【オーシャンS回顧】返し馬でまったく伝わってこなかった「前向きな気持ち」──いかにしてママコチャの闘志を奮い立たせたのか

2025年03月14日(金) 18:01 83

VOICE

▲川田将雅騎手がママコチャとのオーシャンSを回顧(撮影:下野雄規)

3月1日、ママコチャと共にオーシャンSを制した川田将雅騎手。約2年ぶりに掴んだ白星の背景に、「気持ちを作る」という新しい試みがありました。

今回は返し馬からゴールまでのママコチャとの“対話”を公開! わずか15分間ながら、「あの時間こそ、すごく大事なんですよ」と語る濃密な時間を振り返ります。管理する池江泰寿調教師もさすがと評したレースの全容とは──。

(取材・構成=不破由妃子)

川田騎手がママコチャに新たなアプローチをしたワケ

──先日のオーシャンSでは、ママコチャの復活劇を見事にエスコート。1年5カ月ぶりの勝利となりましたね。

川田 久しぶりに勝つことができてホッとしましたし、ママコチャが久しぶりに走り切れたことにうれしさがありましたね。

──レース後のコメントを見ると、今回は「気持ちを作る」ことがテーマだったのかなと。「気持ちに寄り添う」とか「気持ちを大事に」というのはよく聞きますが、「気持ちを作る」というのは川田さん以外からはあまり聞かない表現なので、その過程をお聞きしてみたいです。

川田 振り返ってみれば、スプリンターズS(2023年)を勝ったときはまだ粗削りで、1200mも走り慣れていなかったし、もっとよくなる余地を十分に残しているなぁという雰囲気だったんです。

 GIを勝ってなお、この馬はさらに楽しみだなと思えた。でも、以降はなかなか結果に結びつかないようなレースが続いてしまって。寒い時期が得意ではなかったり、体調が上がってこないなどいろいろな要素があるなかで、いい走りができないままここまできてしまったという。

──去年の高松宮記念(8着)以外は、常に僅差の範囲まできていましたけどね。

川田 走れる体で競馬にきているわけですから、ある程度の走りはできていました。ただ、重賞やGIといった一番上のカテゴリーで勝ち切るには、やはりしっかり出し切らなきゃいけない。

──出し切るまでには至らなかったと。

川田 もともと前進気勢が強くて、気持ちが溢れてしまうほど進んでしまうタイプだったので、そのコントロールが最優先でした。その結果、無駄な力みがなくなって落ち着いて走れるようになり、溢れることもなくなった。

 それらの変化を前向きに捉えながらの数戦だったんですけど、半面、動きが甘くなった。阪神Cの1400mも、そこまで溢れずに走れたんですよ。よく言えば、道中はいいリズムだった。でも、動き切れているかというと動き切れていない。頑張って走ってくれているんだけど…という感じで。

──何かが物足りない状態が続いていたんですね。

川田 全力で走り切れたかとなると、そうじゃなかったというところです。かといって、手を抜いて走っているわけでもない。ここは大きな違いで、ママコチャにやる気がないとか、そういう話ではないんですよね。

 頑張ってくれてはいるんだけど、もうひとつ動けそうで動けない。動けるはずなんだけど、・・・

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川田将雅

1985年10月15日、佐賀県生まれ。曾祖父、祖父、父、伯父が調教師という競馬一家。2004年にデビュー。同期は藤岡佑介、津村明秀、吉田隼人ら。2008年にキャプテントゥーレで皐月賞を勝利し、GI及びクラシック競走初制覇を飾る。2016年にマカヒキで日本ダービーを勝利し、ダービージョッキーとなると共に史上8人目のクラシック競走完全制覇を達成。

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