空前の活況?オータムセール

2007年10月23日(火) 19:55 0

 10月15日より始まったオータムセールが19日に無事全日程を終了した。終わってみれば、当歳はさておき、1歳市場4日間は空前の活況を呈した。764頭の上場で333頭が落札。売却率43.59%。売り上げ総額11億8462万500円を記録した。

 とりわけ1歳市場2日目の17日には、201頭が上場され、101頭が落札されるという「秋市場としては記憶にない」ほどの売却率で、主催者であるHBA日高軽種馬農協にとってはひじょうに喜ばしい成績を残した、と言えるだろう。

北海道市場外観

 昨年の数字と比較してみると、上場頭数は48頭の増加、落札頭数も82頭の増加、売却率は8.53%の上昇、売り上げ総額は3億4478万円の増加、平均価格は約21万円余の上昇、と過去5年間と比較してみても、上場頭数を除いていずれの数字も近年にない上出来の結果である。

 ただし、個別に見ると、やはり厳しい現実に直面せざるを得ない。まず次の価格帯別落札頭数をご覧いただきたい。(いずれも税抜き)
1.1000万円以上…16頭
2.500~1000万円未満…46頭
3.300~500万円未満…73頭
4.250~300万円未満…36頭
5.200~250万円未満…51頭
6.150~200万円未満…54頭
7.101~150万円未満…9頭
8.100万円…36頭
9.50~100万円未満…12頭

 落札馬333頭の内訳が以上のような結果となる。1000万円以上の落札馬16頭中、「ダーレー・ジャパン(株)」からの上場馬が6頭を占めた他、フォーティーナイナー、アグネスタキオン、キングカメハメハなどの産駒が名前を連ねており、本来ならば、1歳秋の時期まで売れ残っているようなクラスの馬たちではない。そうした素材でも、今はオータムセールに上場される時代になったのである。

 次の500~1000万円未満のクラスは、いわば、市場における中心的存在で、生産者にとっても「勝負できる」素材が揃っている。今回はこの価格帯に46頭ほどいて、種牡馬別では社台系が多い。ジャングルポケット、クロフネ、アグネスタキオン、スペシャルウィーク、ダンスインザダーク、タイキシャトルなどの名前が並ぶ。中にはブライアンズタイムなどの名前もあり、相対的に種付け料を考えるとどこまで利益が出ているものか疑わしい上場馬も少なくない。

 ここまで計62頭。残る271頭が税抜き500万円未満の価格帯に分布している。問題はこの大多数の馬たちである。ここに日高の中小牧場が直面している厳しい現実が余すところなく表れている。一言で言うと、「生産コストに見合う価格」の落札馬の割合が極端に少なくなってくるのが、この500万円未満のクラスなのだ。

 もちろん、生産コストを抑えるには、種付け料を抑えるのがもっとも近道だが、そうすると、市場に出しても売れる可能性が極めて低くなる。

 多くの購買者は「良い馬を安く買いたい」わけで、聞いたことのないような名前の種牡馬では、やはり販売する時にかなり不利になる。それが経験則として生産者には遍く染み付いているため、どうしても無理をして配合種牡馬の質を上げざるを得ない。しかし、それが行き過ぎると、自分で自分の首を絞める結果を招く。

 生産者受難の時代に突入して久しいが、この難局をどのように乗り切れば良いものか、多くの生産者が頭を悩ませているのが現実だ。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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