2008年04月22日(火) 23:50
4月16日・17日の両日、英国のニューマーケットで行われた欧州最高の2歳セール「タタソールズ・クレイヴン・ブリーズアップセール」は、減速気味の一般景気を反映して市場関係者の間で囁かれていた悲観論を大きく覆す、大盛況となった。
総売上げが前年比35.1%アップの11,884,000ギニー、平均価格が前年比39.8%アップの102,448ギニー、中間価格が前年比27.3%アップの70,000ギニーと、主要3指標全てがこのセールの歴代最高を記録。しかも前年36.8%だったバイバックレートが今年は26.6%に下降と、良いことずくめの市況となった。
北米に比べると「後発」と言われた欧州の2歳セールだが、10年前と比べると、このマーケットは売り上げで約4.5倍、平均価格で約6.5倍という急成長を遂げたことになる。今年の売り上げと平均価格を米ドルに換算すれば、総売り上げは2.366万ドル、平均価格は$203.968になるから、市場としてはカリフォルニアのバレッツ・マーチを完全に凌駕。ケンタッキーのキーンランド・エイプリルと比較しても、平均価格はほぼ同じで、総売り上げでは圧倒的に上回るから、2歳市場としては世界第2位の座に台頭した(1位はフロリダのファシグティプトン・コールダー)ことになった。
これだけの急成長を遂げた背景にあるのは、上場馬の品質向上であることは間違いない。
殊に、昨年のこのセールで購買された馬から、G1ジャンルクラガルデル賞勝ち馬リオデラプラタをはじめ、5頭の重賞勝ち馬が誕生。上場頭数200頭を切る市場としては驚異的と言っても過言ではない実績を残したことが、マーケットのトッププレイヤーたちを刺激したようで、今年はシェイク・モハメド、シェイク・ハムダンの両殿下が、この市場としては初めて御自らが御出馬。シェイク・モハメドによる購買はなかったものの、シェイク・ハムダンは精力的に戦力増強を図り、クールモアグループをはじめとしたビッグネームらとともに争奪戦を繰り広げたため、市場はおおいに盛り上がることになった。
最高価格馬は、上場番号189番の父ミスターグリーリーの牝馬。価格は、牝馬としては2歳市場のヨーロピアンレコードとなる54万ギニーだった。ミスターグリーリーは北米供用馬だが、昨年英国と愛国の1000ギニーを制したフィンスケールビオが出て、ヨーロッパでも人気の種牡馬である。
本馬は、ニューマーケット競馬場のロウリーマイルコースで行われた公開調教で、ゴール前の急坂を力任せに駆け上がり、牝馬らしからぬパワフルさを披露。馬体も柔らかくて、バランスがとれていて、厩舎村で評判になっていた1頭だった。
チケットにサインをしたのは、ニューマーケットに厩舎を構えるトップトレーナーのジョン・ゴスデン調教師だったが、ゴスデン師によると馬主はアメリカにベースを置いている人で、場合によってはアメリカで競馬をする可能性もあるとしている。
なお、日本人によると見られる購買は、残念ながらゼロだった。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。