2007年08月14日(火) 23:49
先週まではどちらかというと冷涼な気候で推移していた日高だったが、太平洋高気圧が張り出してきた日曜日あたりより、天候が回復すると同時に水銀柱が急上昇し始めた。それも、ちょっと記憶にないくらいの凄まじいばかりの高温なのだ。日曜日(12日)の午後、所用があり出かけた先の牧場では日陰(厩舎の壁)に設置された温度計が32度を指していた。日向とはもちろん気温差があるので、おそらく35〜36度には達していたものと思う。海岸から15kmほど山奥に入ったところにあるその牧場は、周囲を山に囲まれてちょうど盆地のような地形の真ん中にある。風が通らぬ場所とはいえ、この日高で、ここまでの気温になるのを体験したのは初めてかも知れない。目を疑うような数値だった。
翌日(13日)も、ほとんど最高気温は変わらず、またしても35度前後まで気温が上がった。普段涼しいところで暮らしている私たちにこの灼熱地獄はちょっと辛い。わずか2〜3日でもうギブアップ気味である。人間はもちろんのこと、馬たちも今は暑い日中を避けて、夜間放牧に切り替えている牧場が多い。今週末にはピークを過ぎるらしいのだが、突然の本州並みの高温に襲われ、すっかり体調が狂ってしまった。
さて、いよいよ来週月曜日から「サマーセール」が始まる。従来8月上旬に開催されていた市場が様々な試行錯誤の末お盆を過ぎた下旬に移行してから今年で3年目になる。それまではセレクションセールとサマーセールの間隔があまりにも近すぎたため、上場する側はてんてこ舞いとなっていた。だが、それが1か月以上のローテーションとなったことでずいぶん日程的には楽になったことだけは確かだ。その代わり、日高の生産者にとっては夏休みなどなくなってしまったも同然で、「サマーセールが終わるまではとても落ち着かない。お盆だからといってゆっくり休めるような心境にはなれない」とこぼす人が多い。上場予定馬はほとんど昨年と変わらない1306頭。5日間の日程が組まれており、価格や売却率はともかくも、上場頭数としては依然として国内最大の市場なのである。
週刊「競馬ブック」8月4.5日号(7.30発売)には種牡馬別上場頭数一覧表が掲載されており、それによれば、トータル163頭の種牡馬の産駒が上場申し込みしているという。セレクトやセレクションなどではまずお目にかかれないような個性的な種牡馬(の産駒)が登場するのもサマーセールの大きな特長である。
最多上場頭数はバブルガムフェローの41頭。以下、ネオユニヴァース30頭、ジェニュイン、ニューイングランド、マーベラスサンデーの29頭、マイネルラヴ27頭、アドマイヤボス、ステイゴールドの26頭と続く。その他、20頭以上の産駒が上場予定になっているのは、イーグルカフェ25頭、グランデラ20頭、サウスヴィグラス22頭、スウェプトオーヴァーボード20頭、スキャン21頭、チーフベアハート24頭、ティンバーカントリー25頭、プリサイスエンド22頭、ヘクタープロテクター23頭、ホワイトマズル20頭などがいる。
種付け料も手頃で、日高の中小牧場でも十分に手が届くいわば「実用的な種牡馬たち」のラインナップと言えるだろう。こういう層の種牡馬産駒がある程度の成功を収めなければ、日高の生産者はやや辛くなる。
来週は(まだ途中なのだが)サマーセールの模様をお届けする予定でいる。昨年は久しぶりに売却率が30%を上回ったが、気になるのは過去5年間で落札平均価格が徐々に下降してきている点だ。果たして今年はどんな市場になるだろうか。
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田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。