2007年10月29日(月) 23:01 0
恒例の「ジェイエス・繁殖馬セール」が今年も10月24日(水)に、新ひだか町の北海道市場にて開催された。
今年は従来行なってきた比較展示を実施しないとのことだったが、それでもかなりの数の上場馬が馬房から出され、市場の芝生の上に並んだ。セリ開始は午前10時。とはいえ、HBA主催の当歳や1歳市場などと比べると、こちらはかなりゆったりとした進行になっており、全ての上場馬が競り終わったのは午後4時を回ったあたり。延々6時間に及ぶ長丁場である。
名簿上では189頭に対し、実際には180頭が上場され、落札は86頭。売却率は47.78%。売り上げ総額4億9324万8千円。一頭あたりの平均価格は573万5442円。因みに昨年と比較すると、144頭上場に対し落札が95頭。売却率66%。総額3億6723万7500円。平均価格386万5658円。従って、上場頭数は36頭増加したものの落札は逆に9頭の減少。ただし、売り上げ総額は約1億2600万円ほど増え、平均価格もまた186万9784円も一気に上がった。なお売却率はかなり低下してしまった。
最高価格馬は43番「ピサノダイアナ」の4000万円(税抜き)。父サンデーサイレンス、母エグズマキー(その父Pleasant Colony)の青鹿毛、5歳馬。受胎種牡馬はシンボリクリスエス。最終種付け日は4月1日。販売申込者は市川義美氏。(有)飛野牧場・飛野正昭氏が落札した。
次に131番「カレンバレリーナ」の3000万円が続く。父サンデーサイレンス、母シアラスダンサー(その父Gate Dancer)の黒鹿毛、8歳馬。ワイルドラッシュを受胎しており、最終種付け日は2月16日。販売申し込み者はノーザンファーム。落札したのは古川嘉治氏。
三番目は89番「ナットクラッカー」の2800万円。父サンデーサイレンス、母バレークラシック(その父Sadler's Wells)鹿毛の6歳馬。ホワイトマズルを受胎しており最終種付け日は3月22日。社台ファームからの上場で、落札したのは(有)小倉牧場。
昨年と際立って異なる点は、高額馬が続出したことだろう。昨年の場合、税込み1000万円以上の取引馬は4頭にとどまったが、今年は何と15頭にも増えた。これだけ高額馬が出ると平均価格は上昇する。その反面、上場頭数が増えたにもかかわらず落札頭数が減ったのは、この繁殖馬セールにおいても1歳や当歳と同様に購買者の食指を動かすような素材が限られてきていることを窺わせる。つまり、自分が欲しい馬はみんなも欲しい馬である、ということに尽きるのだ。
何人もの生産者が「とても高くなってしまって欲しい馬が買えなかった」と苦笑いしていた。「社台グループもしくはダーレージャパンあたりの上場馬で、若くて母系がしっかりしている繁殖牝馬。できれば競走成績もあった方がいい」などと、希望はかなり高水準だが、当然のことながら、そういった馬が出てくるとひどく高額になってしまうのである。
その反面、不受胎馬や高齢馬、日高の個人牧場あたりから出てくる馬などは敬遠される傾向がある。「どんな癖を持っているか分からないし、個人牧場から出されるくらいだから、よほど持て余されているのではないか。収益の上がる繁殖牝馬などは売りに出されるはずもなく、やはり、管理しにくいとか、性格がきついとか、それなりの欠点があると考えなければならない」と友人の1人が言う。たぶんこの辺が、「売る側」ならぬ「買う側」に回った場合の平均的な感覚なのだろう。見事にそれが落札結果にでていたように思う。
田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。