シンガポール・インターナショナルC展望

2008年05月13日(火) 23:50

 今週の日曜日(5月18日)、シンガポールのクランジ競馬場で、距離2000mの国際競走「インターナショナルC」が行われる。

 シンガポールの当局が、日本における馬インフルエンザの発生を受けて異例とも言える長期の出国検疫を要求したため、残念ながら中央からの参戦はなくなってしまったが、地方から一昨年の覇者コスモバルクが参戦。他国からもなかなかの好メンバーが顔を揃えており、興味深いレースが期待できそうである。

 今年の目玉は、何と言ってもドバイから転戦したジェイペグだろう。御存知、ウォッカが4着したG1ドバイデューティーフリーの勝ち馬である。元来が南アフリカのG1ホースで、ドバイでは明らかに実力を過小評価されていたのだが、あのレースで見せた強さは予測を遥かに上回るものであった。

 まず、一見スローだったように見えて、勝ちタイムはナドアルシバ芝1777mのレコード。スタートから終始自分でレースを作って出した時計だけに、価値は高い。2着が昨年のフランスのマイル女王ダルジナで、3着がその後香港でクイーンエリザベス2世Cを快勝したアーチペンコ、そして4着がウオッカと、封じ込めた相手も相当の顔触れだった。そして、ゴール前1fは鞍がずれて、鞍上のマーカス騎手は曲芸のようにバランスをとりながらの騎乗だったのである。

 まともに競馬が出来ていれば、いったいどれだけの強さを見せていたのかと思うと、底知れぬものを感じざるを得ない。ここは相手関係も前走よりは楽なだけに、中心となるのはこの馬で間違いなさそうである。

 レイティング的にジェイペグに続くのが、香港から転戦したフランス調教バリウスだ。クイーンエリザベス2世Cで、単勝84倍の9番人気という低評価をあざ笑うかのように、直線大外から鋭い末脚を発揮して、アーチペンコの2着に食い込んだ馬である。準重賞までの勝ち鞍しかなく、今季もここまでの競馬でも格別の進歩が見られたわけではなかったから、あの人気は致し方のないところで、よほど香港の馬場と気候が合ったのであろう。好調をキープしているのであれば、再度の大駆けもありえるか。

 同じフランス調教馬では、ミュージカルウェイの方が本国での実績では上。だが、7着と敗れたクイーンエリザベス2世Cでのレース振りからは、調子が今ひとつという印象を受けた。同じくクイーンエリザベス2世Cから転戦したサースリックは、シャティンよりも馬場の重たいクランジに変わって、前走よりもパフォーマンスが向上するとは考えにくい。

 意外な台頭があるとすれば、英国から参戦のトラフィックガードか。前走、2着となったニューマーケットのG3アールオヴセフトンSはなかなかの好内容で、シンガポールの馬場と気候が合えば、上位争いをしておかしくはなさそうだ。5月11日(日曜日)に現地入りし、12日(月曜日)から早速馬場入りをしているコスモバルク。元気一杯、というよりは、かなり気負っている様子が、現地から伝わってきている。言うまでもなくこのコースは大得意だし、前走の日経賞(4着)を見る限り、大きな衰えは無さそう。ジェイペグ相手に、真っ向からの勝負を挑んで欲しいものである。

 なおレースの模様は、当日夜8時半からグリーンチャンネルで生中継されますので、ぜひ御覧下さい。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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