2008年05月27日(火) 15:45
5月26日と27日の2日間にわたり、北海道で2歳馬によるトレーニングセールが連続で開催された。
26日(月)は、札幌競馬場を借り上げて、日高軽種馬農協(HBA)主催による「2008トレーニングセール」が行なわれ、牡93頭、牝87頭、せん馬1頭の合計181頭が上場された。昨年好成績を残したこの市場は、今年大幅に上場申し込みが増加し、前年比で56頭も多くなった。
結果は、牡46頭、牝36頭の82頭が落札され、皮肉にもこれは昨年とまったく同じ売却頭数である。売り上げ総額は4億3459万5千円。前年比で2058万円の減少。平均価格も約530万円と、25万円程度下落した。
最高価格馬は157番「タガノブラッサムの2006」の2940万円。父ジャングルポケット、母タガノブラッサム(その父サンデーサイレンス)という血統で、日高町・(有)三浦牧場の生産。落札者は高橋福三郎氏。「マツリダゴッホ」で知られる高橋文枝さんのご主人という。
上場頭数だけが激増したものの落札数が同じということは、売却率がその分だけ低下したことを意味する。昨年、125頭中82頭を売りまくったこの市場の売却率は、久々に65.6%まで上昇したものの、今年は急激にダウンし、45.3%。20ポイント以上も下げてしまった。
当日の天気予報は「くもりのち雨」。だが、午前8時半より公開調教が始まると、くもりどころか徐々に青空さえ覗く絶好の空模様となった。ただし、雲の流れは速く、湿度は高い。蒸し暑ささえ感じるほどの陽気になったが、公開調教が終わる頃には再び上空には雲が広がり始め、市場が始まった午後になると雷さえ聞こえてくるような空模様となった。予報は午後に関してはほぼ的中し、市場が行なわれている間、雨が降ったりやんだりのあいにくのコンディション。ついに最後まで雨がやむことはなかった。
名簿上では219頭も登録されている市場である。実際には当日38頭もの頭数が欠場となったわけだが、それでも公開調教は慌しさが漂った。途中で落馬があったり(騎乗者は無傷)、ゴール板を過ぎて1コーナーを曲がったあたりでいきなり前肢を骨折し、そのまま薬殺されて馬運車で運ばれる馬がいたりして、ハプニングの連続であった。
とりわけ、骨折予後不良となった馬は、馬場内にしばらく横たわったまま馬運車の到着を待っていたが、競馬開催時のようなテキパキした処理ができず、かなり手間取っていた。トレーニングセールにこうした事故はつきもので、今後はより一層の危機管理体制を確立する必要があるだろう。ホームストレッチでの事故でなかったのがせめてもの慰めかも知れない。
競馬場のウイナーズサークルを利用して設置されたセリ会場には、天候の急変に備え、テントが設けられた。また各所にヒーターも用意された。午前中は好天だったため「いくら何でもこれは必要あるまい」と思ったが、午後、雨がいつまでも降り続けるうちに、やはり肌寒さを感じるようになり、ストーブのありがたさを実感させられた。
人出だけは多かったようだ。公開調教時には、スタンドに多くの購買者や見学者がつめかけた。月曜日とあって中央競馬の調教師の姿も多く、また昨年に引き続き、予定購買頭数15頭の岩手県馬主会の面々が熱心に目当ての馬を吟味していた。その他KRA韓国馬事会や熊本県馬主会などの団体購買もあった。
だが、その反面、インフルエンザ騒動の余波のため、シンガポールやマレーシアからの購買がなかったのが惜しまれる。KRA韓国馬事会は今回、札幌で6頭を購入したものの、価格は税抜き150万円〜220万円。様々な事情があるとはいえこれではとても「上客」とは言いがたいのだが、シンガポールやマレーシアのバイヤーたちは平均価格がもっと高く「お得意様」だっただけに…。
売却率の低下は、ブリーズアップセール〜九州〜千葉と続いた一連の市場結果から、ある程度予想はされていた。競馬を取り巻く環境が決して明るくない現状を考えれば、この結果は致し方あるまい。せめてもの慰めは上場頭数の多寡に拘わらず、札幌の市場では「一定数の需要」があるということなのかも知れない。
二日連続のトレーニングセールは何より上場馬を管理する育成業者がてんてこ舞いである。早々に借り上げていた馬房を片付け、翌日の浦河での市場に備えて急ぎ競馬場を後にしたはず。そして、「今日はあまり振るわなかったが、明日は期待できるのではないか」という望みをかけて馬運車に乗り込んだ人が多かったと思われる。
翌27日の「ひだかトレーニングセール」の模様はまた来週に。
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田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。