2025年04月03日(木) 12:00 41
先週の高松宮記念で、私が本命視していたナムラクレアは3年連続で2着になった。
JRAの平地GIで3年連続2着になったのは、2011~13年ジャパンカップダートのワンダーアキュート、2017~19年エリザベス女王杯のクロコスミア、2021~23年天皇賞(春)のディープボンドにつづく4頭目。
ナムラクレアが3年連続2着になったときの鞍上は、浜中俊騎手が2回とクリストフ・ルメール騎手。ワンダーアキュートは和田竜二騎手が2回と武豊騎手。クロコスミアは和田騎手、岩田康誠騎手、藤岡佑介騎手。ディープボンドは3回とも和田騎手だった。つまり、これら4頭が同一GIで2着になった12回のうち半分の6回に和田騎手が騎乗していたわけだ。本人としてはあまり嬉しくない記録かもしれないが、3年連続GIで銀メダルを獲るほどの馬の騎乗を依頼されつづけるのだから、これも高く評価されていることの証と言えよう。
この「同一GI連続2着記録」の範囲を地方交流GIにまでひろげると、オメガパフュームが2018~21年のJBCクラシックで4年連続2着になっている。舞台が京都、浦和、大井、金沢と異なるものの、同一のGIであることは確かだ。求められるものが違う場所でこれだけの成績を4年連続でおさめたのだから素晴らしい。この4回の鞍上は、和田竜二騎手、ミルコ・デムーロ騎手が3回と、ここにも和田騎手の名が出てくる。
また、フリオーソが2008~10年の川崎記念で3年連続2着になっており、鞍上は今野忠成騎手、戸崎圭太騎手、ミルコ・デムーロ騎手だ。なお、フリオーソは11年と12年も戸崎騎手とのコンビで川崎記念に出走し、1着、3着という成績をおさめている。
前出のワンダーアキュートは、ジャパンカップダートで3年連続2着になる前、2009年 (6着)も、レース名がチャンピオンズCとなった2014年(5着)、15年(6着)も出走しており、同一GI最多出走記録2位タイの記録保持馬でもある。同じく2位タイは、フェブラリーSのノボトゥルー、ジャパンCと有馬記念のコスモバルクだ。
これらの上を行く、同一GI最多出走記録保持馬は、天皇賞(春)に8回出走したトウカイトリックである。ちなみに、この記録にも和田騎手が関わっており、2009年の天皇賞(春)で同馬に騎乗して6着になっている。
と、2着の馬の話ばかりしてきたが、高松宮記念を勝ったサトノレーヴは素晴らしく強かった。また、その能力を引き出したジョアン・モレイラ騎手の手綱さばきは実に鮮やかだった。
これでサトノレーヴの通算成績は12戦8勝2着1回3着1回となった。
そして、先週の土曜日、3月29日から短期免許で乗りはじめたモレイラ騎手の29、30日の成績は、16戦6勝2着4回3着3回。勝率3割7分5厘、連対率6割2分5厘、3着内率8割1分3厘という凄まじさだ。JRA・GIは、2018年エリザベス女王杯(リスグラシュー)、2024年桜花賞(ステレンボッシュ)に次ぐ3勝目。意外と少ないのは、春のGIシーズンに短期免許で来日したのは去年が初めてだったように、タイミングのせいだろう。
今週は日本のトップジョッキーの何人かがドバイに行ってしまうので良質な騎乗馬が集まり、またドカ勝ちするのか。
「マジックマン」とは上手く言ったもので、気がつけばいい位置にいて、このあたりから動くのかなと思ったときにはもう馬を反応させている。今後、再びJRAの騎手試験を受けることはないのだろうか。一年を通じて彼の騎乗を間近で見たいという思いは、ファンはもちろん、厩舎関係者やオーナーも強く持っているはずだ。
自国の競技者育成のために「外国人枠」を設けることは必要だと思う。
競馬の場合、外国馬や外国産馬の出走機会を制限してきたことにより、日本馬が能力を高める機会が保たれ、これだけ強くなったという事実がある。
外国人騎手に関してはどうか。外国人が運営した近代競馬の黎明期を経て日本人が運営するようになってからも、明治末期に来日したハロルド・コッフィーなどが活躍。さらに、1950年代にロバート・アイアノッティ、1970年代にはミカエル・ベネジアといった外国人も日本で騎手免許を取得して騎乗している。
その後、1981年に創設されたジャパンCや、1987年から始まったワールドスーパージョッキーズシリーズなどでしか外国人騎手を日本で見る機会のない時代がしばらくつづき、1994年から最長3カ月の短期免許が外国人騎手に与えられるようになった。さらに、2015年にミルコ・デムーロ騎手とクリストフ・ルメール騎手がJRAの騎手免許を取得し、今に至る。
短期免許が同時に発行されるのは5人までで、その「5人枠」が、去年は年明けから埋まって話題になった。
この制度ができてから30年以上が経ち、日本の競馬のレベルも、世界における立ち位置もずいぶん変わった。マイナーチェンジを重ね、各国の本当のトップクラスで、日本での制裁の少ない騎手だけが来られるようになったわけだが、今後、3カ月という期間や、5人という枠、さらに、外国人の通年免許の合否基準が見直されることはあるのだろうか。
さて、先日、相馬野馬追小高郷騎馬武者の蒔田保夫さんが、今年の野馬追のポスターを送ってくれた。4年連続で総大将をつとめる相馬言胤(としたね)さんの凛々しい騎乗姿がメインだ。言胤さんは16歳。ラグビー部に所属する高校生である。
また、今年から女性騎馬武者の「未婚の20歳未満」という出場条件が撤廃される。一度は「引退」した20歳以上の既婚女性がまた騎馬武者として参加することで、祭りがより華やかなものになるだろう。
今年は日本ダービーと1週ずれるので、競馬ファンにもぜひ見てもらいたい。
島田明宏
作家。1964年札幌生まれ。Number、優駿、うまレターほかに寄稿。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』(2011年度JRA賞馬事文化賞受賞作)など多数。netkeiba初出の小説『絆~走れ奇跡の子馬~』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリーシリーズ第6弾『ブリーダーズ・ロマン』。プロフィールイラストはよしだみほ画伯。バナーのポートレート撮影は桂伸也カメラマン。
関連サイト:島田明宏Web事務所