2008年01月29日(火) 11:50
今、英国の競馬ファンのみならず、欧州中のスポーツファンが首を長くして楽しみにしているのが、3月14日にチェルトナムで行われる障害界の最高峰「G1チェルトナム・ゴールドC」で実現するであろう、「コートスターVSデンマン」の頂上決戦である。
この時季の英国では、そうでなくても競馬ファンの話題の中心にあるのはチェルトナムのフェスティヴァル開催であり、そのメインレースともいうべきゴールドCなのだが、今年は前述した2頭による、待ちに待った「世紀の対決」が見られそうなだけに、例年以上にヒートアップしているのだ。
コートスター(セン8歳)は、言うまでもなく昨年のチェルトナムGCの勝ち馬だ。3歳春に仏国でハードラーとしてデビュー。ハードル界ではG3にようやく手が届く程度の馬であったが、4歳暮れから英国に移籍して、より障害の難度が高いスティープルチェイスに転向したところ、一気にその素質が開花。スティープルチェイスだけの成績は、ここまで14戦10勝、2着3回と、ほぼ完璧な実績を残している。
殊に、06年から07年にかけてのシーズンは、6戦6勝の負け知らず。ヘイドックのG1ランカシャーチェイスを17馬身差、サンダウンのG1ティングルクリークチェイスを7馬身差、ケンプトンのG1キングジョージ6世チェイスを8馬身差と、主要G1をいずれもぶっ千切りで制した後、この路線の最高峰であるG1チェルトナムGCもものにし、現在の英国における障害界の絶対的王者として君臨することになった。
今季(07年/08年シーズン)は、緒戦のG2オールドローンチェイスこそ、斤量が1ストーン(6.35kg)軽かったモネズガーデンの2着と不覚をとったものの、続くG1ランカシャーチェイスを前年に続いて連覇。更に12月26日のG1キングジョージ6世チェイスを11馬身差で制し、健在振りを見せつけたのである。
これだけの絶対王者がいれば、普通ならチェルトナムGC連覇当確となるところだが、そうはならないのは、デンマンという存在がいるからだ。
デンマンも、コートスターと同じ00年生まれの8歳セン馬なのだが、デビューはコートスターよりも随分と遅く、初出走は5歳も秋を迎えた05年10月だった。05年/06年シーズンをハードラーとして過ごしたデンマンは、このシーズン5戦4勝。チェルトナムのノーヴィス・ハードラーのためのG1サンアリアンス・ノーヴィスハードルで2着となって、シーズンを終えた。
翌シーズンからデンマンはスティープルチェイスに転向したのだが、以後のデンマンは負け知らず。
06年/07年シーズンが、5戦5勝。3戦めにニューバリーのG2バークシャー・ノーヴィスチェイスを制してスティープルチェイスの重賞初制覇を果たすと、続くニューバリーの一般戦を36馬身差で大勝。更にチェルトナムのG1ロイヤル&サンアリアンス・チェイスを10馬身差でモノにして、シーズンを締めくくった。
そして迎えた今季、緒戦のG3ヘネシコニャック・ゴールドCチェイスを11馬身差で制すと、12月28日に愛国のレパーズタウンで行われたG1レクサス・チェイスも4馬身差で快勝。まさに昇竜の勢いで、頂点を目指すところまでやってきたのである。
この両馬、実は管理するのがともにトップトレーナーのポール・ニコルスで、これまでは直接対決がない。だが、チェルトナムGCとなれば、いかに同厩と言えども相手を避けるわけるわけにはいかず、遂にファン待望の対戦が実現するのである。
大手ブックメーカーは、コーラルが両馬2.5倍のオッズで横並びの1番人気。ウィリアムヒルはコートスター2.25倍に対してデンマン2.875倍。ラドブロークスがコートスター2.1倍に対してデンマン3倍のオッズを付けている。
あとは、2頭が無事に本番の日を迎えるばかりである。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。