2025年04月14日(月) 18:00 33
桜花賞は単勝オッズ5.0倍(3番人気)のエンブロイダリーが優勝(c)netkeiba
netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)
AIマスターM(以下、M) 先週は桜花賞が行われ、単勝オッズ5.0倍(3番人気)のエンブロイダリーが優勝を果たしました。
伊吹 着差以上の完勝と言っても良いのではないでしょうか。スタート自体はそれほど良くなかったものの、序盤から積極的に先行勢を追いかけ、9番手前後のポジションで3コーナーから4コーナーを通過。ゴール前の直線入り口でやや外めに持ち出し、逃げたエリカエクスプレス(5着)らを捕らえにかかっています。内回りコースとの合流地点あたりではまだ周囲の馬に進路を遮られていましたが、そこから馬群を縫うように伸び、残り200m地点のあたりで外から差してきたアルマヴェローチェ(2着)との一騎打ちに。決勝線の手前でじわじわと差を詰められながらも、クビ差のリードを保って入線しました。アルマヴェローチェやリンクスティップ(3着)は比較的にスムーズに馬群の外へ出せていたわけですし、この2頭の追撃を凌ぎ切った点は高く評価して良いはず。終始的確にエスコートしたJ.モレイラ騎手も、力強い走りでそれに応えたエンブロイダリーも、お見事と言うほかありません。
M ちなみに、このエンブロイダリーは前回の当コラムでAiエスケープが推奨していた馬です。
伊吹 こちらも素晴らしい見立てでしたね。エンブロイダリーはデビュー3戦目のサフラン賞で単勝オッズ1.2倍(1番人気)の支持を集めながらも5着に敗退。その時以来の右回りである点を不安視する向きもありましたが、Aiエスケープはそれがまったくの杞憂であることを見抜いていたのでしょう。この春は注目馬がコンスタントに好走を果たしている印象ですから、ビッグレースが続く今後も引き続き期待して良いのではないかと思います。
M もちろん、エンブロイダリーの今後も楽しみです。
伊吹 3代母が1995年の阪神3歳牝馬Sを制したビワハイジで、近親に2005年菊花賞2着のアドマイヤジャパン、2007年の日本ダービーで3着に食い込んだアドマイヤオーラ、2009年のオークスなどを勝ったブエナビスタらがいる血統。母のロッテンマイヤーも3歳時に忘れな草賞で優勝を果たしていますし、中長距離をそれなりにこなす可能性は高いと見て良いかもしれません。GI初出走初制覇の快挙を成し遂げた森一誠調教師がこの先どう育てていくのかも興味深いところ。次走以降はこれまで以上に注目が集まるでしょうから、レースごとに的確な評価を下すことができるよう、動向をしっかりチェックしていきましょう。
M 今週の日曜中山メインレースは、日本ダービー・菊花賞と続いていくクラシック戦線の第一関門、皐月賞。昨年は単勝オッズ4.8倍(2番人気)のジャスティンミラノが優勝を果たしました。ちなみに、その2024年は単勝オッズ15.8倍(7番人気)のコスモキュランダが2着、単勝オッズ6.1倍(3番人気)のジャンタルマンタルが3着で、3連単の配当は2万9240円にとどまっています。
伊吹 2017年が3連単106万4360円、翌2018年も3連単37万2080円の高額配当決着だったものの、2019年以降の過去6年に限ると、3連単の配当は平均値が3万3313円、中央値が2万7775円。最近は大きく荒れていませんね。
M 過去10年の単勝人気順別成績を見る限りだと、人気薄の馬もそれなりに健闘しているのですが……。
伊吹 単勝7番人気から9番人気の馬が2015年以降[3-3-2-22](3着内率26.7%)だった一方で、単勝10番人気以下の馬は2015年以降[0-0-1-81](3着内率1.2%)でした。なお、2019年以降の過去6年に限ると、単勝3番人気以内の馬は[5-2-4-7](3着内率61.1%)、単勝4番人気から単勝8番人気の馬は[1-4-2-23](3着内率23.3%)、単勝9番人気以下の馬は[0-0-0-57](3着内率0.0%)となっています。単勝二桁人気クラスの伏兵が上位に食い込む可能性はかなり低いと見るべきでしょう。
M そんな皐月賞でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、サトノシャイニングです。
伊吹 面白いところを挙げてきましたね。それなりに支持が集まりそうな存在で、この馬をどう評価するかが買い目作りのポイントになりそう。
M サトノシャイニングは前走のきさらぎ賞を完勝している実績馬。2走前の東京スポーツ杯2歳Sでも、勝ったクロワデュノールと3/4馬身差の2着に食い込んでいます。そのクロワデュノールが断然の1番人気となりそうな状況ですから、関係が深いこの馬も目が離せません。
伊吹 クロワデュノールを軽視する方針ならばまた話は別でしょうけど、それなりに有力と見ているのであれば、次に検討しなければならないのはこのサトノシャイニングを重視するか否かですよね。そして、Aiエスケープは重視した方が良いと見ている模様。この見解を前提に、好走馬の傾向とサトノシャイニングのプロフィールを見比べていきましょう。
M 最大のポイントはどのあたりだと考えていますか?
伊吹 まずは出走数をチェックしておきたいところ。2020年以降の3着以内馬15頭中14頭は、キャリア4戦以内でした。
M なるほど。キャリアが豊富過ぎる馬は強調できませんね。
伊吹 出走数が5戦以上だったにもかかわらず3着以内となったのは、2024年2着のコスモキュランダのみ。今年の該当馬も疑ってかかるべきでしょう。
M キャリア3戦のサトノシャイニングにとっては心強い傾向です。
伊吹 あとは関東圏のレースにおける実績も重要。同じく2020年以降の3着以内馬15頭は、いずれも“東京・中山の、重賞のレース”において“着順が2着以内、かつ上がり3ハロンタイム順位が6位以内”となった経験のある馬でした。
M こちらもなかなか興味深い傾向。重賞で連対したことのない馬はもちろん、関西圏やローカルの重賞でしか連対していない馬もまったく上位に食い込めていません。
伊吹 近年に限ると、牡馬が出走できる2歳ならびに3歳の重賞は、東京や中山で施行されるレースの方がハイレベルになりやすいのだと思います。
M 先程も触れた通り、サトノシャイニングは昨年の東京スポーツ杯2歳Sで2着となった実績がある馬。こちらも強調材料のひとつと見て良いのではないでしょうか。
伊吹 さらに、同じく2020年以降の3着以内馬15頭中13頭は、前走のコースが東京芝1800mか中山芝2000m内でした。
M 思いのほかはっきりと明暗が分かれていますね。
伊吹 ちなみに、前走のコースが東京芝1800m・中山芝2000m内以外、かつ前走のレースが朝日杯FS以外だった馬は2020年以降[0-0-1-43](3着内率2.3%)。今年も関西圏のレースやスプリングSをステップに臨む馬は割り引きが必要です。
M サトノシャイニング陣営はきさらぎ賞からの直行を選択。残念ながらこの条件はクリアできていません。
伊吹 正直なところ、私は別の馬を連軸に据えるつもりでした。もっとも、前走の着順が1着、かつ前走の2位入線馬とのタイム差が0.2秒以上だった馬は2020年以降[4-5-2-14](3着内率44.0%)。圧勝した直後の馬は比較的堅実ですし、無理に嫌う必要はないでしょう。実際のオッズなども踏まえたうえで、この馬をどれくらい厚く買うか改めて検討したいと思います。
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伊吹雅也
競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。