2006年11月21日(火) 23:52
先週末、この11月1日からオールウェザーによる開催をスタートさせたばかりのハリウッドパークから、そのオールウェザーの馬場状態に関して騎乗者からクレームがついたというニュースが飛び込んできた。調教師にも騎手にも大変評判が良く、実際に9月に敷設されてからここまで何の問題もなく使用されてきたハリウッドパークのオールウェザー・トラックに、いったい何が起きたのか。
異変が起り始めたのは、ナイター競馬を開催中だった、先週金曜日(17日)夜であった。この日のハリウッドパーク周辺は、夜になるとカリフォルニアとは思えぬほど気温が下がり、しかも霧が立ち込めるという気象条件だったのだが、レースが進行するにつれて、コースの表面が波うちはじめ、表層である人工素材の厚い部分と薄い部分が生じてきたのだという。この状態は、翌日になっても解消されず、土曜日(18日)の午後開催が終了する頃には、騎乗者たちから「レースが安全に出来ない」とクレームがつく事態となったのだ。
ハリウッドパークの馬場保全係は、土曜日の夜を徹して補修に努めたが、一方で、この夜も気温が低くて霧が出るという、前夜と同じような気象条件となり、遂に日曜日の朝、早くに馬場入りした馬の1頭は調教中に故障を発症。馬場の路面に出来た起伏が原因かどうかは定かではなかったが、午前7時30分の段階でオールウェザー・トラックを閉鎖。再度補修に努めるという状態に追い込まれたのであった。
競馬場側の説明によると、原因はコースのメンテナンスに使用しているハローがけ用機材の不調とのこと。気温が急激に下がった金曜日夜、本来ならば馬場を均す役割を果たすべきハローがけ車のフロント・ローラーに、人工素材が付着。付着した素材は、ある一定の付着量を越えると、そこで一気に地表に落下し、落下が終わると再び付着が始まり、ある地点まで進むと再び付着素材が落下、という現象を繰り返したため、ハローがけ車の移動にともない、路面には一定の間隔で、落下した付着素材の山が出来てしまった、というわけなのだ。
日曜日午前、ハリウッドパークの馬場保全係は総出で、機械の手を借りずに馬場を補修。午後に入ってすぐに、数頭の馬を使ってテストレースを行い、ここでようやくゴーサインが出されて、第1Rの発走時刻を40分遅れの1時10分とした上で、19日(日曜日)の開催を予定通りオールウェザー・トラックを使用して行うことを決めた。
気温の低下と、フロント・ローラーへの素材付着との間に、どのような因果関係があり、どのようなメカニズムで発生した現象なのかは、現在も調査中である。オールウェザー・トラックはどこでも大好評を博している一方、新しい素材だけに未知の部分も多く、ハリウッドパークに限らず、今後も予期せぬアクシデントが起る可能性は否定出来ないと見るべきだろう。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。