話題を呼ぶブリーダーズCの新フォーマット

2008年03月25日(火) 23:50

 今月はじめにアメリカのブリーダーズCの主催者から発表された今年のプログラムが、各所で話題となっている。

 御承知のように昨年から、従来の8レースから11レースにカードの数が増えたブリーダーズC。それにともない、それまで土曜日1日だけだった開催が、金曜日と土曜日の2日開催に拡大され、新設された3レースが金曜日に施行されたのが昨年のプログラムだった。

 昨年、主催者サイドには大きな誤算が2つあった。

 1つは、新設された3レース、BCジュヴェナイルターフ」,「BCダートマイル」、「BCフィリー&メア・スプリント」が、重賞の格付けを貰えなかったこと。本来重賞の格付けとは、少なくとも2年間はレースのレベルを検証した後に与えられるものだが、84年にBCが出来た時は特例で第1回から全てのレースがG1の格付けで行われたし、01年に「BCフィリー&メアターフ」が増設された時も、いきなりG1競走として施行された。主催者としては昨年新設された3レースにも同様の特例を期待したのだが、当局の判断は「ノー」。従って、せっかく金曜日開催が出来たというのに、番組は準重賞扱いの3レースがメインとなってしまったのである。

 もう1つの誤算は、その金曜日開催がひどい荒天となったこと。数日前からの雨が一向に止まず、当日もどしゃ降り。馬場は泥田のようになり、BC開催でなかったら中止になってもおかしくない状態まで悪化したのだ。

 しかしここで、主催者にとってはもう1つの、うれしい誤算に出くわすことになった。重賞競走がなく、天気も最悪だったのに、BC初の金曜開催はおおいに盛り上がったのだ。入場人員27803人。売り上げは場内だけで500万ドルを越え、全米規模では3000万ドルを越えたのだ。いずれも、主催者の予測を遥かに上回る数字だった。

 主催者はこれで「金曜開催は、いける!」との感触を掴み、カードをもっと充実させれば、土曜日にも負けないだけのビッグイベントに出来ると考えたようだ。

 そうした背景を受けて発表された、今年にプログラム。主催者が仕掛けたのは「金曜日はレディースデー」という企画だった。従来からある「BCディフタフ」「BCジュヴェナイルフィリーズ」「BCフィリー&メアターフ」の3つのG1に加えて、昨年新設された「フィリー&メアスプリント」と、今年新設された「ジュヴェナイルフィリーズターフ」の牝馬限定戦5レースが、10月24日に行われる金曜開催に全て集められたのである。なおかつ、従来のディスタフを今年から「BCレディースクラシック」と改称してメイン競走に据えるという、実に華やかな金曜開催となったのである。

 金曜開催のカードを充実させた背景には、実はもう1つ理由があると言われている。2日開催となった昨年、主催者サイドとしては世界各国の放送局が金曜開催も土曜開催と同様に扱い、それなりの放映権利を払ってくれるものと期待した。ところが、重賞のない金曜日の放映権利は不要と回答した放送局が、各国でかなりの数にのぼったのである。主催者が期待したほどは権利金の売り上げが伸びなかったわけで、この点でも金曜開催のカードを充実させる必要があったのだ。

 今年のプログラムならば、各国の放送局も金曜開催を無視するわけにはいくまい。

 かくして、ビジネス的にも更に肥大化する今年のブリーダーズC。10月24日と25日にカリフォルニア州のサンタアニタで行われる開催が、主催者の目論見通りに行くかどうか。今からその行方が楽しみである。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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