北米2歳トレーニングセールに変革

2007年07月24日(火) 23:50

 北米における2歳セールのプレミア・マーケットとしてすっかり定着した「ファシグティプトン・コールダー2歳トレーニングセール」の、08年の開催日程が発表になったが、これまでとは異なるフォーマットで行われることになり、関係者の間で話題となっている。

 来年のコールダーセールの開催は、3月4日(火曜日)。2月最後の火曜日か3月最初の火曜日という近年に開催日程に添ったもので、これは通常通りである。

 ところが、上場馬が追い切りを披露する「公開調教」が2月29日(金曜日)に組まれ、追い切りはこれ1本だけという日程は、これまでにないパターンとなっている。

 春に行われる主要2歳セールと言えば、追い切りは2回行われるのが定番だ。かつては、セール前日と、その1週間前が公開調教の日となっていたが、2度目の追い切りが終わってからレントゲン撮影を含めた獣医検査を行う購買者が増えたため、近年では2回目の追い切りをセールの2日前に設定。1回目の追い切りをその1週間前に行うというのが、主な2歳セールにおける日程となっていた。

 ところがここ2、3年、ある問題が発生していた。2回目の追い切りを行わない上場馬が、急増したのである。コールダーセールを例にとると、07年の場合、1回目の追い切りに登場した馬が244頭いたのに対して、2回目の公開調教で馬場入りした馬は151頭。最終的に上場された馬は209頭だったから、上場馬の4分の1は2度目の追い切りに出て来なかったことになる。

 そこには、1回目の追い切りである程度の時計を出した馬は、2回目に1回目より劣る動きを見せるぐらいなら、回避した方が得という、コンサイナー側の思惑がある。また、追い切り時計は馬場状態に大きく左右されるため、1回目の追い日が好天になった場合、多くのコンサイナーがそこで勝負をかけることになる。逆に、1回目の追い切りをパスして、2回目の追い切りにかけるケースは、ほとんど無いと言っていい。

 コールダーよりも更にこの傾向が顕著なのが、4月に行われるキーンランド・エイプリルで、07年の場合、1回目の追い切りに出てきた馬が173頭いたのに対して、2回目に出てきたのは101頭。06年などは2度目の追い日が雨になったこともあって、1回目の公開調教では163頭が追いきられたのに対して、2回目に出てきた馬はわずかに37頭と、カタログ記載馬の6頭に1頭しかバイヤーの前で動きを披露しないという事態に陥ったのであった。

 2歳セールは、マーケットとしてここ四半世紀の間に大きく成長。そのプレミア市場ともなれば、日本も含めて世界中から購買者が集まるようになった。だが、遠方から足を運ぶバイヤーにとって、1回目の追い切りから現地に赴くのは極めて困難だ。実馬の走りを目と耳で確認出来るチャンスは2回目の追い切りしかないのだが、ここを回避する馬が続出しては、トレーニングセールの意味がなくなってしまうのである。

 しかして、2歳セールの根幹に関わる問題を抱えこんだ主催者サイドとしては、コンサイナー側とも協議を持ち、解決策を探っていたのだが、まずはファシグティプトン社が先鞭を切って、新たなフォーマットの導入を決めたわけである。

 来年春、公開調教からセールまで延べ5日間という日程が、購買者側にどう評価されるか。その行方が注目されている。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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