サマーセール開催中

2007年08月21日(火) 23:49

 インフルエンザの余波で、当コラムも「休止」なのかと思いきや、編集部からはまだ何も言われていないので、そのまま「継続」なのだろうと思っている。もちろん、その方が私にとってもありがたい話で、フリーランスの立場なれば休止イコール収入減に直結するのだから、これは結構重要な問題? なのだ。

 さて、そのインフルエンザは、生産地にも押し寄せ、今日(21日)付けで入った連絡によれば、浦河や新ひだか町など4町で4牧場、計7頭の発症が確認されている(8.20に判定された)という。ただ、これが果たして、生産牧場(にいる繁殖牝馬や当歳、1歳など)なのか、それとも、育成牧場で管理している2歳馬以上の現役競走馬なのか、あるいは、その他の乗用馬から出たものか、ということさえ明らかにされていない。何とも不親切と言う以外にないのだが、ここに立ちはだかっているのが「個人情報保護法」であり、目下のところ、それ以上のことはまるで分かっていない。何とも不安感ばかりが募る。

 そんなインフルエンザ発症が影響したものか、20日(月)より始まっている「サマーセール」は今日で全5日間の日程のうち2日間を消化し、かなりの苦戦を強いられている印象が強い。「売れない」「売れても安い」という状況が続き、何ともムードが暗いのだ。

サマーセール1

 初日は好天に恵まれたが、終わってみれば224頭の上場で、60頭が落札され、売却率26.78%。売却総額は2億4654万円(税込み)。2日目は時折雨の降るあいにくの天候となったものの、やや持ち直して、237頭の上場で73頭が落札。売却率30.8%、売り上げは3億7338万円となった。

サマーセール2

 昨年の同市場における初日、2日目の成績と比較してみると、上場頭数では7頭の増加、落札頭数が12頭の減少、売却総額では現在のところマイナス1億7514万円ほどの数字である。やはり、セレクトセールやセレクションセールとの落差は甚だしく、血統も実馬も平凡な素材は(実はそういう馬が多いのだが)ほとんど期待が持てないような市場になってしまっている。

 従来、比較的廉価な馬を買い求めていた地方競馬関係者も総じて元気がなく、今年に限ったことではないが、サマーセールの主役を務めるのは、JRAとビッグレッドファームの岡田繁幸氏しかいない。明日以降、まだ3日間の日程を残しているものの、果たしてどこまで昨年並みの水準に近づけられるものか、いささか不安である。

 2日間とも市場内部でセリを見たが、どうも購買者がセリ落とそうとする価格と、生産者が上場する際の希望最低価格とが以前より増して「乖離」してきている印象が強い。

サマーセール3

 馬が登場し、馬の番号と馬名などがアナウンスされ、そこからセリがスタートするわけだが、鑑定人が「お台付け価格」を場内に向けて発声する前に、どこからかひどく安目の価格がまず提示される。それはサインの場合もあれば、声で意思表示される場合もあり、いろいろだが、例えば「350万円」というお台付け価格の馬に「150万円」などという落札希望の意思表示があれば、鑑定人は傍らの販売申込者(多くは生産者である)の意思を確認する作業から始まるのである。

 350万円が希望最低価格とされている馬に150万円では、常識的に考えて折り合う話ではないが、そこで生産者は弱気になる場合が多い。すなわち「もし、突っぱねて350万円からセリをスタートしたとして、果たしてそれを上回る金額で競りかけてくる購買者がいるものか?」と判断に苦しむのだ。

サマーセール4

 しばし、そこで鑑定人との間でやりとりをした後、やむなく、件の150万円という希望額を提示した購買者に譲歩し、「それではその金額からスタートして下さい」と、生産者側が折れるケースが多いのである。

 自分の生産馬に自信が持てないのか? と感じる向きもあろうが、その通り、「自信がない」生産者が多いため、「売れないよりはまし」とばかりに叩き売りのような金額で落札されるケースが少なくない。

 もちろん、150万円からのスタートで、競りかけてくる購買者が複数存在すれば、自然と価格は吊り上る。場合によっては、当初のお台付け価格を上回るところまで価格が上昇するケースも稀にある。しかし、多くは一声で安く買い叩かれて終わり、なのだ。

 サマーセールでは、ほんの一握りの上質馬を除けば、日高に数多くいる普通の馬たちがいかに「買い手市場」であるのかを実感できる。ともあれ、後3日間の巻き返しに期待したいところだが、それにしても、行き合う友人知人がみんなインフルエンザのことを話題にする最悪の市場日程となってしまったことだけは確かなようだ。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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