2008年06月03日(火) 17:49
30年振りの3冠達成か、未曾有の3兄(姉)弟による3連覇か。世紀の決戦まであとわずかとなった。モンスター・ビッグブラウンを倒すには、3冠キラーの助けが必要と、カジノドライヴにエドガー・プラドがブッキングされたことで、対決ムードは益々盛り上がっている。
同じ事象でも角度を変えてみると全く違う絵面が現れることはよくあり、例えばビッグブラウンの距離適性を血統的に見た場合、父のバウンダリーに距離をこなした子は居らず、母の父ヌレイエフ、祖母の父リアファンともマイラー色の強い馬で、この配合で12f持つわけがないという見方と、パントルセレブルやシアトリカルを出したヌレイエフと、ロイワヤルオーク賞(3100m)勝ち馬ティラーズを出したリアファンが補強されていれば大丈夫と見る説が、相入れないまま錯綜していたりする。
同世代を相手にこれだけ楽勝を重ねてきた馬が、再び同世代を相手に負けるわけがない、という見方もあれば、ファニーサイドは9.3/4馬身差、スマーティージョーンズは11.1/2馬身差でプリークネスSを制していながら、ベルモントSでは逆転されたじゃないか、と反発する向きもある。
スタミナならカジノドライヴだという見方がある一方で、ビッグブラウンは10fまでこなした実績があるが、カジノドライヴは9fまでしか経験がないじゃないかと反論する声もある。
つまりは、重箱の隅をつつくまでもなく、お互いのアラを上げつらえばいくらでも発展するのが机上の空論で、ビッグブラウンとカジノドライヴに関して言えば、まずは黙って両馬の激突に見入りましょうという見方に、筆者は与する。願わくばこの2頭によって昨年のベルモントSのようなゴール前が演出され、カジノドライヴが勝者となることを祈って。
現在のところ、今年のベルモントSは最大で9頭立ての予定。ケンタッキーダービーからの直行組が、3着のデニスオブコーク、4着のテイルオブエカティ、7着のアナックナカル。前走プリークネスS組が、2着のマッチョアゲインと3着のイカバッドクレイン。ピーターパン組が3着のレディーズエコー。そして、プリークネスSのアンダーカード、バーバロSで2着だったダタラの7頭が、ビッグブラウンとカジノドライヴに挑もうとしている。
「一大決戦」と言われるレースで大穴を開けるとすれば、人気薄ゆえにバカにしてひとり旅を許してもらえた逃げ馬と相場が決まっているのだが、今回のメンバーで逃げたことがあるのは、メイドンで逃げきり勝ちをし、前走バーバロSでも逃げて2着に粘ったダタラ1頭がいるのみ。それを見越して登録してきたとしたら、さすが名調教師ニック・ジートと言いたいところだが、一方で、フロリダダービーを逃げきったビッグブラウンや、新馬を逃げきったカジノドライヴが、ダダラあたりに好き放題をさせるわけがなく、恐らくは両馬が早めに自力で潰しに行くことになるのだろう。
不気味なのは,むしろ同じニック・ジート厩舎のアナックナカルか。ケンタッキーダービー大敗後、プリークネスをスキップしてベルモントSというのは、ニック・ジートが管理して04年にスマーティジョーンズの3冠を阻んでベルモントSに優勝したバードストーンと同じローテーションだ。そしてアナックナカルの父は、98年にリアルクワイエットの3冠を阻んでベルモントSに優勝したヴィクトリーギャロップである。「KY」馬になるとしたら、筆頭候補はこの馬かもしれない。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。