ダブルハートボンドがチャンピオンズC制覇 “高速ダート”で威力を発揮する血統背景を解説

2025年12月08日(月) 18:00

血統で振り返るチャンピオンズC

【Pick Up】ダブルハートボンド:1着

 キズナ産駒は芝はもちろんダートでも優れた成績を挙げています。中央ダートと地方競馬を総合した全日本ダート種牡馬ランキングは、今年、ドレフォンに次ぐ第2位。京浜盃→羽田盃→東京ダービーと3連勝したナチュラルライズもキズナ産駒です。

 キズナは「ディープインパクト×ストームキャット」という組み合わせ。これはフォーエバーヤングの父リアルスティールと同じです。ディープインパクトは産駒の勝ち星の90%を芝で挙げているので、キズナ産駒やリアルスティール産駒のダート適性は、母の父ストームキャットに由来する部分が大きいと思われます。ストームキャットは1990年代から2000年代にかけて活躍した北米の大種牡馬です。

 ディープインパクトの父サンデーサイレンスは芝向きですが、もともとアメリカで育まれた血なのでダート血統との親和性が高く、その融合はとくに高速ダートで威力を発揮します。フォーエバーヤングが先日のBCクラシックで計時した2分00秒19は、日本産馬がダート10ハロンで走った歴代最速タイム。このスピード能力がなければBCクラシックを制覇することは難しかったでしょう。ダブルハートボンドが前走みやこSで記録したダ1800m1分47秒5という日本レコードも、脚抜きのいいダートに強いキズナ産駒の持ち味が発揮されたものではないかと思います。

 母パーシステントリーはパーソナルエンスンS(米G1・ダ10ハロン)の勝ち馬。3代母ヘヴンリープライズは米G1を8勝し、米最優秀3歳牝馬にも選出された名牝です。ノーザンファームは毎年アメリカの繁殖牝馬セールで高額馬を多数落札していますが、こうしたたゆまぬ投資は、わが国のダート競馬のレベルを間違いなく上げたといえるでしょう。その果実がフォーエバーヤングでありダブルハートボンドです。

血統で振り返るステイヤーズS

【Pick Up】ホーエリート:1着

 ルーラーシップ産駒は今年、ソウルラッシュのドバイターフ(G1・芝1800m)を含めて重賞4勝。日本国内ではヘデントールが天皇賞(春)とダイヤモンドSを、ホーエリートがステイヤーズSを制覇しました。

 芝3200m以上の平地重賞は日本で3レース組まれています。ルーラーシップ産駒はそのすべてを制したことになります。同一種牡馬の仔が同一年に芝3200m以上の平地重賞を完全制覇したのは、グレード制が導入された1984年以降初めてです。

 ホーエリートとヘデントールはいずれも「ルーラーシップ×ステイゴールド」という組み合わせ。ステイゴールドはオルフェーヴル、ゴールドシップ、フェノーメノをはじめ優れたステイヤーを送り出したスタミナ型の種牡馬だったので、この適性もうなずけます。

 ホーエリートは中山牝馬SやフラワーCで2着となるなど、小回りの中山芝では[2-2-0-2]と好成績を挙げています。少なくとも牝馬同士であれば中距離重賞でも勝ち負けに持ち込める能力を備えているだろう、と思います。

知っておきたい! 血統表でよく見る名馬

【ジャングルポケット】

 エアグルーヴと並ぶトニービンの代表産駒。現役時代に日本ダービーとジャパンCを制覇しました。アグネスタキオン、クロフネ、マンハッタンカフェと同い年というレベルの高い世代にあって、東京芝2400mで行われる二大レースを勝った実力は高く評価できます。

 種牡馬としても成功し、トールポピー(オークス、阪神JF)、オウケンブルースリ(菊花賞)、アヴェンチュラ(秋華賞)、トーセンジョーダン(天皇賞(秋))、ジャガーメイル(天皇賞(春))、クィーンスプマンテ(エリザベス女王杯)をはじめ多くのGI馬を出しました。シャトル先のニュージーランドでは同国のオークス馬ジャングルロケットを出しています。

 1800m以上を得意とする芝向きのスタミナタイプで、大レース向きの底力と成長力がセールスポイント。父系を伸ばす力には欠けていましたが、良質なスタミナ血統だけに、母方に入って良質な影響をおよぼすことが期待できます。母の父としてはビザンチンドリーム、サクセスエナジー、ミッキースワロー、フルデプスリーダーなど、芝・ダートを問わず活躍馬を出しています。

血統に関する疑問にズバリ回答!

「ダート限定の2025年JRA2歳勝利数ランキングは?」

 12月7日終了時点では以下のとおりです。

1位 ルヴァンスレーヴ     15
2位 クリソベリル       9
3位 ナダル          7
4位 ミスチヴィアスアレックス 7
5位 パイロ          6

 現2歳が2世代目となるルヴァンスレーヴが15勝を挙げて独走しています。新馬戦-プラタナス賞を連勝したテイエムキハク、ダートグレード競走のJBC2歳優駿を勝ったタマモフリージアが出世頭です。新種牡馬のクリソベリルは、早熟型でもスピード型でもないので出足は鈍かったのですが、シーズンが深まるにつれて本領を発揮して2位に上昇しています。3位ナダルは新種牡馬だった昨年、ダートのみで27勝を挙げたのですが、今年は大きく勝ち星を減らしています。4位ミスチヴィアスアレックスは日本軽種馬協会静内種馬場に繋養されている新種牡馬。大種牡馬イントゥミスチーフの息子で、スピードを活かして大健闘しています。5位パイロは毎年安定して好成績を挙げています。新馬戦-もちの木賞を連勝したパイロマンサーが代表格です。

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栗山求

netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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