2008年06月07日(土) 23:50
このコラムがアップされるのは8日の午前0時。それから約7時間半後に、アメリカ3冠レースの最終戦・ベルモントSが発走します(日本時間8日午前7時25分)。ビッグブラウン対カジノドライヴの世紀の対決。これは楽しみだなぁ、と思っていたら、カジノドライヴが突然のアクシデントに見舞われ回避しちゃいました。ウーン、何とも残念。これで見どころは、ビッグブラウンが78年のアファームド以来30年ぶり12頭目の3冠馬となれるか、その1点に絞られましたね。
せっかくの機会ですから、みなさんに是非ご覧いただきたいのが、ベルモントSの公式ホームページhttp://www.nyra.com/BelmontStakes2008.html。中でも、「BELMONT STAKES REPLAYS」は必見です。ここでは、30年から48年までの3冠馬が誕生した年のレースと、70年から昨年までの全レースの映像が見られます。つまり、初代3冠馬サーバートン(19年=大正8年)を除く11頭の3冠馬と、79年以降に3冠制覇に挑戦しながら果たせなかった馬のベルモントSでのレースぶりをすべて見られるわけです。
2着馬を31馬身ブッちぎって勝ったセクレタリアト(73年)、アリダーとのマッチレースを制したアファームドなど、3冠馬誕生の瞬間も感動的ですが、リアルクワイエットがヴィクトリーギャロップにハナ差で3冠制覇を阻止された98年のレースは何度見てもゾクゾクしますよ。結果を知って見ているのに、心臓がバクバクしちゃうほど。馬券を買っていたらどうなっていたでしょう。「Oh!No!!History!!!」という実況アナウンサーの絶叫もシビレます。
さて、3冠馬のレースぶりを見ているうちに気がついたのが、そのほとんどが逃げ切りで勝っているということ。そこで、3冠馬のベルモントSでの“決まり手”を、アメリカの競馬専門紙デイリーレーシングフォーム社が編集した「Champions」という本で調べてみました。すると、全11頭のうち8頭がレース中盤の1200m通過時点で先頭に立ち、そのまま逃げ切っています。残り400mで2番手から抜け出したのは35年のオマハと46年のアソールトだけ。つまり、3冠制覇の“王道”は、早め先頭の逃げ切りなんです。それに追いつける馬がいなければ3冠制覇、誰かに捕まったら“夢”は“幻”になる、ってことでしょう。
先に書いたリアルクワイエットも、3コーナーで先頭に並びかけ、4コーナー(残り400m)では先頭に立っていました。その時、手綱を取っていたのが、今回ビッグブラウンに乗るK・デザーモ騎手。「あの仕掛けは早すぎた」と見る人が多いようですが、3冠の“王道”を考えたら、やむをえなかったのかも…。そのデザーモ騎手、まだ1度もベルモントSを勝っていません。最大のライバルと言われたカジノドライヴがいなくなった今回、彼はどういう作戦を取ってくるでしょうか? それを見るだけでも、十分価値のあるレースだと思いますよ。
さて、日本では安田記念。私は、スーパーホーネットとスズカフェニックスを1、2着と1、3着にした3連単を買うつもりです。相手はウオッカ、グッドババ、キストゥヘヴン、エイシンドーバーの4頭。今週も当日の馬場状態が気になるところですが、1分32秒台の勝ちタイムを想定して予想しました。
では、今回はこのへんで。
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矢野吉彦
テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。