セレクトセール2007

2007年07月10日(火) 23:45 0

 9日(月曜日)より始まった今年のセレクトセールは、初日に1歳馬、2日目と3日目の両日に当歳馬が上場される日程である。今、これを書いているのは2日目(当歳)が終了したところで、まだ途中経過でしかないのだが、大方の予想通り今年も社台グループの販売力は圧倒的だ。

マイケイティーズの2007その1

 簡単に初日(1歳)を振り返ると、150頭が上場され108頭が落札。総売り上げは32億8440万円。昨年よりも微減(34億1400万円)だが、売却率は約6%上回った。最高価格馬は117番「マイケイティーズの2006」(父フレンチデピュティ、母の父サンデーサイレンス、牡栗毛、ノーザンファーム生産)で2億5000万円(税抜き)。半兄のアドマイヤムーンを所有する近藤利一氏が落札した。

 次いで52番「エアグルーヴの2006」(父ダンスインザダーク、母の父トニービン、牡黒鹿毛、ノーザンファーム生産)の2億4500万円(税抜き)。金子真人ホールディングス(株)が落札。その他、1億円を超えたのは2頭(43番「エヴリウィスパーの2006」ジャングルポケット牡、1億7000万円、31番「フサイチエアデールの2006」クロフネ牡、1億4000万円、いずれも税抜き)の計4頭。すべてノーザンファームの生産馬という独壇場であった。

 昨年もそうだったが、今年もまた社台グループと非社台との格差をまざまざと見せつけられた感が強い。42頭の不落札馬のうち、6頭が社台グループ、残り36頭が非社台という構図だ。ざっと数えたところ(間違いがあるかも知れないが)では、社台グループが66頭上場(3頭欠場)で60頭の落札。売却率は90%。一方の非社台は84頭上場(43頭欠場)で48頭の落札。売却率57%。おそらく、落札馬の平均価格は、とんでもない格差になっているだろうと思われる。

 市場を見学していて感じるのは、同じ程度の馬体と血統でも、ブランドの違いがかなり顕著に現れるということ。総じて社台グループの上場馬は食いつきが良く、非社台の上場馬は苦戦を強いられる場面が目立った。こうした印象は2日目の当歳に移行しても変わらなかった。

 「当歳馬になぜここまで大金を投じることができるのか」とは市場の内部でよく耳にする台詞だが、おそらくここで目当ての馬を落札する方々は、そんなことは先刻承知の上だろう。要するに、VIPな購買者は、「この市場に参加すること」に意義を見出しているのである。そして、これはという素材には億を超える価格をつける。「元が取れるかどうか」などという心配は、“野暮”なのかも知れない。日高で開催される市場と決定的に異なるのはおそらくこういうところである。

 ところで、初日に仄聞したところによれば、セレクトセールに取材申し込みをしたマスコミ関係者は計200人にも及んだらしい。そのせいか、例年にも増してプレス章を首からぶら下げた取材陣が多かった。日高には来なくとも、ここには必ず来る、という人が少なくないことと、「仕事ではなくプライベートでやってきた」人々もまたかなりの数に及ぶはずだ。毎回、高額馬が続出し、今では一種の見世物にさえなっている。「とりあえずここだけは覗いておかなければ」という思いに駆られるのだろうか。

撮影風景

 そうした現実をまざまざと見せ付けられるのが、恒例の「記念撮影」の現場だ。カメラマンだけでもおびただしい数になっており、とりわけ高額馬が出現すると落札価格に比例するように撮影者が激増する。その結果、良いポジションで撮りたくとも撮れないカメラマンが続出し、業務に支障を来たす例も出てきている。

カメラマン達

 取材者に規制をかけても、その一方でどう見ても部外者にしか見えないような人々がかなり混入しているのはどうしたものか。他の市場では絶対に見られないような光景で、セレクトセールらしいといえばそれまでだが、今後の課題の一つだろう。

 2日目、飲食ブースで熟年女性4人組を目撃した。どこからか紛れ込んできたこの方々は、大胆にもテーブル上に飲み物を10数本も並べて牛飲馬食していた。「無料サービスなので抱えられるだけ受け取ってきた」ようにしか見えず、おそらく大半は持参したバッグの中に入れられ「持ち帰り」されたものと思われる。

 「見学&昼食」だけのためにここを訪れているのは私も似たようなレベルなのであまり偉そうなことは言えないものの、明らかに場違いな雰囲気を漂わせているこういう人々をどのように扱うか、もまた今後の課題なのかも知れない。

マイケイティーズの2007その2

 なお、2日目の当歳では288番「マイケイティーズの2007」(父クロフネ、牡芦毛)が3億円ちょうどで落札され、目下これが二日間を通じての最高価格である。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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