バレッツマーチセール、全体の市況下がる

2008年03月18日(火) 23:50

 3月12日にアメリカのカリフォルニア州で行われた「バレッツ・マーチ2歳トレーニングセール」は、数字的におおきな落ち込みを示す結果となった。

 総売上げは前年比32.8%ダウンの1299万6千ドル。平均価格が前年比18.9%ダウンの178,027ドル。中間価格は前年比25.4%ダウンの110,000ドル。前年41.3%だったバイバックレートが今年は44.7%と、全ての指標が前年を大きく割り込んでしまったのだ。

 前年のこの市場が、一昨年に比べると総売り上げが34.7%アップ、平均価格が前年比42.3%アップ、中間価格が前年比84.4%アップという超好景気だったから、ある程度の下落は折り込み済みだったし、今年の平均価格も中間価格も一昨年を上回っているから、見た目の数字の悪さほどは関係者に落胆の色はない。昨今のアメリカにおける一般景気の低迷を鑑みれば、まずまずこんなものか、というところか。ただし,一昨年の33.1%から、昨年「危険領域」と言われる40%台に突入していたバイバックレートが今年更に上昇したことについては、各方面からも深刻に受け止める声が上がっており、実際に現場にいても、各価格帯においてプレイヤーの数が絶対的に足りないことを実感させられた。

 例えば、50万ドル以上で取引された馬が、昨年は9頭いたのに対し、今年はわずかに3頭。ダーレーもクールモアも姿を見せず、なおかつ、通貨の強い欧州からのバイヤーも数えるほどで、トップエンドのマーケットは実に寂しいものであった。例えば2月のファシグティプトン・コールダーが、中間以下の価格帯の需要の薄さを、高い方の価格帯の活発なトレードが補う形で市況を整えていたことを考えると、高い方も不振だったここが全体の指標を大きく後退させたのも、むべなるかなである。

 ただし、こうした弱含みの市場が追い風となったのが、日本人購買者である。このところ、競走使用を目的とした購買が欧米各国の市場において極端に減って日本人購買者だが、ここでは8頭を平均価格139,375ドルで購買。久々に、前年(4頭を平均101,250ドル)を上回る規模の購買を行った。しかも、こういうマーケットであっただけに、参加した3組の日本人クループは、いずれも良質馬を実にリーズナブルな価格で入手していたと思う。

 例えば,上場番号15番の父オフィサーの牝馬は、2回め公開調教で2Fでは最速となる21.4秒を叩き出していた馬である。

 上場番号49番の父トリッピの牡馬も、メリハリの利いた馬体と力強い歩様が、下見の段階から評判になっていた1頭だし、上場番号51番の父ポッセの牝馬は、1回めの公開調教で2Fでは2番目の好時計となる21.6秒をマークしていた馬だ。

 上場番号85番の父メモの牝馬も、バランスの良い好馬体の持ち主だし、上場番号126番の父チャペルロイヤルの牡馬は、1回めの公開調教で1F=10秒フラットという最速時計を叩き出した馬である。

 そして、上場番号158番の父ディキシーユニオンの牡馬は、先週のこのコラムでセールのプレビューを行った際に、注目馬の1頭に挙げた馬だ。馬体も動きも一級品で、なおかつ今後に成長の余地を残している大物である。

 上場番号166番の父タピットの牡馬も、祖母が北米G1メイトロンS勝ち馬という良血馬だし、上場番号174番の父ソトの牡馬も、1回目の公開調教で1F=10.2秒の好時計をマークしていた馬である。

 順調であれば、いずれも来年の今頃は重賞戦線に顔を出していておかしくないだけの馬たちであろう。

 なお、セール全体の最高価格馬は、上場番号169番の父シルヴァーデューティの牝馬。バランスの良い好馬体に加え、1回目の公開調教で1=10.2秒という好時計をマークして、フィジカル的にも高い能力を持っていることをアピール。なおかつ祖母アキスオヴラックは北米G1ヴァニティH勝ち馬と、血統も良く、ジェス・ジャクソン氏のストーナーサイド・ステーブルが80万ドルで購買している。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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