メルボルンC展望

2006年10月31日(火) 23:52

 豪州最大の競馬の祭典メルボルンC(G1・3200m)の発走が、11月7日(火曜日)に迫っている。「マカイビーディーヴァによる3連覇達成、表彰式における突然の引退発表」という、涙ちょちょ切れものの感動シーンが展開されてから早1年。今年はどんなドラマが待ち受けているのだろうか。

 欧州各社のブックメーカーの前売りオッズで、1番人気に推されているのが、愛国のリーディングトレーナー、エイダン・オブライエンが送り込む5歳馬イエーツだ。2歳の頃から素質を高く評価されていた馬だが、本格化したのは古馬になってからで、昨年6月にエプソムのコロネーションCを制してG1初制覇。更に5歳となった今季は、6月のロイヤルアスコットで20FのG1ゴールドCに優勝と、すっかり欧州のトップステイヤーの地位に登りつめた。愛国や仏国同様に、豪州もキアラン・ファーロンの騎乗を許可したため、主戦騎手が手綱を握れるのも心強い。02年のメディアパズル以来4年ぶりの欧州馬による優勝がなるか。

 続く2番人気が、10月21日にコーフィールドで行われた前哨戦のコーフィールドC(G1・2400m)を制した4歳馬トウキートだ。北米産馬で、03年のタタソールズ・ホウトンセールに上場され、ハムダン殿下のシャドウェル・スタッドが10万ギニーで購入。英国のトップトレーナーのひとり、ジョン・ダンロップ厩舎からデビューしたトーキート。英国時代は、セントレジャー3着等の実績を残したものの、重賞を勝つことは出来ず、今年から豪州に移籍。移籍後5戦目となった10月7日のメトロポリタンH(G1・2400m)で、豪州初勝利と重賞初制覇をタブルで達成。続くコーフィールドCでG1連覇を果たした。ハムダン殿下の所有馬で、欧州から移籍して、豪州ではデヴィッド・ヘイズ師が管理するというのは、94年のメルボルンC勝ち馬ジューンと全く同じパターンで、陣営は当然のことながら、12年前の再現を狙っている。

 そして,これに続く3・4番人気が、ポップロックとデルタブルースという、われらが日本勢である。両馬とも本番前の試走として10月21日のコーフィールドCを使われ、デルタブルースが3着でポップロックが7着。ただし、勝ったトウキートから7着のポップロックまで、着差はいずれも「頭」「首」で、日本馬2頭はともに非常に印象的なレースをしたと、レース後の現地での評判はすこぶる芳しいものであった。

 ポップロックの方がデルタブルースよりも人気が上というのは、日本のファンにとってはいささか腑に落ちないところがあるが、親しい現地の記者に聞くと、(1)53kgという軽ハンデで出られること、(2)地元の名手ダミアン・オリヴァーが乗ること、の2点がその背景にあるようだ。特に大きいのが(2)のファクターで、オリヴァーがレギュラーで寄稿しているコラムで、ポップロックを絶賛したことで、人気に拍車がかかったようだ。

 なおコーフィールドCのレース後、右後肢に外傷を負って引き上げてきたと伝えられたデルタブルースだが、陣営によると、表皮の一部を浅くカットした程度の傷で、心配するほどのことではなかったそうである。

 この他、昨年のG1コーフィールドC勝ち馬レイリングス、昨年のG1マッキノンS・2着馬で、今季もG1ターンブルSで2着に来ているアワスモーキングジョー、G1クレイグリーSの3着馬で、52.5kgという軽ハンデが魅力のジッピング、昨年のメルボルンCの2着馬オンナジューン、G1メトロポリタンHの2着馬アクティヴェイション、今季のG1オーストラリアンダービー勝ち馬ヘッドターナーなど、さずがに役者は多彩で、興味深い1戦となるのは間違いなさそうだ。

 レースの模様は、グリーンチャンネルで生中継(12時30分から、発走時刻は日本時間13時)されるので、ぜひ御注目いただきたい。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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