2007年07月03日(火) 23:50
世界のブラッドストックマーケットは、いよいよ、昨年春に産まれた1歳馬たちが上場される「イヤリングセール」の季節に突入しようとしている。
皮切りになるのが、7月16日・17日の両日、アメリカのケンタッキー州レキシントンで開催される「ファシグティプトン・ケンタッキー・ジュライ・イヤリングセール」だ。かつては、ほぼ同じ時期に開催されていた「キーンランド・ジュライ」の影に隠れて、口の悪い連中は『裏せり』などと呼んでいたが、キーンランド・ジュライが消滅して以降は、マーケットとしての地位がめきめき上昇。06年は遂に最高価格がミリオン(100万ドル)を超え、完全にプレミア市場としての位置づけを確立している。
今年の上場馬も、なかなかの粒揃いと評判だ。
上場番号142番の父ピースルールズの牡馬は、アルゼンチンで3つのG1を制して年度代表馬となったセカンドリアリティーの弟だ。現役時代、G1ハスケル招待やG1ブルーグラスSを制した父ピースルールズ(その父ジュールス)にとっての、初年度産駒の1頭である。
上場番号165番の父スパイツダウンの牡馬は、G1サンタアニタH2着、G1ピムリコスペシャル2着などの成績を残し、古馬のトップ戦線で活躍したウェスタンプライドの弟にあたる。現役時代、BCスプリントを制してエクリプス賞スプリントチャンピオンとなった父スパイツタウン(その父ゴーンウェスト)にとって、初年度産駒の1頭となる。
上場番号180番の父ジョハーの牡馬は、母がG1サンタマルガリータH勝ち馬トダウナダマだ。現役時代、ハイチャパラルとデッドヒート(同着)でBCターフを制した父ジョハー(その父ゴーンウェスト)にとって、初年度産駒の1頭となる。
上場番号240番の父ライオンハートの牡馬は、母がチリで2歳牝馬チャンピオンの称号を獲得したベラデキノッティだ。現役時代、G1ハスケル招待や2歳G1のハリウッドフューチュリティを制している父ライオンハート(その父テイルオヴザキャット)にとって、初年度産駒の1頭となる。
上場番号281番の父タピットの牝馬は、G1スピンスターS勝ち馬パンパードプリンセスの妹にあたる。現役時代、G1ウッドメモリアルS等を制した父タピット(その父プルピット)にとって、初年度産駒の1頭となる。
上場番号363番の父イードバイの牡馬は、G1ヘムステッドH勝ち馬シスターアクトの弟にあたる。現役時代、G2サバーバンHなどを制している父イードバイ(その父ミスタープロスペクター)にとっては、3世代目の産駒となる。
上場番号496番の父ゴールデンミシルの牡馬は、兄に昨年のG1ブリーダーズ・フューチュリティ勝ち馬グレートハンターがいる。現役時代、G1ピムリコスペシャルなどを制し、父となってG1ガゼールH勝ち馬インザゴールドらを輩出している父ゴールデンミシルにとっては、5世代目の産駒となる。
ここまで、母や兄姉に顕著な活躍馬のいる目ぼしい上場予定をリストアップしてきたが、既にお気づきのように、その多くが新種牡馬の産駒である。ここまで名前の挙がった馬以外にも、03年の全米2歳チャンピオン・アクションディスデイ(その父クリスエス)、生涯通算6戦6勝,うち3つがG1という成績で引退したキャンディライド(その父ライドアレイルス)、BCクラシックとドバイWCという、ダートの世界2大タイトルを獲得し04年の3歳2冠馬スマーティージョーンズ(その父イルーシヴクオリティ)らの初年度産駒が上場を予定しており、バイヤーたちがどんな評価を下すかが注目される。
いずれにしても、今年今後の1歳馬市場がどのように動いていくのか、占う意味でも見逃せないセールとなりそうだ。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。