2025年04月13日(日) 18:00 224
▲弥生賞で今年2つ目の重賞タイトルを獲得した杉原誠人騎手(撮影:下野雄規)
暮れのホープフルS、前走の弥生賞と2走連続で「向正面からのまくり」で好走し、大きなインパクトを残したファウストラーゼンが皐月賞に参戦します。
鞍上の杉原誠人騎手は、今年ここまでJRA重賞2勝と好調。そこには師匠・藤沢和雄元調教師の下で得た"財産"が生かされてるといいます。そんな時に出会ったファウストラーゼン。相棒との皐月賞に向けて話を伺うと「まさかクラシックでも騎乗できるとは…」と本音を打ち明けながらも、内に秘めた強い思いを語ってくれました。そして、気になる本番での"乗り方"とは──。
(取材・文=小野響介)
──今年は既に重賞2勝と勢いに乗っていますが、好調の要因はどうお考えですか?
杉原 特に変わったことをやっているつもりはありません。いつも通りです。ただ、毎年、早くに重賞を勝ちたいという気持ちでやっていて、今年は1月の小倉牝馬Sをシンティレーションで勝つことができました。それが自分の中で自信につながっています。小倉に滞在していない中でも騎乗依頼をいただいたので、結果を出さなければならないと思ったし、勝った時はうれしかったです。
──15年目になって、変わったことはありますか?
杉原 自分の場合は藤沢(和雄)厩舎に所属している時と今で環境が変わりました。厩舎に所属しているときは藤沢厩舎で学ぶことは多くあったし、いい馬にもたくさん乗せてもらいました。GIをたくさん勝つ馬の背中や、クラシックに臨むまでの調教過程を経験したことはすごく勉強になりました。それがなくなったことで、今度は自分でやっていかなければならない。そこは大きな違いですね。
──藤沢厩舎はどんな存在でしたか?
杉原 藤沢厩舎で学んだことは大きな財産です。あと、藤沢先生のもとでやってきたことで、信頼されるというか、そういう目で見てくれるところがあって、それも大きいです。所属している時から思っていたことですが、解散して改めて藤沢先生はすごいと思いました。今では藤沢厩舎で学んだことを他の馬に生かしています。そういうところもあって、自分がレースに乗らない馬の追い切りに騎乗することがあります。GIに出走するときのスターズオンアースやブレイディヴェーグなどがそうでした。
▲藤沢厩舎での日々が今に生きている(c)netkeiba
──そこに関してはどうお考えですか?
杉原 それは藤沢厩舎の馬に騎乗していたことが評価されて依頼してくれたのだと思っています。レースでは騎乗しないけど、それもありがたいです。勉強になるし、自分の引き出しが増えますからね。調教とはいえ、これまで走る馬にたくさん乗ってきました。過去の馬と比較しながら、自分なりに考えて調教に騎乗することは、スキルアップにつながると思っています。
──その馬のレースを見てどう思いますか?
杉原 変な感情はありません。ただ、調教とレースは違うので、レースではどんな感じなのだろうとは思います。勝ったら素直にうれしいです。自分のやったことが間違いではなかったという証明にもなりますからね。あとはレースでも騎乗依頼をしてもらえるような騎手にならなければという気持ちにもなります。
──クラシック挑戦となります。今の心境はどうですか?
杉原 これまでの感じから、自分がクラシックに騎乗できることになると思っていませんでした。想像もできなかったし、そういう立場ではなかったですからね。弥生賞を勝って皐月賞に乗れるのはうれしいです。オーナー、先生、みんなに感謝です。ありがたいです。ただ、クラシックだからといって変わることはありません。やることはいつもと同じで、どうすれば勝てるかを考えて乗るだけです。いつもより緊張するかもしれませんが。
▲「オーナー、先生、みんなに感謝です」(c)netkeiba
──パートナーのファウストラーゼンはホープフルSが初騎乗でした。その時の印象はどうでしたか?
杉原 ホープフルSの追い切りに騎乗したとき、心肺機能が高く、すごいスタミナがあると感じました。長くいい脚を使える。GIでもやれそうな手応えはありました。
──レースは途中からまくって3着でした。
杉原 あの時はゲートを出たあとに他馬と接触してスイッチが入ってしまった。初ブリンカーだったし、冷静さを欠いていたので、それならば行こうと思いました。調教に騎乗して、長くいい脚は使えると感じていたし、レース前にオーナー、先生と相談して、選択肢の一つとしてまくる競馬はありました。結果的にあの形でもしぶとさを見せてくれました。
──弥生賞もまくる競馬で勝利をつかみました。
杉原 弥生賞も1週前追い切りに騎乗して、その時はいい時計(6F81秒4-65秒7-50秒8-36秒1-11秒4)を出したけど、追い切りが終わったあとでも息は上がらずに平気な顔をしている。普通キャンターを走ったくらいの感じです。すごいなと思いました。レースも直線を向いた時、2着馬に交わされて、このまま下がってしまうのかなと思ったけど、坂を上がってからまた伸びてくれた。改めて能力の高さを感じました。
▲弥生賞レース後にはガッツポーズも(撮影:下野雄規)
──2戦続けてまくる競馬をして結果を出しました。
杉原 同じように見えるけど、乗っている感じは違います。ホープフルSの時は行きたがるそぶりを見せていたので、その流れで行かせたけど、弥生賞は平常心でレースを進めて、こちらの指示に応えて行きましたからね。この違いは大きいです。
──皐月賞はどう乗りますか?
杉原 まくりにこだわっているわけではありません。枠順、馬の並び、ペースによってレースは変わります。リズムを大事にして、ファウストラーゼンの力を信じて乗るだけです。その中での選択肢の一つとしてまくる競馬はあります。
──最後に意気込みをお願いします。
杉原 ファウストラーゼンがGI馬になれるように自分のできることをしっかりやるだけです。
(文中敬称略)
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netkeiba特派員
ジョッキーや調教師など、毎週“旬”な競馬関係者にインタビュー。netkeiba特派員がジョッキーや調教師、厩舎スタッフなど、いま最も旬な競馬関係者を直撃。ホースマンの勝負師としての信念から、人気ジョッキーのプライベートまで、ここだけで見せてくれる素顔をお届けします!