2025年03月17日(月) 18:00 18
【Pick Up】ピコチャンブラック:1着
現3歳のキタサンブラック産駒は好調。サトノカルナバル、クロワデュノールに次いで3頭目の重賞勝ち馬となります。この世代の血統登録頭数は70頭、ひとつ下の2歳は133頭、ふたつ下の1歳は163頭。繁殖牝馬の質と量がアップしていくので、これから先のキタサンブラック産駒はかなり楽しみです。
母方にサドラーズウェルズを持つキタサンブラック産駒は、初年度はほとんど目立たなかったのですが、2年目に皐月賞馬ソールオリエンスと桜花賞2着馬コナコーストが出現し、いまでは産駒全体の平均を上回る好成績を収めています。現3歳からはピコチャンブラックの他にきさらぎ賞2着馬リンクスティップが出ています。
キタサンブラック産駒のトップクラスの大物は、重厚なヨーロッパ血統を抱えているものが目立ちます。母トランプクイーンは皐月賞とスプリングSを勝ったアンライバルドの全妹で、ダービー馬フサイチコンコルドの半妹。2代母バレークイーンは、父が英愛チャンピオンサイアー14回のサドラーズウェルズ、母がサンプリンセス(英オークス、英セントレジャー、凱旋門賞2着)という重厚な血統構成です。
キタサンブラック産駒の「サンデーサイレンス3×3」は、ラヴェル、テーオーステルス、ヒップホップソウル、ピースオブザライフなどが出ており成功しています。障害界のスター候補アンクルブラックもこのパターンに当てはまります。3×3は、普通の感覚では避けたくなるのですが、キタサンブラック産駒の場合は問題ありません。
父キタサンブラック、その父ブラックタイド、母の全兄アンライバルドはいずれもスプリングSの勝ち馬。このレース向きの血統だったといえるでしょう。
【Pick Up】クイーンズウォーク:1着
牝馬の金鯱賞制覇は1995年のサマニベッピン以来30年ぶり。キズナ産駒はシックスペンス、ショウナンザナドゥに続いて3週連続重賞制覇となり、今年に入って早くも重賞5勝目です。クイーンズウォーク自身、昨年9月のローズS以来となる重賞3勝目です。
母ウェイヴェルアベニューは現役時代にBCフィリー&メアスプリント(米G1・ダート7ハロン)を勝った名牝。繁殖牝馬としてすでにグレナディアガーズ(朝日杯FS、阪神C)を産んでおり、同馬は2024年から社台スタリオンステーションで種牡馬入りしています。
母方にアンブライドルドを持つキズナ産駒は、ほかにビアンフェ、シャムロックヒル、ショウナンラプンタ、リビアングラスなどが出ており、連対率、1走あたりの賞金額、勝馬率ともキズナ産駒全体の数値を上回っています。
これで左回りは4戦3勝、右回りは5戦1勝。左右の回りで成績に差が出てきた感はあります。
【ピヴォタル】
現役時代にナンソープS(英G1・芝5ハロン)を鮮やかに差し切り、通算6戦4勝の成績で引退しました。父がさほど成功したとはいえないポーラーファルコン、唯一のG1勝ちが5ハロンのスプリント戦だったこともあり、種牡馬としての期待度はそれなりでしかありませんでした。しかし、初年度から3頭のG1馬を出して注目を集め、最終的に30頭ものG1馬を送り出し、ヌレイエフ系の中興の祖となりました。このラインが存在しなければヌレイエフ系は途絶えていたでしょう。
胸前や腰回りの筋肉が発達したマイラー体形で、基本的には芝向きのスピードタイプ。ただ、英・愛オークスを連勝したサリスカのように、配合次第では距離をこなす馬もいました。後継種牡馬のシユーニがフランスで大成功を収め、系統を発展させています。
母の父としてはさらに優秀。マジカル、クラックスマン、ラヴをはじめ多くの名馬を出し、2017年から3年連続で英愛ブルードメアサイアーチャンピオンとなりました。日本ではミッキーロケット、ファンディーナ、ダーリントンホールの母の父、リカンカブールの2代母の父となっています。
「2025年のアメリカ競馬界で注目の種牡馬は?」
年が明けてまだ2ヵ月ですから、昨年と大きく違ったところはありませんが、初年度産駒が3歳の新種牡馬ヴェコマ(Vekoma)が13位につけている点は目を惹きます。ガンランナーの父として知られるキャンディライドを父に持ち、現役時代はメトロポリタンH(米G1・ダ8ハロン)やカーターH(米G1・ダ7ハロン)を勝つなど8戦6勝の成績を残しました。
サウジダービー(沙G3・ダ1600m)やUAE2000ギニー(首G3・ダ1600m)を勝ったゴールデンヴェコマ、イロコイS(米G3・ダ8ハロン)を勝ったジョナサンズウェイ、ヒアカムズザブライドS(米G3・芝8ハロン)を勝ったヴィクスンなどを出しています。
ゴールデンヴェコマがサウジアラビアの高額賞金レースを勝ったとはいえ、昨年のファーストシーズンサイアーランキングでは僅差の3位に食い込んで実力を示しており、今年、出走60頭中26頭が勝ち上がるという勝馬率の高さは評価できます。継続して注目していきたい種牡馬です。
栗山求
netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG