ミスターメロディ  41.7%
2位 キズナ       27.7%
3位 ニューイヤーズデイ 25.0%
4位 ロードカナロア   24.6%
5位 ナダル       24.3%

 トップのミスターメロディは、ダート戦で24戦10連対という成績。昨年6月に初年度産駒がデビューしたばかりの新種牡馬で、2歳戦では芝連対率18.0%、ダート連対率4.8%でした。

 ところが、今年に入って傾向がガラリと変わり、芝15.0%、ダート41.7%という成績です。芝の成績が悪いわけではないのですが、ダートの成績が急上昇しています。

 現役時代に高松宮記念とファルコンSを制覇した実績がある一方、「スキャットダディ×デピュティミニスター」というパワフルな血統構成で、自身と同じ牝系からダート重賞を6勝したクーリンガーが出ています。デビュー戦で東京ダ1300mのコースレコードを樹立したほか、JBCスプリントで6着という成績があります。

“ダートのミスターメロディ”はしばらく注目したいところです。

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栗山求

netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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