2007年10月16日(火) 23:46 0
ついこの間まで北海道でも十分半袖で過ごせたのだが、10月中旬に入って一気に寒波が襲来してきた。むしろ例年よりもやや気温は低めに経過し、秋の深まりを感じさせる今日この頃である。
折から15日(月)より、静内の北海道市場で「HBAオータムセール2007」が開催されている。初日に当歳、2日目~5日目が1歳である。
その初日が、関係者に大きな衝撃を与えるほどの低調な結果に終わった。史上最低…かどうかはデータを精査しなければならないので何とも言いかねるところだが、しかし「これほど売れない市場はちょっと記憶がない」というのが多くの人々に共通する思いだろう。
167頭が上場され、落札はわずか24頭。総額1億5540万円(税込み)。平均647万5千円である。売却率は15%にも満たなかった。午後1時に始まったセリは、あまりにも売れないために進行ばかりが早くなり、午後3時半には終了してしまった。
元々、日高における当歳市場の不振は今に始まったことではなく、とりわけ秋の開催となるオータムセールにおいては、7月のセレクションセールのように上場馬を選抜できない弱みがあるため、昨年までの過去5年間を通じても、売却率は19~28%。売り上げは3~5億円台を行ったり来たりというレベルであった。しかし、今回はその数字が軒並み「半減」したような結果であり、おそらく、見直し論が浮上して来ることは間違いあるまい。
この程度にしか売れない原因はいったいどこにあるのか? 敢えて一言で回答するとしたら「購買者がいない」からである。あまりにも閑散としていて、ひどく寂しい市場風景だった、と関係者は異口同音に語る。
なるほど、それが結果に如実に現れている。この時期に日高の当歳馬を市場で購買する層はかなり限られており、1歳市場とは異なり、もう秋の当歳市場の使命は終わったのかも知れない。
さて、そんな不振の中にあって、静内農業高校生産科学科が授業の一環として生産した「風夏」(父マーベラスサンデー、母フリソデ、牝・栗毛 5月11日生まれ)が、同校生産の「ユメロマン」と同じく田中春美氏によって落札されたことは心温まる出来事であった。価格は税込み105万円。田中春美氏によれば「あと2~3人程度は競りかけてくるはずだと思っていた」とのことだが、一声で落ちてしまったのだという。「値段は安いが、柔らかくて走りそうな馬」とのこと。早くも入厩先(美浦・鹿戸雄一厩舎)も決めてあるという。再来年のデビューを楽しみにしておこうと思う。
16日からは1歳馬市場がスタートしている。まだ1日目が終了したばかりだが、1歳市場初日は、201頭が上場され、71頭が落札。売却率35.32%。2億3594万5500円(税込み)の売り上げは、昨年同日よりもかなり落ちるが、むしろ売却率は上昇している。昨年の初日にはカワカミプリンセスの半弟が上場され、税抜き4650万円で落札されたのを筆頭に1000万円以上の落札馬が計6頭もいた。その結果、落札馬の平均価格はこの日に限ると538万円に達していた(トータルでは約334万円)。しかし、今年の1歳市場初日は、1000万円を超えた取引馬がわずか1頭(リヴァーガールの2006、テイエムオーシャンの半妹、父キングカメハメハ、税込み1260万円)のみだったことから、平均価格が対前年比で約200万円ほど下落した。
明日よりどれだけ巻き返すことができるか。1歳馬市場にはそれなりに購買者の姿がずいぶん増えているように感じるのだが、果たして4日間でどういう結果を残せるものか、注目したい。
田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。